父が愛情を注いで育てた事業に、思い切ってメスを入れる。その決断が会社を生まれ変わらせました。

第1123回モーニングセミナーに登壇された株式会社ユニティの代表取締役社長・石本研氏は、社長就任からわずか2年で業績急落という壁にぶつかりました。父の愛着ある事業を縮小するという苦渋の決断が、その後いくつもの恵みを会社にもたらします。捨我得全という教えを、皆さんも一緒に感じてみませんか。

湯島倫理法人会の会旗を背に語りかける石本研氏
湯島倫理法人会の会旗を背に、演台で語りかける石本研氏

就任2年目、なぜ業績は急落したのか

石本研氏が株式会社ユニティの代表取締役社長に就任したのは2015年、38歳のときでした。父が創業した会社を継ぎ、順調な滑り出しに見えた矢先、就任2年目に売上と利益が急落します。LED照明の普及が想定より早く進み、業界全体を巻き込む価格競争が起きていたのです。出荷量は伸びているのに、利益は目に見えて目減りしていきました。

焦った石本研氏は、成長を前提にしていた長期経営計画を一度白紙に戻し、立て直しの計画書を社内と銀行に示します。そして最大の決断となったのが、父が愛着を持って育ててきた自社商品事業の縮小でした。

急速なLED化を進めた影響で品質管理が追いつかず、不点灯や点滅の不具合が相次いでいました。深夜、社員が現場に入って器具を交換する対応が続き、クレームによる取引停止や、一年分の利益が吹き飛ぶほどの損失も出ていたといいます。当時4社だったグループ会社のうち、ユニティを除く3社がこの事業に関わっており、幹部会では反対の声が大きく上がりました。それでも石本研氏は「このままでは共倒れになる」と伝え、時間をかけて対話を重ね、商品点数を半分にする決断にこぎ着けます。もし自分がその立場にいたら、同じ覚悟を持てたでしょうか。

捨てたことで生まれた三つの恵み

三つの転換を語る石本研氏
指を立てて三つの転換を語る石本研氏

実はこの決断のとき、石本研氏はまだ倫理法人会に入会していません。捨我得全という言葉を知らないまま動いていたと、講話のなかで打ち明けています。それでも、商品を絞り込んだことで思わぬ三つの恵みが会社に舞い込みました。

ひとつは電気工事事業です。それまで下請けだった立場から元請けへと転換し、夜間工事という負担の大きい仕事を10年かけて社員に浸透させました。今では照明器具本体よりも利益率が高く、売上の22%を占める柱に育っています。

もうひとつは、自社の照明商品を前面に出すメーカー宣言でした。これによって、これまでライバルだったメーカーの営業担当者が、一転して味方になってくれたといいます。営業力が二倍になったような感覚だったと石本研氏は振り返ります。

三つ目は、山積みになった在庫から生まれたレンタル照明事業シェアライトです。修理から戻った器具も、売り控えられた新品も、そのままでは行き場がありません。もったいないと展示会に出したところ、大手企業の目に留まり、東京オリンピックの案件へとつながりました。コロナ禍で延期・中止という結果に終わりはしたものの、公共案件だったため損失は出ませんでした。この経験がきっかけとなり、今では大型イベントで声がかかる看板事業へと成長しています。当たり前だと思っていた捨てる判断が、実は一番の強みを引き寄せていたのかもしれません。

コロナ禍という苦難も、福の門だった

売上が3割ほど落ち込み、大赤字に見舞われた年がありました。それでも社内を見渡すと、ある営業会議から笑い声が漏れ聞こえてきたそうです。ボーナスが減ると分かっていながら明るく働く社員の姿に触れ、石本研氏は「この会社なら大丈夫だ」と確信したといいます。

その確信のもと、父が最も大切にしていた本社ビルの売却を決断します。同じ業界の中で世間体を気にする迷いもありましたが、社員の給与や賞与を守るためだと父に伝えると、父は言葉少なにうなずいて送り出してくれました。結果、予定より高値で売却がまとまり、大赤字は一転して過去最高益に変わります。さらに大阪の3拠点を1つに集約し、綺麗なオフィスへ移転したことで、若手社員同士の横のつながりが生まれ、離職者はゼロになりました。誰しも、変化を先延ばしにしたくなる瞬間があるはずです。

講話に聴き入る参加者
満席の会場で講話に聴き入る参加者のみなさん

まとめ──捌くに込められた学び

ホワイトボードに「捌」「裁」「卸」と書き、さばくの意味を解説する石本研氏
ホワイトボードに「捌」「裁」「卸」と書き、さばくの意味を解き明かす石本研氏

今回の講話テーマに登場する捌くという言葉には、将棋で盤上の駒を活かして形勢を逆転させるという意味もあると石本研氏は紹介しました。石本研氏が役員に就いた年に60億円だった売上は、直近の決算で125億円まで伸びています。数字だけでなく、社員の表情も明るく変わったこの歩みは、「得るは捨つるにあり」という一言に集約されるのではないでしょうか。

株式会社ユニティ代表取締役社長であり、東京都倫理法人会城南地区副地区長も務める石本研氏の体験は、決断を先延ばしにしがちな私たちの背中をそっと押してくれます。湯島倫理法人会の経営者モーニングセミナーは毎週月曜朝7時、全国家電会館で開催中です。ゲスト参加も歓迎しておりますので、ぜひ一度足をお運びください。得るは捨つるにあり。この言葉を胸に、共に学びを深めてまいりましょう。


講師プロフィール

石本研(いしもと けん)
株式会社ユニティ 代表取締役社長/東京都倫理法人会 城南地区 副地区長

1976年生まれ、東京都大田区蒲田育ちの一人っ子。父が創業した株式会社ユニティに入社後、九州・大阪での新規開拓営業、中国現地法人の代表を経て、2015年に38歳で代表取締役社長に就任した2代目経営者。就任2年目の業績急落を機に自社商品事業を縮小し、電気工事・メーカー戦略・レンタル照明事業シェアライトという新たな柱を育てた。2017年10月に大田区倫理法人会へ入会し、2021年から3年間会長を務め、2024年9月に東京都倫理法人会城南地区副地区長を拝命。家族は妻と娘二人、趣味は観葉植物の育成と御神輿。

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