「経営計画を作らないといけない」。そう思いながら、期末の慌ただしさに紛れて、また一年が過ぎてしまった。そんな経験をお持ちの経営者の方は、少なくないのではないでしょうか。私たち編集部も、湯島の朝で同じお話をうかがうことがよくあります。作れていない自分を、どこかで責めてしまう。その感覚も含めて、よく分かるつもりです。

先に結論をお伝えします。経営計画は、5つの手順に分ければ、A4用紙1枚からでも組み立てられます。現在地の棚卸し、ありたい姿の言語化、数字への翻訳、月ごとの行動への分解、そして共有と見直しの約束。中小企業庁の調査データでは、経営計画を策定している事業者の売上高変化率が7.7%、策定していない事業者が5.7%と示されました。

この記事で扱うのは5つ。全国の策定状況、5手順の中身、計画期間の決め方、作ったあとの運用、そして続けるための工夫です。正解をお示しするというより、迷ったときの手すりのようなものとして受け取っていただけたら嬉しく思います。

経営計画を作っている中小企業は、いま全体の5割ほどです

経営計画を策定している中小企業は、およそ半数です。作れていないことは、決して珍しい状態ではありません。

半数が作っていて、半数が作っていない。そういう分布です。ここから、作り方の話にご一緒に入ってまいりましょう。

早朝の静かなオフィスの机に広げた経営計画作り方のノートと電卓

まず結論——経営計画を策定している事業者は51.1%でした

中小企業庁の「2025年版中小企業白書」を開いてみます。第2部第1章第1節に、中小企業の経営計画をめぐる調査結果がまとまっていました。

同白書の第2-1-7図では、経営計画の策定状況が3つに分かれています。「策定している」51.1%、「策定していないが、今後策定する予定である」26.6%、「策定しておらず、策定する予定もない」22.3%。回答数は24,588者です。

ここで言う経営計画とは、当面の収支計画と、それを達成するための行動計画や資金繰り計画をまとめたもの。同白書がそう定義しています。分厚い冊子である必要はない、という意味に読み取れました。

作っていない側にも目を向けてみます。全体の26.6%が「今後策定する予定」と答えており、策定していない事業者に限れば、その過半数が予定ありという計算です。いまこの記事を読んでくださっている状態は、全国の経営者の4人に1人と同じ位置。決して出遅れではないのです。

策定している会社の売上高変化率は7.7%、していない会社は5.7%

作ると何が変わるのか。同白書の第2-1-15図が、その手がかりを示しています。

同調査のデータでは、売上高の変化率(中央値)が、策定している事業者で7.7%、策定していない事業者で5.7%。付加価値額の変化率は、同じ統計で9.9%と8.1%でした。いずれも2023年と2018年を比べて算出された数字です。

差は2ポイントほど。劇的というより、静かな違いです。白書自身も「一概にはいえない」と断りを添えたうえで、業績の向上につながる可能性を指摘するにとどめています。私たちも、そのくらいの温度で受け止めるのがちょうどよいと感じました。

では実際に何が実現できたのか。同白書の第2-1-14図によれば、策定した事業者が挙げた上位は「経営状況の把握」56.5%、「自社の強みや弱みの理解」39.1%、「業績の向上」33.2%(複数回答)。売上より先に、自社が見えるようになった、という声のほうが多かったわけです。

中小企業の経営計画の策定状況
51.1% 策定している
n=24,588
策定している 51.1%
策定していないが、今後策定する予定である 26.6%
策定しておらず、策定する予定もない 22.3%
※ およそ半数が策定済み、4分の1が今後の策定を予定しています。出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2-1-7図(資料:株式会社帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」2024年11月~12月実施)。

作っていない理由の一番は「時間的余裕がないため」37.5%

作れていない理由にも、全国の傾向があります。同白書の第2-1-11図を見てみます。

同調査(複数回答、回答数11,709者)では、「時間的余裕がないため」が37.5%で最も多い回答でした。次いで「事業環境変化が激しく、先が見通せないため」26.4%、「必要性を感じないため」21.8%と続きます。「どのように作成して良いか分からないため」は17.8%、「策定のきっかけがないため」が17.7%でした。

上位2つを並べると、少し見えてくるものがあります。時間がない、そして先が読めない。どちらも、経営者の方が悪いという話ではありません。日々の判断に追われる立場そのものが持つ、構造的な難しさです。

一方で「どう作ればいいか分からない」17.8%と「策定のきっかけがないため」17.7%は、いずれも2割近い水準でした。この2つは、手順と機会さえあれば動き出せる層とも読めます。本記事の後半が、その一助になれば幸いです。

時間の使い方そのものに手を入れたい方には、社長が考える時間を取り戻す5つの手順でも、考える時間を予定に先置きする方法をまとめています。

経営計画を策定しない理由(上位5項目) 作れていない理由には、全国共通の傾向があります。ご自身に当てはまるものを探してみてください。
時間的余裕がないため 37.5%
事業環境変化が激しく、先が見通せないため 26.4%
必要性を感じないため 21.8%
どのように作成して良いか分からないため 17.8%
策定のきっかけがないため 17.7%
※ 複数回答のため合計は100%になりません。回答数11,709者。棒の長さは最大値を100とした相対表示です。出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2-1-11図(資料:株式会社帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」2024年11月~12月実施)。

経営計画の作り方|5つの手順で骨格から組み立ててみる

経営計画は、5つの手順に分解できます。現在地の棚卸し、ありたい姿の言語化、数字への翻訳、行動への分解、共有と見直しの約束。この順番です。

いきなり分厚い計画書を目指すと、たいてい途中で止まってしまいます。私たち自身、書きかけのまま引き出しにしまった年がありました。ここでは、A4用紙1枚から始められる形で整理してみます。

先に全体像をお伝えしておきます。手順1で現在地を確かめ、手順2で行き先を言葉にする。手順3でその行き先を数字に置き換え、手順4で月ごとの行動まで下ろす。そして手順5で、社員の方と分かち合い、見直す日を決めておく。この5つです。

順番どおりに進めなくても構いません。取りかかりやすいところから手をつけて、あとで前後をつなぐ形でも十分に形になります。所要時間の目安は、初年度で合計3時間ほど。一度に済ませるより、30分ずつ6回に分けるほうが、私たちの場合は続きました。

経営計画の作り方 5つの手順 A4用紙1枚から始められる順序です。取りかかりやすいところから手をつけていただいて構いません。
1 現在地の棚卸し 直近3期分の数字と人員を一枚の紙に書き出します
2 ありたい姿の言語化 3年後や5年後に、誰に何を届けている会社かを言葉にします
3 数字への翻訳 残したい利益から逆算し、必要な粗利と売上を求めます
4 月ごとの行動へ分解 年間の数字を月次に割り、担当者まで明記します
5 共有と見直しの約束 社員と分かち合い、見直す日を先に決めておきます
※ 初年度の所要時間は合計3時間ほどが目安です。一度にまとめてではなく、30分ずつ分けて進める形でも取り組めます。

手順1 いまの数字と、いまの現場を棚卸しする

最初にすることは、未来を描くことではなく、現在地を確かめる作業です。地図を広げる前に、自分がどこに立っているかを知る。それに近い工程だと捉えています。

用意していただくのは、直近3期分の決算書と、いまの人員表。売上、粗利、固定費、借入残高、そして人数。この5つを一枚の紙に書き出すだけで、輪郭が見えてきます。

同白書の第2-1-9図では、策定目的として「経営状況の把握」を挙げた事業者が33.2%。実際に実現できたこととしては、同じ調査で56.5%まで上がっていました。目的にしていた以上に、把握が進んだ。この差は、棚卸しの効き目を物語っているように感じます。

ここで完璧を求めないことが、続けるコツです。数字が一部あやふやでも、まずは書ける範囲で書いてしまう。空欄は、翌年埋めれば十分間に合います。

棚卸しで書き出す項目を、一覧にしておきます。

手順1 現在地の棚卸しで書き出す6項目 決算書と人員表があれば、その日のうちに埋められる範囲です。空欄が残っても構いません。
直近3期分の売上高 3年分を横に並べると、伸びているのか横ばいなのかが一目で見えます
同じく粗利と粗利率 手順3で売上を逆算する際、粗利率が割り戻しの土台になります
固定費の総額と内訳 人件費・家賃・その他の3つに分けるだけでも十分に使えます
借入残高と年間返済額 返済額は利益から出ていくため、必要利益の下限を決めます
部門別の人員数と年齢構成 5年後に定年を迎える方が何名いるかを、ここで確認しておきます
主要取引先の売上構成比 1社への依存度が高い場合、それ自体が計画の論点になります
※ 中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2-1-14図では、経営計画を策定した事業者が実現できたこととして「経営状況の把握」を56.5%が挙げています(複数回答・n=12,570)。棚卸しは、その入口にあたる作業です。

手順2 3年後・5年後にどうありたいかを言葉にする

次は、数字ではなく言葉の作業です。3年後、あるいは5年後に、自社がどうなっていたいか。誰に、何を、どんな状態で届けている会社でありたいか。ここを言語化します。

売上目標から入りたくなるところですが、順番を逆にしてみてください。「いくら売るか」より先に「どんな会社でありたいか」。この順で書くと、あとから出てくる数字に理由が宿ります。

経営理念をすでにお持ちの会社であれば、その言葉との接続を確かめる作業になります。理念の言語化そのものに迷いがある場合は、経営理念を言語化して浸透させる作法もあわせてご覧いただけたらと思います。

ここは、経営者お一人で書ききらなくても構いません。幹部の方に「うちはどんな会社だと思うか」と尋ねてみると、思わぬ言葉が返ってくることがあります。私たちも、社員の一言から書き直した経験がありました。

手順3 ありたい姿を、売上と利益の数字に翻訳する

言葉が定まったら、それを数字に置き換えます。3年後の売上高、粗利率、必要な人員数、そして必要な設備投資。ここまで来ると、計画らしい形になってきます。

翻訳の順序は、売上から入るより、利益から逆算するほうが素直です。残したい利益、支払う人件費、必要な固定費。この合計から必要な粗利が出て、粗利率で割り戻すと売上が求まります。

同白書の第2-1-9図では、策定目的の最多が「業績の向上」で35.1%。次いで「経営状況の把握」33.2%、「自社の強みや弱みの理解」15.2%と並びます。同じ調査で「補助金の獲得」は8.0%、「融資の獲得」は4.8%でした。外向けの書類として作る会社より、自社のために作る会社のほうが、はるかに多いのです。

数字が現実離れしていないか不安になったときは、直近3期の実績の伸び率と見比べてみてください。過去の伸びと極端に違う数字には、必ず理由が要ります。

手順4 数字を、月ごとの誰かの行動まで分解する

計画が絵に終わるか動き出すかの分かれ目は、この手順にあると感じています。年間の数字を、月ごとの行動に落とす。しかも「誰が」を明記する。ここまでやって、ようやく計画は生き物になります。

例えば「新規顧客を年12社増やす」という数字であれば、月1社。そのために必要な商談数が月5件、問い合わせ件数が月10件、といった具合に逆算していきます。行動の単位まで下りると、朝礼で共有できる言葉に変わるのです。

同白書の第2-1-12図によれば、「計画の達成に向けた行動」に取り組んでいる事業者は95.8%。ほとんどの会社が、行動そのものには着手しています。差がつくのは、この次の工程でした。

年間の数字が月ごとの行動に変わるまでを、図にしてみます。

年間の数字が、月ごとの行動に変わるまで 新規顧客を年12社増やす、という目標を例に、行動の単位まで下ろしてみます。
1 年間の売上目標 残したい利益と固定費から逆算した年間の数字 年間
2 必要な粗利と新規顧客数 既存顧客の維持分を差し引いた不足を、新規で埋める 12社
3 月あたりの新規顧客数 12社を12か月で割った、毎月の到達点 月1社
4 月あたりの商談件数 成約率2割なら、1社の受注に5件の商談が必要 月5件
5 月あたりの問い合わせ件数 商談化率5割なら、その倍の問い合わせが要る計算 月10件
6 担当者と締切の明記 誰が、いつまでにを書いて、はじめて朝礼で共有できる言葉になる 毎月
※ 成約率2割・商談化率5割は説明のための仮の数値です。ご自身の会社の実績値に置き換えてお使いください。

手順5 社員と分かち合い、いつ見直すかを先に決めておく

最後は、計画を自分の机から出す作業です。全社に配るか、幹部と共有するか、朝礼で一部を読み上げるか。形は会社ごとに違って構いません。

あわせて決めていただきたいのが、見直しの日付です。四半期に一度、あるいは半期に一度。「うまくいかなかったら見直す」ではなく、「この日に見直す」と先に決めておく。これだけで、計画が生き延びる確率が変わります。

朝の場でお会いする経営者の方には、期初に社員の前で計画を読み上げるという方を何人か存じ上げています。人前で口に出すと、自分の言葉に責任が生まれる。そうおっしゃっていました。

計画は何年先まで見るか|期間によって数字の伸びが違っています

計画期間は、1年超〜3年以内で作る会社が最も多く、38.2%です。そして長く見ている会社ほど、業績の伸びが大きい傾向が出ています。

手順3まで進むと、必ず「これは何年分の計画なのか」という問いにぶつかります。ここは正解のある部分ではありませんが、判断の材料になるデータがありました。

同白書の調査では、計画期間の長さと業績の変化率に、はっきりした傾斜が見られます。5年超を見据えている事業者の売上高変化率(中央値)が13.2%、1年以内の事業者が3.6%。策定の有無による差よりも大きな開きです。

とはいえ、いま1年分も書けていない状態から5年計画に飛ぶ必要はないと考えています。この章では、実際の分布と、無理なく期間を伸ばしていく進め方をご一緒に見てまいります。

5年超を見据えている事業者の売上高変化率は13.2%

同白書の第2-1-16図は、計画期間別の業績の変化率を示したものです。ここが、今回いちばん考えさせられた図でした。

同調査のデータでは、売上高の変化率(中央値)が、5年超を見据えている事業者で13.2%。3年超〜5年以内が9.9%、1年超〜3年以内が5.4%、1年以内が3.6%と並びます。付加価値額の変化率も、同じ統計で15.1%、11.8%、8.2%、5.7%と、同じ順序でした。

5年超と1年以内の差は、売上高で9.6ポイント。策定の有無による差(2.0ポイント)よりも、はるかに大きく開いています。作るかどうかより、どれだけ先を見て作るか。そちらのほうが差になっている、と読める結果です。

もっとも、これは相関を示したものであり、長期計画を作れば伸びるという因果までは示していません。長く先を見られる体力のある会社が、結果として伸びている。そういう順序も十分に考えられます。

計画期間別に見た、売上高と付加価値額の変化率 いずれも中央値です。長く先を見ている事業者ほど、両方の指標が高い水準になっています。
計画期間 売上高の変化率 付加価値額の変化率 出典
5年超 13.2% 15.1% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2-1-16図
3年超~5年以内 9.9% 11.8% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2-1-16図
1年超~3年以内 5.4% 8.2% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2-1-16図
1年以内 3.6% 5.7% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2-1-16図
※ 変化率は2023年と2018年を比較して算出された中央値です。付加価値額は営業利益・人件費・賃借料・租税公課の合計。色を敷いた行が最も高い水準でしたが、これは相関であり、長期計画が業績を押し上げる因果までは示されていません。出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2-1-16図(資料:株式会社帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」2024年11月~12月実施)。

実際に多いのは1年超〜3年以内で38.2%

では現実に、みなさんどのくらいの期間で作っているのか。同白書の第2-1-8図が答えを持っています。

同調査(回答数12,389者)では、1年超〜3年以内が38.2%で最多。3年超〜5年以内が34.0%と続き、1年以内が15.1%、5年超は12.7%でした。3年以内が過半数を占める一方、5年超まで見ている会社は1割強にとどまります。

つまり、伸びている層と、多数派の層はずれています。5年超で作っている12.7%が、結果としていちばん高い変化率を示している。ここに、少し先を見てみる価値があるように感じました。

とはいえ、最初から5年先を描くのは重い作業です

数字がそう出ているからといって、いきなり5年計画に飛ぶ必要はないと考えています。書けないものを書こうとすると、手が止まるだけだからです。

現実的な進め方として、3年で骨格を作り、翌年の見直しのときに1年足して4年分にする。そうやって少しずつ地平線を伸ばしていく形も選べます。私たちも、最初は1年分の数字を並べるだけで精一杯でした。

事業承継を視野に入れておられる方の場合は、承継の時期から逆算する方法もあります。誰に、いつ、どんな状態で渡すのか。その一点が決まると、期間は自然と決まってくるものです。

作ったあとが本番です|進捗管理と見直しが効果を分けています

計画の効果を分けているのは、作った内容そのものよりも、作ったあとの扱い方です。運用の3つの取組をすべて行った会社と、まったく行わなかった会社では、評価が4倍以上開いていました。

計画書ができあがった日が、いちばん満足度の高い日になってしまう。これも私たちがよく耳にする話であり、自戒を込めて書かせていただきます。

同白書は、計画の運用を3つの取組に分けて調査しています。計画の達成に向けた行動、計画の進捗管理、そして実績の評価と計画の見直し。この3つです。取り組んでいる事業者の割合は、順に95.8%、89.9%、85.6%と、後ろの工程ほど下がっていきます。

こぼれやすいのは、いちばん最後の見直しの工程でした。ここを拾えるかどうかで、計画への評価が大きく変わっています。その落差を、数字で見てまいりましょう。

運用の3点セット——達成に向けた行動・進捗管理・評価と見直し

同白書の第2-1-12図では、経営計画の運用が3つの取組に分けて調査されています。

同調査(回答数12,570者)のデータでは、「計画の達成に向けた行動」に取り組んでいる事業者が95.8%。「計画の進捗管理」が89.9%、「計画に対する実績の評価・計画の見直し」が85.6%でした。後ろの工程ほど、少しずつ数字が下がっていきます。

行動はする。進捗も追う。けれど、実績を評価して計画そのものを直す作業は、こぼれやすい。この傾斜には、思い当たる節のある方も多いのではないでしょうか。

3つすべてに取り組んだ会社で「効果は得られなかった」は11.3%

差がはっきり出るのが、同白書の第2-1-17図です。運用状況別に、経営計画の評価を見た図になります。

同調査のデータでは、3つすべてに取り組んでいる事業者(回答数9,028者)のうち、「想定した効果は得られなかった」と答えたのは11.3%。「想定した効果が得られた」が79.8%、「想定を超える効果が得られた」が8.9%でした。

一方、3つのいずれにも取り組んでいない事業者(回答数206者)では、同じ統計で「想定した効果は得られなかった」が48.5%。およそ半数にのぼります。11.3%と48.5%。4倍以上の開きです。

さらに細かく見ると、行動だけの層で28.8%、行動と進捗管理までの層で19.3%と、取組が一つ増えるごとに下がっていました。段階的に効いている、という形です。

計画が効かなかったのではなく、運用まで届かなかった。そう読めるデータではないでしょうか。

運用の取組状況別「想定した効果は得られなかった」割合 運用とは、計画の達成に向けた行動・進捗管理・実績の評価と見直しの3つを指します。取り組んだ数が多いほど、この割合は下がっていました。
運用の取組状況 効果が得られなかった割合 出典
3つすべてに取り組んでいる(n=9,028) 11.3% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2-1-17図
行動と進捗管理まで(n=678) 19.3% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2-1-17図
行動のみ(n=437) 28.8% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2-1-17図
いずれも取り組んでいない(n=206) 48.5% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2-1-17図
※ 経営計画を「策定している」と回答した事業者のうち、計画の評価に「分からない」と答えた事業者を除いた集計です。取組が一つ増えるごとに、効果が得られなかったという回答が段階的に減っていきます。出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2-1-17図(資料:株式会社帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」2024年11月~12月実施)。

見直しを止めないための、小さな仕掛け

見直しの工程が最もこぼれやすいのなら、そこに仕掛けを置くのが現実的です。私たちが見聞きした中で、続いている会社に共通していたことを挙げてみます。

ひとつは、見直しの日を年度初めにカレンダーへ入れてしまうこと。もうひとつは、見直しを一人でやらないこと。幹部の方と1時間だけ机を並べる形にすると、翌期も自然と続いていくようです。

三つめは、計画の紙を毎月見る場所に置くこと。朝礼の司会台や、経理の月次資料の一枚目。目に入る場所にあるだけで、進捗の話題が出やすくなります。

計画が続かないとき、私たちが朝の場に助けられていること

計画が続かない理由の多くは、意志の弱さではなく、考える時間が予定に入っていないことにあると感じています。時間を先に置いてしまう。それが、私たちが朝の場から学んだ工夫でした。

ここまで手順を書いてきましたが、いちばん難しいのは作ることそのものではなく、続けることです。私たち編集部も、書いては直しを繰り返している途中にいます。

策定していない理由の第1位が「時間的余裕がないため」37.5%だったことは、先に触れたとおりです。ただ、この数字を額面どおり受け取るより、少し違う角度から眺めてみたいと考えました。時間そのものではなく、時間の置き場の問題ではないか、という角度です。

最後の章では、私たちが湯島の朝の場から学んだ工夫を、ひとつの選択肢としてご紹介させていただきます。答えというより、同じ立場の者が試している方法として読んでいただけたら幸いです。

時間がないのではなく、考える時間が予定にないのではないでしょうか

策定しない理由の第1位は「時間的余裕がないため」で37.5%でした。この数字を見たとき、私たちは少し違う読み方をしてみました。

時間が絶対的に足りないというより、考える時間だけが予定表に存在していない。目の前の商談や現場対応には時刻が入っているのに、自社の3年後を考える1時間には、時刻がない。そういう状態ではないでしょうか。

社長にしかできない仕事の整理については、中小企業の社長にしかできない4つの役割でも触れています。考える時間の確保は、その4つのうちの一つに含まれるものです。

月曜日の朝、計画を人前で口に出してみるという方法

湯島倫理法人会では、毎週月曜日の朝にモーニングセミナーを開いています。6:30から開会前の朝礼があり、7:00に開会。7:10から会長挨拶、7:15から会員スピーチ、7:20から講話という流れで、8:00に終了します。

会場は東京都文京区湯島3-6-1の全国家電会館1階。東京メトロ千代田線の湯島駅から徒歩2分、JR御徒町駅からは徒歩8分の場所です。終了後は8:40まで朝食会があり、こちらは自由参加になっています。

この中の会員スピーチという時間が、計画の話とつながっています。自社で取り組んでいることを、短い言葉で話す機会。人前で口に出すと、自分の言葉に責任が生まれる。そうおっしゃる方が、本当に多いのです。

朝の1時間を先に予定へ置いてしまうと、その週の他の時間の使い方まで整ってくる。私たちも、そんな実感を持っています。

朝日が差し込む静かな会議室と経営計画 作り方を学ぶ整然と並ぶ椅子

答えを教わる場ではなく、試行錯誤を持ち寄る場です

念のため申し添えますと、朝の場に行けば経営計画が完成する、という話ではありません。私たちも、答えを持っている側ではないのです。

うまくいったことも、いかなかったことも、同じ立場の方が率直に話される。それを聞いて、自分の手元の紙を書き直す。そのくり返しの場だと捉えています。

初めての方は、ゲストとして無料でご参加いただけます。会員の月会費は1万円ほどですが、まずは一度ゲスト参加で朝の空気に触れていただけたら嬉しく思います。計画の話を、ご一緒にできる日を楽しみにしております。

まとめ|経営計画は、書いて終わりではなく見直して続くもの

経営計画の作り方は、5つの手順に分けられます。現在地の棚卸し、ありたい姿の言語化、数字への翻訳、月ごとの行動への分解、そして共有と見直しの約束。A4用紙1枚からでも始められる範囲です。

数字の面では、中小企業庁の「2025年版中小企業白書」で3つのことが示されていました。策定している事業者は51.1%。策定している事業者の売上高変化率(中央値)は7.7%で、していない事業者は5.7%。計画期間が5年超の事業者は13.2%と、1年以内の3.6%を大きく上回りました。

同じ調査で最も差が開いたのは、作ったあとの扱い方でした。3つの運用すべてに取り組んだ事業者で「想定した効果は得られなかった」が11.3%、いずれにも取り組まなかった事業者では48.5%。見直しを続けることのほうに、結果が宿っているようです。

今週やっていただけそうなことを一つだけ挙げるなら、直近3期分の数字を一枚の紙に書き出すこと。そこから先は、ご自身のペースで構いません。私たち編集部も、いまだ書いては直しの途中です。ご一緒に歩んでいけたら、心強く感じます。

よくあるご質問

経営計画は何年分を作ればよいのでしょうか。

中小企業庁の「2025年版中小企業白書」では、策定している事業者の計画期間は1年超〜3年以内が38.2%と最も多く、3年超〜5年以内が34.0%と続いています。同じ調査で計画期間別の売上高変化率(中央値)を見ると、5年超を見据えている事業者が13.2%、1年以内の事業者が3.6%でした。長く見るほど数字が伸びる傾向はあります。5年先が重いようでしたら、3年を目安に始め、あとから延ばす形でも十分です。

経営計画書は何ページくらい必要ですか。手書きでも構いませんか。

ページ数の決まりはありません。同じ調査で策定した事業者が実際に得たものは「経営状況の把握」56.5%、「自社の強みや弱みの理解」39.1%が上位で、分量そのものが成果に直結しているわけではないことがうかがえます。手書きのA4用紙1枚から始めて、翌年に足していく形でも構いません。私たちも、最初の年は一枚の紙でした。

作った経営計画は、社員にも公開したほうがよいのでしょうか。

数字をすべて開示するかどうかは会社の事情によりますが、行動の部分だけでも分かち合っていただくと、進捗管理がしやすくなります。同調査では、計画の達成に向けた行動・進捗管理・評価と見直しの3つすべてに取り組んだ事業者で「想定した効果は得られなかった」が11.3%だったのに対し、いずれにも取り組まなかった事業者では48.5%でした。社員の方と分担できる形にしておくのも一つの方法です。

計画どおりに進まないときは、どうすればよいでしょうか。

計画を守れなかったご自身を責めるより、計画のほうを直していただくのが現実的です。同調査でも「計画に対する実績の評価・計画の見直し」に取り組んでいる事業者は85.6%と、行動(95.8%)や進捗管理(89.9%)に比べてやや低く、ここが最もこぼれやすい工程のようです。四半期に一度など、見直す日をあらかじめ決めておくと続けやすくなります。

計画を立てる時間がどうしても取れません。何から始めればよいですか。

「時間的余裕がないため」は、経営計画を策定していない理由の第1位で37.5%でした。時間が足りないというより、考える時間が予定に入っていないだけ、ということも起こります。湯島倫理法人会では毎週月曜日の朝、6:30からの朝礼と7:00からのモーニングセミナーを開いています。会場は東京都文京区湯島3-6-1の全国家電会館1階。朝の1時間を先に予定へ置く方も多く、初めての方はゲストとして無料でご参加いただけます。

倫理経営を朝から学ぶ、湯島の経営者コミュニティへ

湯島倫理法人会は文京区湯島3-6-1 全国家電会館1階で、毎週月曜日 朝7:00からモーニングセミナーを開催しています。初めての方もゲスト参加(無料)でお越しいただけます。朝が難しい方は9:30から始まる「湯島つながりラボ」も別会場でお待ちしています。

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