夜遅く、誰もいなくなった事務所で一人、重い決断を前に立ちすくむ。経営という道を歩む中で、相談できる相手が見つからず、孤独を感じた経験のある方は少なくないのではないでしょうか。社員にも家族にも言えない悩みを、一人で抱え込んでしまう。そんな夜を過ごされた経営者は、きっと多いはずです。

結論からお伝えすると、経営者の孤独は一人で抱え込まないことが第一歩です。立場や距離の違う複数の相手に、少しずつ相談していく。そのほうが、気持ちは楽になっていきます。社内の幹部、家族、経営者仲間、専門家、経営者が集うコミュニティと、相談先には複数の選択肢があります。一人にすべてを求める必要はありません。

本記事では、経営者が孤独を抱えやすい理由、相談相手の選択肢、ご自身に合う相手の見つけ方、相談するときの心得を順にお伝えします。私たち編集部も、湯島倫理法人会で出会う経営者の方々と悩みを分かち合いながら学んでいます。同じ道を歩む一人として、ご一緒に考えていけたら幸いです。

経営者の孤独は誰に相談すればよいか

経営者の孤独は、悩みの種類によって相談する相手を変えていくと、少しずつ軽くなっていきます。事業の数字なら専門家、人の悩みなら信頼できる幹部、立場ゆえの孤独そのものなら同じ経営者仲間。相談先を一つに絞らず、内容に応じて使い分けるのが、無理のない向き合い方です。

中小企業庁の集計によると、日本の企業の約99.7%が中小企業とされています(出典:中小企業庁「中小企業白書」)。その多くで、経営者が最終意思決定を一人で担う立場にあります。孤独を感じているのは、決してあなただけではありません。

まずは一人で抱え込まないという選択

孤独を和らげる第一歩は、「一人で抱え込まない」と決めることです。完璧に解決してくれる相手を探すのではなく、まず話を聞いてもらう。それだけでも、頭の中が整理され、気持ちが軽くなるものです。

相談は弱さの表れではありません。むしろ、自分の限界を知り、周囲の力を借りられることは、経営者としての成熟の一つと言えるでしょう。抱え込む癖を、少しずつ手放していけたらと思います。

相談先は一つに絞らなくてよい

「相談相手は一人いれば十分」と考える必要はありません。資金繰り、人材、事業承継、自身の心身と、経営者の悩みは多岐にわたります。一人の相手にすべてを求めると、相手も重荷を感じ、関係が続きにくくなることもあります。

悩みの領域ごとに、頼れる相手を分けて持っておく。そうした緩やかなネットワークがあると、いざというとき心強い支えとなります。複数の窓口を持つことは、特定の誰かに依存しすぎないための知恵でもあります。

経営者が孤独を抱えやすい理由

経営者の孤独は、性格の問題ではなく、その立場が生み出す構造的なものです。最終決定を一人で担い、弱音を見せにくく、社員とは利害が異なる。こうした要因が重なり、多くの経営者が孤独を感じています。理由を知ると、孤独を必要以上に責めずに受け止められるようになります。

人事コンサルティング会社RHRインターナショナルが2012年に発表した調査では、新任CEOの約半数が孤独を感じ、そのうち約6割が、その孤独感が自身の業績に影響していると回答したと報告されています(出典:RHR International, 2012)。孤独は、立場の高い人ほど抱えやすいものなのです。

経営者が孤独を抱えやすい3つの理由

最終決定を一人で背負う

責任を分け合えず「最後は自分」の重さが孤独の源になる

言いにくい悩みがある

社員には動揺を招き、家族には心配をかけたくない

相談する習慣を持ちにくい

頼られる側に立ち続け、自分が頼る機会が少ない

最終決定を一人で背負う立場

会社の最終的な判断は、最後は経営者一人に委ねられます。社員が意見を出してくれても、決断の責任を分け合うことはできません。この「最後は自分」という重さが、経営者特有の孤独の源にあります。

判断を誤れば、社員やその家族の生活にも影響します。その重圧を一人で受け止め続けるうち、誰にも言えない緊張が積み重なっていくものです。立場が生む孤独だと知るだけでも、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。

社員にも家族にも言いにくい悩みがある

経営者の悩みには、社員には言えないものが多くあります。資金繰りの不安を社員に漏らせば、動揺を招きかねません。一方、家族には心配をかけたくないという思いから、つい平気なふりをしてしまう経営者も多いようです。

身近な人ほど、かえって本音を言いにくい。この距離の難しさが、孤独をいっそう深めます。だからこそ、利害や情のしがらみがない、社外の相談相手の存在が意味を持ってきます。

相談する習慣を持ちにくい

経営者は、人から頼られることはあっても、自分が誰かに頼る機会は多くありません。日頃から相談する習慣がないと、いざ困ったときにも、誰にどう切り出せばよいか分からなくなりがちです。

普段から少しずつ相談する関係を育てておくと、本当に苦しいときに助けを求めやすくなります。相談は、困ってから始めるより、平時から育てておくもの。その視点を持っておきたいところです。

相談相手として考えられる選択肢

経営者の相談相手には、それぞれ得意な領域があります。一人にすべてを求めるのではなく、悩みの種類によって相手を使い分ける発想が役に立ちます。代表的な相談先の特徴を、私たち編集部も学びながら整理しました。

経営者の相談先5つ(向く悩みと距離感)
相談先相談に向く悩み距離感
社内の幹部・右腕日々の業務・人の悩み近い。会社事情を共有
家族・身近な人心の支え・気持ちの整理最も近い。本音は抑えがち
経営者仲間立場ゆえの孤独そのもの利害なし。本音を話せる
専門家資金繰り・税務・事業承継客観的・確実な助言
経営者コミュニティ相談相手と出会う入口複数の経験から学べる

社内の幹部・右腕

日々の業務や人の悩みは、信頼できる社内の幹部や右腕に相談できると心強いものです。会社の事情を分かったうえで一緒に考えてくれる存在は、何ものにも代えがたい支えとなります。ただし、経営の根幹に関わる重い決断は、社員に背負わせない配慮も忘れずにおきたいところです。

家族・身近な人

家族は、最も身近で長く寄り添ってくれる相手です。数字や戦略の助言は難しくても、心の支えとして大きな力になります。一方で、心配をかけまいと本音を抑えてしまいがちな相手でもあります。何でも打ち明けるより、支えてもらう存在として頼るとよいでしょう。

同じ立場の経営者仲間

立場ゆえの孤独そのものを分かち合えるのは、やはり同じ経営者です。同じ重圧を知る相手だからこそ、多くを語らずとも通じ合えるものです。利害のない社外の経営者仲間は、本音を話せる貴重な存在。一方的に相談するのではなく、互いに支え合う関係を育てたいところです。

税理士やコンサルタントなどの専門家

資金繰りや税務、事業承継といった専門領域は、税理士やコンサルタントなどの専門家に相談するのが確実です。客観的な立場から助言をもらえるため、感情に流されず判断を整えられます。日頃から関係を築いておくと、いざというときに頼りやすくなります。

経営者コミュニティ・学びの場

経営者が集うコミュニティや学びの場は、相談相手と出会う入口になります。一対一の相談だけでなく、複数の経営者の経験から学べるのが利点です。同じ悩みを越えてきた先輩の話は、思いがけない気づきを運んでくれます。

自分に合う相談相手を見つける手順

自分に合う相談相手は、いきなり見つかるものではなく、少しずつ関係を育てていく中で定まっていきます。焦らず、無理のない範囲から始めてみてはいかがでしょうか。ここでは、相談相手を見つけていくための手順をご紹介します。

自分に合う相談相手を見つける4つの手順
1

悩みを書き出す

お金・人・自分自身など種類ごとに整理する

2

守秘を見極める

約束を守り口の堅い相手かを静かに見ておく

3

小さな相談から育てる

軽い相談を重ね、信頼を少しずつ深める

4

利害のない第三者を持つ

社外に本音を話せる相手を一人確保しておく

悩みの種類を書き出して整理する

まず、いま抱えている悩みを書き出し、種類ごとに整理してみてはいかがでしょうか。お金のこと、人のこと、自分自身のこと。分類してみると、それぞれにふさわしい相談先が見えてきます。漠然とした不安も、言葉にすると輪郭がはっきりするものです。

守秘を信頼できる相手かを見極める

経営の悩みは、外に漏れると影響の大きいものが含まれます。相談相手を選ぶときは、約束を守り、口の堅い相手かどうかを見極める視点が欠かせません。日頃の振る舞いから、信頼に足る人かを静かに見ておきたいところです。

小さな相談から関係を育てる

いきなり重い悩みを打ち明ける必要はありません。まずは小さな相談から始め、相手の反応を確かめながら、少しずつ関係を深めていく。信頼は、一度の会話ではなく、積み重ねの中で育っていくものです。焦らず時間をかける姿勢が、結局は近道となります。

利害のない第三者を一人持っておく

社内にも家族にも言えない悩みのために、利害のない社外の第三者を一人持っておくと安心です。あなたの会社に直接の利害がない相手だからこそ、率直に本音を話せます。利害のない第三者の存在が、孤独の最後の逃げ道になることもあります。

私自身、コントリの経営の中で、社外の経営者仲間に支えられた場面が何度もありました。答えをもらうためではなく、ただ聞いてもらうだけで、前に進む力が湧いてきた経験があります。相談できる相手の存在そのものが、孤独をやわらげてくれるのだと実感しています。

経営者仲間に相談できる場の例

同じ立場の経営者と出会える場は、思っているよりも身近にあります。商工会議所や異業種交流会、経営者の勉強会、朝の集いなど、悩みを率直に話せる関係は、こうした場から生まれていきます。湯島倫理法人会も、その一つとして活用していただけたら嬉しく思います。

商工会議所や業界団体

商工会議所や業界団体は、地域や業種でつながる経営者と出会える場です。経営相談の窓口を設けているところも多く、公的な支援につながる入口にもなります。まず一歩を踏み出す先として、身近で利用しやすい存在です。

経営者の勉強会・朝の集い

経営者の勉強会や朝の集いは、学びを通じて自然と仲間ができる場です。共に学ぶ時間を重ねるうちに、悩みを打ち明けられる関係が育っていきます。文京区エリアで経営者が交流できる場については、文京区で経営者が交流できる場でもご紹介しています。

倫理法人会のような学びの場

倫理法人会のような学びの場は、経営者が朝に集い、悩みや気づきを率直に分かち合う場の一つです。立場が同じ仲間と顔を合わせ続けることで、いざというとき相談できる関係が自然と育ちます。朝の時間を共にする習慣については、経営者の朝活が習慣になるもあわせてご覧ください。

経営者が相談するときに気をつけたいこと

相談は、相手を選び、伝え方を整えることで、より実りあるものになります。守秘や距離感への配慮を欠くと、かえって関係を損なうこともあります。私たち編集部も試行錯誤しながら学んでいる点を、率直に共有させていただきます。

つなぎとして、相談するときに心に留めたい3つの点を整理しました。

経営者が相談するときの3つの心得

答えを急がず、まず聞いてもらう

明確な答えが返らなくても、話すだけで気持ちが整う

守秘とお互いの立場を尊重する

自分が守ってほしいことは、相手の話でも同じように守る

相談したら自分も相手の力になる

一方的に頼るだけでなく、互いに支え合う関係を育てる

答えを求めすぎず、まず聞いてもらう

相談というと、すぐに答えを求めたくなるものです。けれど、明確な答えが返らなくても、話を聞いてもらうだけで気持ちが整うことは少なくありません。答えを急がず、まず聞いてもらう。その姿勢でいると、相手も構えずに向き合ってくれます。

守秘とお互いの立場を尊重する

相談で知った相手の事情を、外に漏らさないことは大前提です。自分が守ってほしいことは、相手の話でも同じように守る。お互いの立場を尊重し合う関係でこそ、安心して本音を出し合えます。信頼は、こうした小さな配慮の積み重ねで保たれます。

相談したら自分も相手の力になる

相談は、一方的に頼るだけでは長続きしません。自分が助けてもらったら、相手が困ったときには自分も力になる。互いに高め合う「共尊共生」の関係が、長く続く支え合いを生みます。与え合う姿勢が、孤独を分かち合える仲間を育てていきます。

倫理経営の学びと経営者の孤独

湯島倫理法人会で大切にされている「共に学び合う」という姿勢は、経営者の孤独をやわらげる一つの考え方と重なります。一人で完璧を目指すより、仲間と弱さも分かち合いながら歩む。そうした関わり方が、孤独との向き合い方を少し軽くしてくれるように感じています。

経営者の孤独な相談に寄り添う温かみのあるカフェの無人のテーブル席

弱さを分かち合える仲間の存在

強さを示し続けることだけが、経営者の在り方ではありません。ときに弱さを見せ、助けを求められることも、健やかな経営を支える力となります。弱さを分かち合える仲間がいる。その安心こそが、孤独な決断の重さをやわらげてくれます。

「共尊共生」が孤独をやわらげる

互いを尊重し、共に生きる「共尊共生」の精神は、経営者同士の支え合いの土台になります。競い合う相手ではなく、共に高め合う仲間として向き合う。喜んで働く「喜働(よろこんではたらく)」の姿勢も、こうした仲間との関わりの中で育まれていきます。

湯島倫理法人会でのご一緒の学び

湯島倫理法人会では、文京区エリアの経営者が朝に集い、悩みや気づきを率直に分かち合っています。私たち編集部も日々学んでいる仲間として、ご興味のある方はお気軽にモーニングセミナーへゲスト参加してみませんか。

モーニングセミナーへのゲスト参加

モーニングセミナーは毎週月曜日の7:00から8:00まで、全国家電会館1階で開いています。会員・非会員を問わず参加費は無料で、ゲスト参加を歓迎しています。同じ立場の経営者と顔を合わせ、悩みを率直に話せる関係を育てるきっかけが得られるはずです。皆様のゲスト参加を心よりお待ちしております。

湯島倫理法人会の活動概要

朝7:00のモーニングセミナーへの参加が難しい方には、その後に開く湯島つながりラボという、よりカジュアルな交流の場もご用意しています。当日の流れや会場の詳細はモーニングセミナーのご案内でお伝えしていますので、ご都合に合わせてお選びいただけたら幸いです。

よくある質問

経営者の孤独と相談について、経営者の方からよくいただく質問をまとめました。

Q. 経営者の孤独は、まず誰に相談するのがよいですか?

悩みの種類によって変わります。事業の数字なら税理士、人の悩みなら信頼できる幹部、立場ゆえの孤独そのものなら同じ経営者仲間、というように分けて考えてみてはいかがでしょうか。一人にすべてを求めず、複数の相手に少しずつ相談していくほうが楽になっていくものです。

Q. 社員に弱音を見せたくありません。どうすればよいですか?

社内で言いにくい悩みは、利害のない社外の相手に相談する選択肢があります。同じ立場の経営者仲間や、経営者が集うコミュニティは、守秘を保ちながら本音を話せる場になりやすいものです。社内と社外で相談先を分けることが、無理のない方法の一つです。

Q. 心の整え方そのものについても知りたいです。

孤独と向き合う心の整え方については、別記事の経営者のメンタルを維持する方法でお伝えしています。本記事の相談相手の見つけ方とあわせてご覧いただけたら嬉しく思います。

Q. 相談できる経営者仲間は、どこで見つかりますか?

商工会議所や業界団体、経営者の勉強会、朝の集いなどが身近な入口です。湯島倫理法人会のモーニングセミナーも、同じ立場の経営者と出会い、悩みを率直に話せる関係を育てる場の一つとしてご活用いただけます。

Q. 相談するのが苦手です。何から始めればよいですか?

いきなり重い悩みを打ち明ける必要はありません。まずは小さな相談から始め、相手との信頼を少しずつ育てていく形が現実的です。一度に解決しようとせず、聞いてもらうだけでも気持ちが整うことがあると感じています。

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