社員から退職の申し出を受けた朝の、あの独特の重さ。経営をされている方なら、一度は経験されているのではないでしょうか。中小企業の場合、一人抜けるだけで現場が止まってしまうことも珍しくありません。「うちは人が辞めやすい会社なのだろうか」。その問いを抱えたまま、答えを出せずにいる方も少なくないように感じています。

先に結論をお伝えします。中小企業の離職率が一律に高いわけではありません。事業所の規模ごとに、階段のような差が公表されています。厚生労働省の調査データでは、大学卒の3年以内離職率が5〜29人の事業所で52.0%、1,000人以上で27.0%。規模を問わない全体の離職率は、同省の雇用動向調査で令和6年に14.2%と示されました。

この記事で扱うのは5つ。規模別データの読み方と、自社の離職率の出し方。辞められている時期の見つけ方と、全国調査が示す離職の理由。そして、手をつける順序です。ご一緒に、数字と向き合ってみませんか。

中小企業の離職率は、規模ごとに階段のように違います

中小企業の離職率には、規模に沿った連続した傾斜があります。「小さい会社は辞めやすい」という一言では、収まりきらない構造です。

この2つの数字は、性質が違うものです。前者は新卒で入った方の3年間を追いかけた率。後者は1年間に会社を離れた方の割合です。混ぜて語ると話がねじれますので、ここでは分けて見てまいりましょう。

朝日が差す静かなオフィスの机に広がる中小企業離職率の資料

まず結論——令和6年の離職率は、全体で14.2%でした

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査結果の概況」(令和7年8月26日公表)を見てみます。令和6年1年間の離職率は14.2%、入職率は同調査で14.8%でした。入ってくる方が0.6ポイント多い、入職超過という状態です。

この数字は、同じ調査で前年から1.2ポイント下がりました。世の中全体の人の動きが、やや落ち着いた一年と読むこともできそうです。

就業形態で分けると景色が変わります。同調査のデータでは、一般労働者の離職率が11.5%。パートタイム労働者は21.4%で、倍近い差が出ています。パートタイムの方が多い職場では、会社全体の離職率が自然と高く出るわけです。

性別でも差が見られました。同じ統計で男性12.6%、女性16.0%。この調査は常用労働者5人以上の約15,000事業所を対象とし、有効回答率は59.6%と公表されています。

常用労働者とは、期間を定めずに雇われている方などを指す言葉です。例えば正社員のほか、契約が繰り返し更新されているパートの方も含まれます。日雇いや短期の応援は入りません。

つまり「14.2%」という一つの数字は、雇用形態や男女比によって上下する平均値。自社の数字をここに直接ぶつけて一喜一憂するより、条件を揃えて比べるほうが実りがあるのではないでしょうか。

令和6年の主な数字を、3つに絞って並べてみます。

令和6年の離職率、3つの基準値 自社の数字と比べるときの物差しになる、3つの値を並べました。就業形態で倍近い差が出ている点にご注目ください。
全体の離職率 14.2% 前年比 ↓ 1.2ポイント 入職率は14.8%で入職超過
一般労働者 11.5% 正社員などを中心とする区分
パートタイム労働者 21.4% 一般労働者のおよそ2倍の水準
※ 出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」令和7年8月26日公表。常用労働者5人以上の約15,000事業所が対象。

大学卒の3年以内離職率は、5〜29人の事業所で52.0%

規模ごとの差がはっきり出るのが、厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」です。令和7年10月24日に公表されたこの資料では、就職後3年以内の離職率が事業所規模別に示されました。

同調査のデータで大学卒を見ると、5人未満が57.5%、5〜29人が52.0%。そこから30〜99人が41.9%、100〜499人が33.9%と続きます。500〜999人は31.5%、1,000人以上は27.0%。規模が一段上がるごとに、率が下がっていく形です。

高校卒はさらに傾斜が急でした。同じ統計で5人未満63.2%、5〜29人54.6%、30〜99人45.2%。100〜499人は36.7%、500〜999人29.9%、1,000人以上26.3%と並びます。

全体としては、この調査で大学卒33.8%、高校卒37.9%。どちらも前年より下がっており、大学卒は1.1ポイント、高校卒は0.5ポイントの低下です。

この階段を見て、私たち編集部が最初に感じたのは「30〜99人のあたりに大きな段差がある」ということでした。同調査で5〜29人の52.0%から30〜99人の41.9%まで、一段で10.1ポイント。組織の形が変わる境目が、このあたりに潜んでいるのでしょう。

数字を横に並べたほうが分かりやすいと思われますので、表にしてみます。

事業所規模別に見た、就職後3年以内の離職率 令和4年3月に卒業して就職した方を、3年間追いかけた調査です。ご自身の会社に近い行を探して、現在地を確かめてみてください。
事業所の規模 大学卒 高校卒 出典
5人未満 57.5% 63.2% 厚労省 令和4年3月卒業者の離職状況調査
5~29人 52.0% 54.6% 厚労省 令和4年3月卒業者の離職状況調査
30~99人 41.9% 45.2% 厚労省 令和4年3月卒業者の離職状況調査
100~499人 33.9% 36.7% 厚労省 令和4年3月卒業者の離職状況調査
500~999人 31.5% 29.9% 厚労省 令和4年3月卒業者の離職状況調査
1,000人以上 27.0% 26.3% 厚労省 令和4年3月卒業者の離職状況調査
※ 色を敷いた2行が中小企業の中心的な規模帯です。5~29人から30~99人へ一段上がるところで、大学卒は10.1ポイント下がります。全体の3年以内離職率は大学卒33.8%、高校卒37.9%。出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」令和7年10月24日公表。

「中小企業だから高い」ではなく「規模ごとに幅がある」と見てみる

この階段を「中小企業の宿命」と受け取るか、「幅がある」と受け取るか。ここで読み方が分かれるところです。私たちは後者に近い見方をとります。

理由は単純で、同じ規模帯の中にも上下があるはずだから。同調査で30〜99人という帯の平均が41.9%であれば、その帯には30%台の会社も50%台の会社も含まれているはずです。平均は、自社の運命を決める数字ではありません。

もう一つ、産業による差も無視できないところ。同じ調査のデータでは、大学卒3年以内離職率が最も高い産業は宿泊業・飲食サービス業で55.4%、高校卒では64.7%でした。業種の特性が、規模以上に効いてくる場面もあるわけです。

ですので、自社の数字を測るときは「規模」と「業種」の2つで条件を揃えていただくのがよいのではないでしょうか。全国平均とだけ比べると、実態より厳しく見えたり、逆に安心しすぎたりする恐れがあります。

平均から離れた場所に自社を置くこと。それは可能だと、私たちは湯島の朝で多くの経営者から教えていただいてきました。

自社の離職率を、いちど自分の手で計算してみませんか

平均値を眺めているだけでは、自社が高いのか低いのかは分かりません。ご自身の会社の数字を出すところから始まります。

それにもかかわらず、「御社の離職率は何%ですか」とうかがって即答いただけることは、そう多くないのが実際のところ。決算書の数字は諳んじておられる方でも、人の出入りは感覚で捉えていらっしゃる場面が目立ちます。

難しい計算ではありません。ここでは出し方と、出すときに迷いやすい2つの分岐点を整理してみます。電卓ひとつで済む作業ですので、この記事を読み終えたあとにでも試していただけたら嬉しく思います。

計算式そのものは、とてもシンプルです

離職率の計算式は、その年の離職者数を、年初の常用労働者数で割るというものです。厚生労働省の雇用動向調査も、この式で算出していると明記しています。100を掛けてパーセント表示にすれば完成。

例えば1月1日時点で20名の会社を思い浮かべてください。1年間で3名が退職された場合、3÷20×100で15.0%となります。電卓ひとつあれば数分で出せる数字です。

ここで一つだけ気をつけたいのが、定年退職や契約期間の満了を含めるかどうかという点。国の統計はこれらも離職者に含めています。国のデータと比べるなら、自社も同じルールで数えるほうが筋が通ります。

一方、社内の改善のために見るのであれば、自己都合の退職だけを分けて数える見方も有効です。2種類の数字を並べておくと、後々の比較で困りません。

大切なのは、毎年同じルールで出し続けること。ルールが年ごとに変わると、増えたのか減ったのかが分からなくなってしまうためです。

自社の数字を出す手順を、3つの段に分けてみました。

自社の離職率を出す、3つのステップ 電卓ひとつで進められます。数分あれば、自社の現在地が数字になって手元に残ります。
STEP 1 年初の在籍を数える 1月1日時点で在籍していた人数を数えます。これが計算の分母です。 正社員のみと全員の2通り
STEP 2 辞めた人数を数える その年に会社を離れた人数を数えます。定年や契約満了を含めるかで2通り出します。 国の統計は定年も含む
STEP 3 率にして3年分並べる 離職者数を年初在籍数で割り、100を掛けます。同じ手順で3年分を並べます。 水準より方向を見る
※ 計算式は厚生労働省「雇用動向調査」と同じ考え方です。毎年同じルールで出し続けることが、比べられる数字をつくります。

分母をどこに置くかで、数字の意味が変わります

分母を年初の在籍数に置くのが国の方式です。ただ、年の途中で大きく採用した会社の場合、この置き方では実感とずれることがあります。

例えば年初20名の会社が、春に10名を採用したとします。そのうち3名が年内に辞められた場合、年初20名を分母にすれば15.0%です。その年に在籍した延べ30名を分母にすれば10.0%。同じ出来事が、置き方ひとつで違う顔を見せるわけです。

どちらが正しいという話ではありません。国と比べたいなら国の方式、社内の実感に近づけたいなら延べ人数。目的で使い分けていただければと考えています。

もう一つ、パートやアルバイトを含めるかどうかも大きな分岐点。先ほどの雇用動向調査のデータでは、パートタイム労働者の離職率が21.4%、一般労働者が11.5%でした。含めれば率は上がる方向に動くはずです。

私たちがおすすめしたいのは、正社員だけの数字とパート等を含めた数字の両方を持っておくこと。手間は少し増えますが、どこで人が動いているのかが見えるようになります。

一年分だけでなく、三年分を並べてみる

一年だけの離職率は、たまたまに左右されます。20名の会社で1名が辞めれば5.0%、2名なら10.0%。小さな会社ほど、一人の重みが率を大きく動かす構造です。

ですので、3年分を並べて傾向を見ることをお勧めしています。上がり続けているのか、下がっているのか、行ったり来たりしているのか。方向のほうが、その年の水準より多くを語ります。

湯島の朝でお会いした経営者の方が、5年分の退職者を一枚の紙に書き出されたそうです。すると、ある年を境に数が増えていたとのこと。その年に何があったのかを思い返すと、拠点を増やして目が届かなくなった時期と重なっていたと話してくださいました。

数字は、記憶を呼び戻す手がかりになります。過去の帳簿を開くのは気の重い作業ですが、一度やっておくと、その後の判断が変わってくるものです。

私たち編集部も、こうした振り返りの大切さを、諸先輩方の話から学ばせていただいている途中にいます。

数字は「いつ辞められているか」まで教えてくれます

離職率という一つの数字は、「どの時期に辞められているか」という情報を覆い隠します。時期に注目すると、見えるものが変わってきます。

同じ10%でも、入社半年で抜けているのか、10年勤めた方が去られたのかで、打ち手はまるで違うもの。前者は迎え入れ方の話であり、後者は評価や役割の話に近づきます。

ここでは、国の統計が時期をどう扱っているかを見たうえで、自社の退職者を同じ物差しで並べ直す方法をご紹介します。手を動かす作業が中心になりますので、お手元に過去の名簿があると進めやすいでしょう。

3年以内離職率は、就職からの経過年ごとに公表されています

厚生労働省が毎年出している新規学卒者の資料は、就職後1年目・2年目・3年目それぞれの離職率を分けて示しています。3年をひとまとめにせず、年ごとの内訳まで見せてくれる統計です。

なぜ分けて見ることに意味があるのか。辞められる時期によって、原因が置かれている場所が違うからです。入社してすぐの離職は、採用時に伝えた情報と実際の仕事のずれに関わることが多いもの。

数年経ってからの離職には、評価や将来像の話が絡んできます。同じ「辞めた」でも、会社が向き合う相手が別なのです。

自社の退職者を思い浮かべてみてください。入社から半年以内が多いでしょうか。それとも3年目前後でしょうか。この問いに答えられるだけで、次に見るべき場所がかなり絞られます。

人が育つ環境そのものについては、中小企業で人が育つ環境のつくり方でも扱っております。あわせてご覧いただけたら嬉しく思います。

時期ごとに、どこへ目を向けるかを整理してみます。

辞められた時期から、見るべき場所を絞る 同じ「辞めた」でも、入社からの経過期間によって原因が置かれている場所が違います。自社の退職者がどの帯に多いかを思い浮かべながらご覧ください。
入社 ~ 6か月 迎え入れ方に原因が置かれやすい時期 採用のときに伝えた話と、現場で実際に起きていることのずれ。誰が新しい方の面倒を見るのかが決まっていたかどうか。この帯に山があるなら、入口の設計を見直す番です。
6か月 ~ 1年 仕事の任せ方と、相談相手の有無 ひととおり覚えた頃に、任される量と裁量が釣り合っているか。困ったときに聞ける相手がいるか。ここでの離職は、日々のやりとりの積み重ねに関わります。
1年 ~ 3年 評価の納得感と、成長の実感 がんばりがどう見られているのか。次に何ができるようになるのか。評価の物差しが本人に見えていないと、外に目が向きやすくなります。
3年以上 役割の頭打ちと、会社の将来像 この先どんな役割があるのか。会社がどこへ向かうのか。全国調査で伸びていた「会社の将来が不安だった」という理由は、この帯と重なりやすい話です。
※ 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」は、就職後1年目・2年目・3年目の離職率を分けて公表しています。自社の退職者にも同じ物差しを当てると、手をつける場所が絞られます。

高校卒と大学卒では、階段の傾きが少し違います

先ほどの規模別データを、高校卒と大学卒で見比べると、興味深い差が浮かびます。小さな事業所では高校卒のほうが高く、大きな事業所では逆転するのです。

具体的には、同調査で5人未満は高校卒63.2%に対し大学卒57.5%。高校卒が5.7ポイント上回りました。ところが1,000人以上では高校卒26.3%、大学卒27.0%と、わずかながら大学卒のほうが高く出ています。

この逆転が何を意味するのかは、この資料だけからは断定できません。ただ、小規模な職場ほど若い方への関わり方が結果に響きやすい、という見方はできそうです。

中小企業にとって示唆的なのは、規模が小さいほど、辞めるかどうかが職場の日常に左右されやすいという点でしょう。制度や研修体系で支えきれない分を、日々のやりとりが担っているとも言えます。

裏を返せば、小さな会社にできることは決して少なくないのです。仕組みを整えるより先に、変えられることが手元にあるとも受け取れます。

自社の退職者を「入社から何か月目か」で並べ直してみる

ここからは、その日のうちに取りかかれる作業です。過去3年の退職者を、入社日から退職日までの月数で並べ替えてみてください。

6か月未満、6か月から1年、1年から3年、3年以上。この4つに分けるだけで、山がどこにあるかが見えてきます。特定の帯に集中していれば、そこに何かが起きている証拠です。

さらに一歩進めるなら、その方が所属していた部署や、直属の上司も並べてみる。人数の少ない会社では、特定の部署に偏っていることがはっきり分かる場面も出てきます。

この作業で気が重くなるのは、当然のことでしょう。自分の会社の弱いところを、自分の手で書き出すわけですから。私たちも、自社の数字を並べたときには手が止まりました。

それでも、書き出したものがあるからこそ、翌朝の判断が変わるのだと考えています。

退職者を並べ直すときの5つの観点 過去3年の退職者を書き出したら、次の5つの切り口で数えてみてください。終わった項目にチェックを入れながら進められます。
※ チェックの状態はページを読み込み直すと元に戻ります。手元のメモ代わりにお使いください。

社員が前の職場を辞めた理由の上位にあるもの

辞める理由は一人ひとり違います。それでも全国規模で集計すると、いくつかの理由が繰り返し上位に並びます。

厚生労働省の雇用動向調査は、転職して入職した方に「前の職場を辞めた理由」をたずねています。全国の集計は、自社で起きたことを照らし合わせる鏡のようなもの。ご自身の会社の顔ぶれと重ねながら読んでいただくと、思い当たる節が出てくるはずです。

ここでは男女で異なる傾向、前年から伸びた理由、そして分類されない「その他」の大きさという3点を見ていきます。私たちも、この数字を見るたびに考えさせられています。

令和6年のデータ——男性は収入、女性は労働時間と人間関係

同調査の結果には、男女で異なる傾向が表れました。同じ職場を、違う角度から見ておられるということなのでしょう。

男性の場合、この調査のデータでは「その他の個人的理由」20.2%が最上位です。次に「その他の理由(出向等を含む)」13.5%が続きます。この2つを除くと、最も多いのが「定年・契約期間の満了」14.1%。次いで「給料等収入が少なかった」10.1%という並びです。

女性の場合、同じ統計で「その他の個人的理由」が24.3%。これを除くと最も多いのが「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%です。次が「職場の人間関係が好ましくなかった」11.7%でした。

この結果を眺めていて考えさせられるのは、男女で上位に来る理由が違うという点です。

女性社員の比率が高い職場では、労働時間と人間関係という2つが、そのまま定着の急所になっている。そう読むこともできそうです。

前の職場を辞めた理由、男女別の上位 令和6年に転職して入職した方への調査結果です。「その他の個人的理由」と「その他の理由」を除いた上位2項目を、男女それぞれ並べました。
男性 女性
男性 1位定年・契約期間の満了
14.1%
女性 1位労働時間、休日等の労働条件が悪かった
12.8%
女性 2位職場の人間関係が好ましくなかった
11.7%
男性 2位給料等収入が少なかった
10.1%
※ 出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」令和7年8月26日公表。除いた「その他の個人的理由」は男性20.2%、女性24.3%で、いずれの理由よりも大きな塊になっています。前年からの上昇幅が最も大きいのは、男性の「会社の将来が不安だった」2.2ポイントです。

前年から最も伸びた理由は「会社の将来が不安だった」

同じ調査には、前年からの変化も載っています。この統計で上昇幅が最も大きかったのは、男性の「会社の将来が不安だった」で2.2ポイント。女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」で1.7ポイントでした。

「会社の将来が不安だった」という項目が伸びていることには、考えさせられるものがあります。今の待遇の話ではなく、この先どうなるのかという見通しの話だからです。

給与を上げれば収まる種類の不安ではありません。会社がどこへ向かおうとしているのか、その言葉を社員の方が受け取れているかどうか。そこが問われているのではないでしょうか。

経営者にとって、これは決して耳の痛いだけの話ではないはずです。お金をかけずに手をつけられる領域だとも言えるからです。朝礼や会議で、向かう先を自分の言葉で話す。それだけでも、伝わるものはあるのでしょう。

社員の意欲がどこから生まれるかについては、社員のモチベーションが上がらない原因と対策でも詳しく扱っております。

本当の理由は、辞める前に言葉にならないことも多いようです

ここで一つ、正直にお伝えしたいことがあります。この調査で最も大きな塊になっているのは、実は「その他の個人的理由」なのです。同統計では男性20.2%、女性24.3%を占めていました。

何が起きているのかを最もよく表しているのが、この「その他」という項目だと感じています。分類されない理由が、2割を超えて存在している。言葉にしきれない何かが、そこにあるということでしょう。

退職の申し出を受けてから理由をたずねても、本音が返ってこないというお悩みは、湯島の朝でもよくうかがいます。すでに次が決まっている方が、去り際に波風を立てる理由はないわけです。

ですので、辞意を伝えられた後ではなく、日ごろの短い対話を重ねておくほうに意味があるように考えています。月に一度、5分でも構いません。困っていることはないかと聞ける関係が、あるかどうか。

私たち編集部も、この点はまだ十分にできているとは言えません。ご一緒に取り組んでいけたらと願っています。

数字を見たあとに、経営者として何から手をつけるか

数字が出て、時期が分かって、理由の傾向も見えた。そのあとに残るのは「では何から手をつけるか」という問いです。

すべてを一度に変えることはできません。原資にも時間にも限りがある中で、どこから触るかを決める必要が出てきます。ここを間違えると、手間をかけた割に何も動かなかったという結果になりがちです。

ここでは順序を決めるための考え方を書かせていただきます。正解を示すというより、迷ったときの手すりのようなもの。そう受け取っていただけたら幸いです。

待遇・時間・関係・将来——4つのうち、どこから触るか

全国調査の上位理由をまとめると、待遇・労働時間・人間関係・会社の将来という4つの領域に整理できます。この4つは、着手のしやすさと効き方が違うものです。

待遇は分かりやすい反面、原資が必要です。一度上げれば下げにくいという性質もあります。労働時間は仕組みの見直しで動かせますが、業務量そのものに手を入れないと現場が苦しくなるだけ。

人間関係は、費用がかからない代わりに時間がかかります。会社の将来は、経営者が言葉にするしかない領域。この2つは、社長ご自身が動けば今日から変えられるという共通点を持っています。

どこから触るかに、決まった正解はありません。ただ、自社の退職者を並べ直した結果、特定の部署に偏っていたのであれば、まず人間関係の側から見ていくほうが近道でしょう。

職場の空気そのものへの向き合い方は、職場の雰囲気を改善する具体的な方法にまとめております。

離職対策の4領域、どこから触るか 全国調査で上位に並んだ理由を、4つの領域に整理しました。効き方も、着手のしやすさも、それぞれ違います。
待遇 効き方早く伝わる 前提原資が要る。一度上げると下げにくい 根拠男性の離職理由2位「給料等収入が少なかった」10.1% 着手のしやすさ
労働時間 効き方仕組みの見直しで動く 前提業務量そのものに手を入れないと現場が苦しくなる 根拠女性の離職理由1位「労働条件が悪かった」12.8% 着手のしやすさ
人間関係 効き方時間はかかるが土台が変わる 前提費用はかからない。社長が動けば今日から 根拠女性の離職理由2位「職場の人間関係」11.7% 着手のしやすさ
会社の将来 効き方不安の芯にじかに届く 前提費用はかからない。経営者が言葉にするしかない 根拠前年からの上昇幅1位「会社の将来が不安だった」2.2ポイント 着手のしやすさ
※ 数値の出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」令和7年8月26日公表。色を敷いた2枚は、費用をかけずに今日から手をつけられる領域です。

打ち手を決める前に、辞めた方の話を聞く順番があるようです

対策を決める前に、一つだけ挟んでいただきたいことがあります。すでに辞められた方に、いま改めて話を聞くという手順です。

在職中や退職直前には言えなかったことでも、半年、一年と経つと、穏やかに話してくださることがあるものです。恨みでも遠慮でもない、落ち着いた言葉が返ってくる。そういう場面を、私たちも見てきました。

もちろん、全員に連絡がつくわけではありません。連絡しても返事がないことのほうが多いでしょう。それでも、一人でも応じてくださったなら、その一言は全国統計の何倍もの価値を持つはずです。

聞き方も工夫のしどころ。「なぜ辞めたのか」ではなく、「どうしていたら残っていたと感じられますか」とたずねると、答えやすくなるようです。過去の否定ではなく、仮の話として答えていただける形になるためでしょう。

この作業は勇気が要ります。ただ、勇気を出した分だけ返ってくるものがあると、多くの経営者から教えていただいてきました。

私たち編集部も、まだ答えの途中にいます

ここまで書いてまいりましたが、私たち自身が離職の問題を解ききったわけではありません。数字を出し、時期を並べ、理由を聞き、それでも人が去っていく朝はやってくるもの。

湯島倫理法人会では、毎週月曜日の朝にモーニングセミナーを開いています。6:30から活力朝礼、7:00から8:00まで講話。会場は東京都文京区湯島3-6-1の全国家電会館1階です。

この場でよく聞かれるのは、うまくいった話ばかりではありません。社員が辞めたときに自分の何が足りなかったのかを、率直に話される経営者の姿があります。答えを教わるというより、同じ立場の方の試行錯誤に触れる場。そこに救われる朝が、私たちにもありました。

明朗(ほがらか)という言葉が、この会ではよく使われます。取り繕った明るさではなく、起きたことを受け止めたうえでの明るさ。人が辞めた朝にこそ試されるものだと感じています。

初めての方は、ゲストとして無料でご参加いただけます。セミナー後の朝食会も自由参加です。朝7時が難しい方には、9:30から11:00に開いている湯島つながりラボという場もございます。数字と向き合う日々の合間に、一度ご一緒できたら幸いです。

中小企業 離職率を考える朝の会議室 椅子と資料とお茶が並ぶ静かな空間

ここまでの内容を、最後に振り返らせてください。

中小企業の離職率は、規模ごとに階段のような差が公表されています。厚生労働省の調査データで、大学卒3年以内は5〜29人の事業所が52.0%、1,000人以上が27.0%。ただし平均は自社の運命を決める数字ではありません。まずは年初の在籍数を分母に、自社の率を3年分並べてみる。次に退職者を入社からの月数で区分し、山がどこにあるかを見る。そのうえで、待遇・労働時間・人間関係・会社の将来という4つのうち、どこから触るかを決めていく。この順序が、遠回りに見えて確かな道だと感じています。

数字は、経営者を責めるためのものではありません。次の一手を選ぶための手がかりです。ご一緒に、一つずつ確かめていけたら嬉しく思います。

よくあるご質問

中小企業の離職率の平均はどれくらいですか。

厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」では、規模を問わない全体の離職率が14.2%と公表されています。ただしこの調査は事業所規模別の平均を分けて示していません。規模ごとの差を見たい場合は「新規学卒就職者の離職状況」の3年以内離職率が参考になります。同調査の令和4年3月卒では、大学卒で5〜29人の事業所が52.0%、1,000人以上が27.0%でした。

自社の離職率が高いかどうかは、何と比べればよいのでしょうか。

同じ事業所規模、同じ業種の数字と比べていただくのがよいでしょう。産業による差は大きく、同じ調査のデータでは大学卒3年以内離職率が宿泊業・飲食サービス業で55.4%。全体の33.8%を大きく上回ります。全体平均とだけ比べると、実態より厳しく見えたり、逆に安心しすぎたりする恐れがあります。

離職率は低ければ低いほどよいのでしょうか。

一概にそうとも言い切れないところです。極端に低い場合、外に出る選択肢を持ちにくい状態になっていることもあり得ます。数字そのものを目標に置くより、一件ずつ振り返るほうが実りがあります。辞めた方がどの時期に、どんな理由で辞められたのか。そこから次の一手が見えてくるのではないでしょうか。

退職理由を本人に聞いても、本当のことを話してもらえない気がします。

そう感じておられる経営者の方は少なくありません。全国の調査でも「その他の個人的理由」が最も大きな塊になっており、同統計では男性20.2%、女性24.3%を占めました。言葉にされない部分があることをうかがわせます。辞意を伝えられた後では遅い、というのが実感です。日ごろから短い対話を重ねておくほうが、結果として多くを教えていただけます。

経営者自身が学ぶ場として、湯島倫理法人会ではどんなことをしていますか。

毎週月曜日の朝、6:30からの活力朝礼と7:00からのモーニングセミナーを開いています。会場は東京都文京区湯島3-6-1の全国家電会館1階です。社員のことで悩まれている経営者が、うまくいったことも、いかなかったことも率直に話される場になっています。初めての方はゲストとして無料でご参加いただけますので、お気軽にお越しください。

倫理経営を朝から学ぶ、湯島の経営者コミュニティへ

湯島倫理法人会は文京区湯島3-6-1 全国家電会館1階で、毎週月曜日 朝7:00からモーニングセミナーを開催しています。初めての方もゲスト参加(無料)でお越しいただけます。朝が難しい方は9:30から始まる「湯島つながりラボ」も別会場でお待ちしています。

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