会議が終わって席に戻ったとき、「結局、何が決まったのだろう」とふと立ち止まる。そんな朝を過ごされた経営者の方は、少なくないのではないでしょうか。

会議の進め方を整える鍵は、時間を短くすることではありません。「何を決める場なのか」を先に決めておくことです。共有と決定が混ざると、参加者はどちらの構えで座ればよいのか迷います。目的を分け、決める人をはっきりさせ、決まったことを残す。この三つで手応えは変わります。

本記事では、決まらない会議の三つのつまずきと、明日から試せる五つの見直しをご紹介します。

会議の進め方に悩む声は、決して少なくありません

会議の進め方に不満を感じている人は、働く人全体のおよそ7割にのぼります。悩みを抱えているのは、ご自身の会社だけではありません。

日本経済新聞社とJob総研が2025年7月14日に公表した調査データを見てみましょう。会議の進め方に「不満あり」と答えた方は68.7%。内訳は「とてもある」14.1%、「ある」18.3%、「どちらかといえばある」36.3%です。調査は2025年6月11日から16日に実施され、20代から50代の男女476人が回答しました。働き方の別では、出社が中心の方が73.7%と高い数字でした。

会議の実態を示す3つの調査データ
会議の進め方に不満あり 68.7% 働く人のおよそ7割 出典:日本経済新聞社×Job総研「2025年 職場会議の実態調査」2025年7月公表の調査データ
部長級が社内会議に使う年間時間 434.5 時間/年(役職別の平均) 出典:パーソル総合研究所・中原淳「長時間労働に関する実態調査」の統計
意思決定プロセスを明確化できていない中小企業 34.4% 売上高10億円未満の層 出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2-2-29図の統計データ
会議の悩みは、経営者ご自身の会社だけのものではありません。同じ調査データでは、出社が中心の方の73.7%が会議の進め方に不満を感じていました。

働く人の約7割が、会議の進め方に不満を感じています

不満の中身は「時間の長さ」よりも「中身の薄さ」に集まっています。同じ調査データで、対面会議への不満の1位は「議論ではなく共有で終わる」29.6%でした。

続く不満は「発言しづらい空気感」28.4%、「参加者がPC画面を見ている」23.5%です。集まったのに議論が起きない。その物足りなさが浮かび上がってきます。

オンライン会議では別の顔ぶれが並びました。同じ調査データの上位は「参加形態による温度差」34.5%。次いで「空気が読みにくく発言しづらい」31.7%、「無関係の内職をする人がいる」26.1%と続きました。対面でもオンラインでも、芯にあるのは「参加している実感の薄さ」でした。

主な調査データを一覧に整理しました。

会議に関する主な調査データ
項目 数値 出典
会議の進め方に不満あり 68.7% 日本経済新聞社×Job総研 2025年 職場会議の実態調査
対面会議の不満1位「議論ではなく共有で終わる」 29.6% 日本経済新聞社×Job総研 2025年 職場会議の実態調査
部長級の年間会議時間(従業員500人未満) 313.1時間 パーソル総合研究所・中原淳 長時間労働に関する実態調査
部長級の年間会議時間(従業員1万人以上) 630.0時間 パーソル総合研究所・中原淳 長時間労働に関する実態調査
意思決定プロセスを明確化できていない(売上高10億円未満) 34.4% 中小企業庁 2025年版中小企業白書 統計データ

中小企業の会議時間は、大企業のおよそ半分です

会社の規模が小さいほど、会議に費やす時間は短くなります。パーソル総合研究所の調査データによると、部長級が社内会議に使う年間時間は、従業員1万人以上で630.0時間。500人未満では313.1時間でした。

同じ統計を役職別に見てみます。一般社員層は年間154.1時間、係長級は301.2時間、部長級は434.5時間。役職が上がるほど会議に座る時間が増えていく構図です。

この調査はパーソル総合研究所と立教大学の中原淳氏による「長時間労働に関する実態調査」です。2017年9月に全国の正社員6,000人を対象に実施され、2018年9月6日に公表されました。調査年はやや前になります。それでも役職別・規模別に会議時間を切り分けた国内の調査は限られており、今なお参照される数字です。

年間の社内会議時間(役職別・企業規模別)
役職別に見た年間の社内会議時間
一般社員層 154.1時間
係長級 301.2時間
部長級 434.5時間
部長級を企業規模別に見た年間の社内会議時間
従業員500人未満(中小規模) 313.1時間
従業員1万人以上(大企業) 630.0時間
同じ統計で見ると、部長級の会議時間は従業員500人未満でおよそ半分にとどまります。規模が小さいほど、決める人と現場の距離が近いためだと考えられます。
出典:パーソル総合研究所・中原淳「長時間労働に関する実態調査」(2017年9月実施・正社員6,000人/2018年9月公表)の統計データ

規模が小さいことは、会議においてはむしろ強みです。決める人と現場の距離が近く、その場で判断まで届くためです。私たち編集部の周りでも、社員数十名の会社が大企業の数分の一の時間で方針を固めていく場面を何度も見てきました。

時間が短いのに「決まらない」と感じるのはなぜでしょうか

時間が短いこと自体は問題ではありません。短い時間に「共有」と「決定」の両方を詰め込むこと。これが決まらなさの正体です。

30分の会議で20分を報告に使えば、決めるための時間は10分しか残りません。そこに「せっかく全員いるから」と別の議題が持ち込まれます。どちらも中途半端なまま時間切れです。

会議時間を削る取り組みは各所で進みました。けれども削るだけでは「決まらない短い会議」が増えて終わります。大切なのは、その時間を何に使うと決めておくことなのだと感じています。

決まらない会議に共通する、3つのつまずき

決まらない会議には、目的の混在・決裁者の不在・記録の欠落という3つの共通点があります。いずれも個人の力量ではなく、場の設計の問題です。

私たち編集部も自社の会議を振り返ってみました。うまくいかなかった日には、この3つのどれかが決まって当てはまっています。裏を返せば、ここに手を打てば改善の余地は大きいということでもあります。

以下では順に見ていきます。誰かの努力不足を責めるのではなく、仕組みとして整えていく視点でお読みいただけたら嬉しく思います。

決まらない会議に共通する3つのつまずき
つまずき 1目的の混在 起きること 共有と決定が同じ時間に入っています。聞く姿勢で来た人と議論する姿勢で来た人が混ざり、参加者は座る構えを決められません。 打ち手の方向その会議で決めることを一行で書き、決めない回は「共有のみ」と明記します。
つまずき 2決裁者の不在 起きること その場で決められる人が座っていません。議論が深まっても持ち帰りで終わり、次の会議でまた同じ説明を繰り返すことになります。 打ち手の方向金額と影響範囲で「ここまでは誰が決めてよい」という線を先に引きます。
つまずき 3記録の欠落 起きること 決まったことが誰の手元にも残っていません。参加者それぞれの記憶に別々の結論が残り、翌週にずれが表面化します。 打ち手の方向「何が決まったか」「誰がやるか」「いつまでか」の3点だけを残します。

「共有する場」と「決める場」が混ざっています

一つの会議に共有と決定が同居すると、参加者は座る構えを決められません。聞く姿勢で来た人と、議論する姿勢で来た人が同じ部屋に混ざるためです。

この混在は、参加者側もはっきり感じ取っています。日本経済新聞社とJob総研の調査データを見ると、オンライン参加を選びたくなる条件の1位は「一方的な共有がメイン」44.1%。

一方、対面参加を選びたくなる条件はどうでしょうか。同じ調査データの1位は「アイデア出し・議論がある」42.2%、2位が「戦略決めなど重要度が高い」41.8%。働く人たちは、共有の会議と議論の会議をすでに別のものとして捉えています。会社側が両者を分けていないことのほうが、実態から遅れているとも言えます。

その場で決められる人が座っていないことがあります

決裁する権限のある人がいない会議は、どれだけ議論が深まっても「持ち帰り」で終わります。次の会議まで案件が止まり、そこでまた同じ説明を繰り返す羽目になるわけです。

かといって、社長がすべての会議に出席するのも現実的ではありません。ここで効いてくるのが、あらかじめ「この範囲までは誰が決めてよい」と線を引く考え方です。

金額なのか、影響が及ぶ範囲なのか。判断の基準を先に共有しておけば、社長が同席していない会議でも結論まで辿り着けます。役割の分け方については、中小企業の役割分担|社長が抱え込まず幹部が育つ組織のつくり方でも詳しくご紹介しています。

決まったことが、誰の手元にも残っていません

会議の終わりに決定事項が言語化されないと、参加者それぞれの記憶に別々の結論が残るのです。翌週には「そんな話だったかな」というずれが生まれ、また同じ議題が持ち上がってしまうわけです。

立派な議事録である必要はないと考えています。「何が決まったか」「誰がやるか」「いつまでか」の3点さえ残っていれば十分です。ホワイトボードを写真に撮って共有する形でも、次の会議の入り口としては役目を果たします。

私たちも最初は整った書式を作ろうとして続きませんでした。結局この3点だけを箇条書きで回す形に落ち着いた次第です。うまくいかなかった回り道も含めて、お伝えできたらと考えています。

会議の進め方を整える5つの見直し

会議の進め方は、目的の明文化・役割の分離・議題の問い化・終わりの確認・次回冒頭の振り返り。この5つの順で整えていけます。大がかりな改革は要りません。

ここでご紹介するのは、いずれも次の会議から試せるものばかりです。すべてを一度に始めなくても、一つ取り入れるだけで場の空気は変わります。私たちも順番に試しながら、自社に合う形を探している最中です。皆様の会社なりの工夫があれば、ぜひ教えていただけたら嬉しく思います。順番にも意味がございます。目的が定まらないうちに時間だけ短くしても、決まらなさは残るためです。

会議の進め方を整える5つの見直し
1 目的を一行で書く 会議の案内に「この会議で決めること」を一行だけ書き添えます。 所要 1分
2 決める人と出す人を分ける 出席者を決裁する人・意見を述べる人・共有を受ける人の3層に整理します。 所要 5分
3 議題を問いの形にする 「採用について」ではなく「何名で進めるか」と答えられる形にします。 所要 3分
4 終わりの5分で声に出す 決定・担当・期限の3点を読み上げ、その場でずれを表面化させます。 所要 5分
5 次回冒頭で前回を確認 最初の3分で決定が動いたかを確かめ、動かない理由を仕組みから探ります。 所要 3分
すべてを一度に始めなくても構いません。1つ取り入れるだけで場の空気は変わってきます。順番にも意味があり、目的が定まらないうちに時間だけ短くしても決まらなさは残ります。

見直し1 その会議は何のための時間かを一行で書きます

会議の案内に「この会議で決めること」を一行だけ書き添えます。たったこれだけで、参加者は準備の仕方を選べるのです。

「新商品の販売開始日を決める」と書いてあれば、参加者は候補日と制約条件を持って集まります。「新商品について」とだけ書かれていては、何を持っていけばよいのか分かりません。決めることがない回であれば、「共有のみ・決定事項なし」と正直に書くほうが親切でしょう。

書いてみて一行にまとまらない会議もあります。それは複数の会議が一つに束ねられている合図です。思い切って分けてしまうほうが、結果的に総時間は短くなります。

見直し2 参加者を「決める人」と「意見を出す人」に分けます

出席者名簿を、決裁する人・意見を述べる人・情報を受け取るだけの人の3層に分けてみます。3層目の方々は、会議に出ずに結果の共有を受けるだけで足りることが多いものです。

この整理は、参加者の時間を守ることにも直結します。前述の調査データでは、オンライン参加を選びたくなる条件の2位に「参加者が多く発言機会がない」が38.2%で挙がりました。発言の機会がないまま座っている時間は、その方にとっても会社にとっても惜しいものです。

人数を絞ることに遠慮を感じる方もいらっしゃいます。けれどもこれは誰かを外すことではなく、それぞれに合った関わり方を用意することだと捉えています。経営者ご自身の時間の置きどころは、経営者の時間管理|社長が考える時間を取り戻す5つの手順もあわせてご覧いただけたら幸いです。

見直し3 議題を「問い」の形に書き換えます

議題を名詞で並べるのをやめ、答えられる問いの形にします。「来期の採用について」ではなく「来期の新卒採用を何名で進めるか」と書くわけです。

問いの形になっていると、参加者は自分の答えを持って会議に入れます。さらに一歩進めて、選択肢を添えておく方法もあるでしょう。「AとBのどちらを選ぶか」という形なら、発言に慣れていない方でも意思表示ができます。

対面会議の不満として「発言しづらい空気感」が28.4%挙がっていた調査データを思い出してください。発言のハードルを下げる工夫は、場の設計側の仕事です。沈黙は参加者の意欲ではなく、問いの立て方に理由があることが少なくありません。

見直し4 終わりの5分で、決定・担当・期限を声に出します

会議の終了5分前になったら議論を止めます。決まったことを口に出して読み上げる時間です。「何を」「誰が」「いつまでに」の3点を、その場の全員で確かめます。

声に出すという点が要になります。書くだけでは各自が自分の解釈で読み取りますが、読み上げると認識のずれがその場で表面化するためです。「その期限は難しいです」という声が上がれば、その場で調整できます。

会議の後に発覚するずれは、次の会議まで持ち越されて時間を失います。この5分を確保するために、議論の時間を55分から50分に縮める。そのほうが全体としては前に進みます。

会議終了5分前に確かめる5項目
議論を止めて、この5つを声に出して読み上げます
書くだけでは各自が自分の解釈で読み取ります。読み上げると認識のずれがその場で表面化し、「その期限は難しいです」という声も上がりやすくなります。

見直し5 次の会議の冒頭で、前回の決定を確認します

次の会議の最初の3分を、前回決めたことの確認に充てます。決定が実際に動いたかどうかを、全員の前で確かめる時間です。

この3分があるだけで、決定の重みが変わります。「決めたけれど誰も動かなかった」という状態が可視化されるためです。責める場にしないことが大切でしょう。動かなかった理由を聞くと、たいてい仕組み側に原因が見つかります。

担当が兼務で手が回らなかった、判断材料が足りなかった。そうした具合です。そこを直せば次は動きます。会議を単発のイベントではなく、前回から次回へつながる一本の線として捉え直す。この視点の切り替えが、私たちにとっては大きな転換でした。

会議の形は、目的に合わせて選び分けます

対面とオンラインは優劣ではなく、目的による使い分けの問題です。議論と決定は対面、一方向の共有はオンライン。この選び分けに、働く人の実感が表れています。

コロナ禍を経て、会議の形は各社で揺れ動いてきました。全面的に対面へ戻す会社もあれば、オンラインを主軸に据えた会社もあります。どちらが正しいというより、会議の中身によって適した形が変わる。その捉え方が実感に近いように感じています。加えて、朝礼という三つ目の選択肢も持っておくと整理しやすいでしょう。判断の材料になる調査データをご紹介します。

対面会議・オンライン会議・朝礼の役割の違い
観点 対面会議 オンライン会議 朝礼
向いている目的 議論と決定。アイデア出しや戦略決めなど、その場のやり取りの密度が結果を左右する場面。 一方向の共有。報告や連絡が中心で、移動時間を省きたい場面。 一日の始まりを整える。気持ちを揃え、情報を全員に行き渡らせる場面。
参加者に求める構え 自分の答えを持って参加します。発言することが前提です。 必要な部分を受け取ります。全員の発言は前提としません。 聞いて受け取り、短く応じます。決めることは求めません。
向かない使い方 共有だけで終わらせる。不満の1位「議論ではなく共有で終わる」29.6%につながります。 重い決定を持ち込む。表情や間合いが伝わりにくく、判断がぶれます。 決めごとを持ち込む。朝礼が長くなり、一日の立ち上がりが重くなります。
働く人が選ぶ理由 同調査データで対面を選びたくなる条件は「アイデア出し・議論がある」42.2%が1位でした。 同じ調査データでオンラインを選びたくなる条件は「一方的な共有がメイン」44.1%が1位です。 毎日の短い習慣として、社員同士の様子を確かめ合う時間になります。
出典:日本経済新聞社×Job総研「2025年 職場会議の実態調査」(2025年7月公表・有効回答476人)の調査データ。朝礼の欄は湯島倫理法人会編集部の整理によるものです。

対面が選ばれるのは、議論と決定の場面です

対面で集まる価値が最も発揮されるのは、意見を戦わせて何かを決める場面です。この点について、働く人の回答ははっきり分かれました。

日本経済新聞社とJob総研の調査データでは、対面参加を選びたくなる条件の1位が「アイデア出し・議論がある」42.2%です。2位が「戦略決めなど重要度が高い」41.8%、3位が「誤解を避けたい場合」34.7%と続きます。

いずれも、その場のやり取りの密度が結果を左右する場面ばかりです。表情や間合いといった、画面越しでは伝わりにくい情報が判断に効いてくるためでしょう。同じ調査データで会議の実施形態の理想を尋ねたところ、対面派が62.8%を占めました。

オンラインが向いているのは、一方向の共有です

報告や連絡が中心の会議は、オンラインのほうが参加者の負担は軽くなります。移動時間が要らず、必要な部分だけ聞くという参加の仕方も取りやすいためです。

同じ調査データでは、オンライン参加を選びたくなる条件の1位が「一方的な共有がメイン」44.1%。2位が「参加者が多く発言機会がない」38.2%、3位が「会議時間30分以内」33.6%と並びました。

ここで注目したいのは、働く人が「共有だけの会議」の存在自体を否定していない点です。共有は共有として必要であり、それに見合った形で行ってほしいという願いが読み取れます。共有の会議を無理に対面で開くと、不満1位の「議論ではなく共有で終わる」29.6%という受け止めにつながっていくのです。

朝礼と会議は、そもそも役割が違います

朝礼は一日の始まりに気持ちを揃え、情報を行き渡らせる場です。会議は何かを決める場になります。この2つを分けておくと、どちらも本来の力を発揮します。

決めごとを朝礼に持ち込むと朝礼が長くなり、社員の一日の立ち上がりまで重くなるわけです。逆に共有事項を会議に持ち込めば、決めるための時間が削られてしまいます。朝礼という習慣そのものの整え方は、中小企業の朝礼の導入方法|形だけで終わらせない始め方でご紹介しています。

朝の挨拶ひとつ、声を揃えることひとつ。それが明朗(ほがらか)な職場づくりの実践になっていきます。私たちも会の朝を通して、そのことを日々教わっている次第です。

「決め方」を決めておくと、会議はおのずと短くなります

会議を短くする最も確実な道は、会議の外側にあります。何を誰がどこまで決めてよいのか。その道筋が引かれていれば、会議に持ち込む議題そのものが減っていくためです。

この「意思決定プロセスの明確化」について、国の統計にはっきりした傾向が表れています。中小企業庁の白書データを手がかりに、自社の現在地を確かめてみてはいかがでしょうか。決め方の整備は、会議の技術よりも先に効いてくる土台です。議題を減らす一手でもあり、後継者へ引き継ぐ際の備えにもなるでしょう。

売上高10億円未満では、3社に1社が明確にできていません

意思決定の道筋を明確にできていない事業者は、売上高10億円未満で34.4%にのぼります。規模が大きくなるほど、この割合は下がっていきます。

中小企業庁『2025年版中小企業白書』の第2-2-29図によると、売上高10億円未満(n=17,106)の内訳は次のとおりです。「十分取り組んでいる」15.4%、「ある程度取り組んでいる」50.2%、「あまり取り組んでいない」22.8%、「ほとんど取り組んでいない」11.6%。取り組めていない側の合計が34.4%になります。

同じ白書データで100億円以上(n=556)を見ると、取り組めていない側は13.3%にとどまりました。10億円未満との差は2倍以上です。この統計の資料は帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」でした。

意思決定プロセスの明確化への取り組み状況(売上高規模別)
十分取り組んでいる ある程度取り組んでいる あまり取り組んでいない ほとんど取り組んでいない
売上高10億円未満(n=17,106) 15.4 50.2 22.8 11.6 取り組めていない側の合計は 34.4%。およそ3社に1社にあたります。
売上高100億円以上(n=556) 29.0 57.7 11.7 1.6 取り組めていない側の合計は 13.3%。10億円未満との差は2倍以上に開きます。
同じ白書データによると、明確化に取り組む10億円未満の事業者はスケールアップ率7.6%、取り組んでいない事業者は4.0%でした。
出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2-2-29図・第2-2-30図の統計データ(資料:帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」)

決め方を整えている会社ほど、伸びている傾向がうかがえます

意思決定プロセスを明確にしている事業者は、5期前と比べて売上規模を上方に伸ばした割合が高くなりました。売上高10億円未満の層では、その差はおよそ1.9倍です。

同白書の第2-2-30図の統計を見てみます。売上高10億円未満(5期前)の事業者のうち、明確化に「取り組んでいる」企業(n=11,544)は7.6%がスケールアップを実現しました。「取り組んでいない」企業(n=5,817)では4.0%です。

同じ統計を他の規模でも確かめました。10億円以上50億円未満の層では26.8%と21.3%、50億円以上100億円未満の層では52.9%と47.2%。いずれの規模でも取り組んでいる側が上回っています。

ただし白書自身は「この調査結果から一概にはいえないが」と慎重に断ったうえで可能性を示唆しています。この点はあわせてお伝えしておきたいところです。決め方を整えたから伸びたのか、伸びる過程で整ったのか。この統計だけでは判別できません。それでも両者が同じ方向を向いているという事実は、日々の判断の後押しになります。

社長がすべてを決める会議から、少しずつ離れていくために

意思決定の道筋を引く作業は、権限を手放すことと同じではありません。決めてよい範囲を先に決めておくという、社長にしかできない仕事です。

具体的には、金額の上限、影響の及ぶ範囲、後戻りできるかどうか。こうした軸で線を引いていきます。「50万円まではその場の責任者が決める」「後で取り消せる判断は現場に任せる」といった形です。

線を引いた直後は、判断に迷う場面が増えて一時的に会議が増えることもあります。そこを越えると、社長が同席しない会議でも物事が前に進むようになるのです。社長でなければ担えない役割は、社長の仕事とは|中小企業の社長にしかできない4つの役割で整理していますので、ご参考になれば幸いです。

湯島の朝で教わった、終わる時間を守るということ

終わりの時刻が守られる場では、参加者が安心して発言できます。私たち湯島倫理法人会のモーニングセミナーは、毎週月曜日の7:00から8:00までの1時間。この時間が動くことはありません。

会議の話から少し離れるようですが、朝の1時間の設計には、会社の会議にも通じる要素が詰まっています。私たち自身、この朝の場に通う中で気づかされたことがいくつもありました。時間を守るという一点だけでも、持ち帰れるものがあるはずです。押しつけがましくならないよう気をつけながら、その一端をご紹介させてください。

湯島倫理法人会 モーニングセミナー 当日の流れ
6:30 開会前の朝礼 セミナーが始まる前の30分間です。
ここからの60分に5つのプログラムが収まります
7:00 開会・会歌斉唱 この時刻が動くことはありません。
7:10 会長挨拶 持ち時間はおよそ5分です。
7:15 会員スピーチ 会員が持ち回りで登壇します。
7:20 講話 各回の講話者による体験談など、学びの中心となる時間です。
8:00 セミナー終了 終わりの時刻が守られます。
〜8:40 朝食会(自由参加) ご都合に合わせてお帰りいただけます。
会議に置き換えると 「開会」「前回の確認」「本題」「決定の読み上げ」「閉会」という並びになります。それぞれに時間を割り当てておけば、本題だけが膨らんで終わりが押す事態を避けられます。会場は東京都文京区湯島3-6-1 全国家電会館1階、ゲスト参加は無料です。

60分の中に、5つのプログラムが収まっています

7:00の開会から8:00の終了までの60分に、5つのプログラムが並びます。それぞれの持ち時間が決まっているため、全体が伸びる心配は要らないわけです。

流れは次のとおりです。7:00に開会と会歌斉唱、7:10に会長挨拶、7:15に会員スピーチ。そして7:20から講話が始まり、8:00に終了します。開会前の6:30からは朝礼の時間があり、終了後は8:40まで朝食会が続きます。

朝食会は自由参加ですので、ご都合に合わせてお帰りいただけます。会場は東京都文京区湯島3-6-1の全国家電会館1階。東京メトロ千代田線「湯島駅」から徒歩2分の場所にございます。

この構成を会議に置き換えてみましょう。「開会」「前回の確認」「本題」「決定の読み上げ」「閉会」といった並びになります。それぞれに時間を割り当てておけば、本題だけが膨らんで終わりが押す事態を避けられます。

終わる時間が守られる場は、発言しやすくなります

終わりの時刻が読めると、参加者は安心して発言できます。「今ここで話すと会議が長引くのでは」という遠慮が消えるためです。

これは私たちにとって発見でした。発言が出ない会議に対して、以前は「もっと積極的に」と呼びかけていた時期があります。けれども変化は乏しいままでした。あるとき終了時刻を厳密に守るようにしたところ、少しずつ声が出るようになったのです。

時間が読めない場では、発言することが誰かの負担になるという気遣いが働きます。その気遣いを取り除くのは、参加者の心構えではなく場の側の仕事でした。後からそう気づかされた次第です。朝の時間の活かし方については、経営者の時間管理|社長が考える時間を取り戻す5つの手順でも触れています。

朝の1時間を、ゲスト参加で体感していただけます

モーニングセミナーには、会員でない方もゲストとしてご参加いただけます。参加費は無料で、事前のお申し込みも要りません。

実際に朝の場に身を置いてみると、時間の設計というものが文章で読む以上に伝わってきます。異業種の経営者の方々と朝食会でお話しする中で、会議の工夫を教えていただくこともございます。

朝7:00は早いと感じられる方には、モーニングセミナーの後に開いている湯島つながりラボという場もございます。毎週月曜日の9:30から11:00まで、U-cafe 上野御徒町で開くカジュアルな交流の時間です。参加費はドリンク代のみとなっております。

私たち編集部も、会議の進め方については今なお試行錯誤の途中にあります。皆様の会社で工夫されていることを教えていただける機会があれば、こんなに嬉しいことはありません。ご一緒に学んでいけたらと願っています。

まとめ|会議は「決まる場」に戻していけます

会議の進め方を整える鍵は、時間を削ることではなく目的をはっきりさせることにあります。共有と決定を分け、決める人を決め、決まったことを残す。この3点が揃えば、同じ時間でも手応えは変わってきます。

ここまでご一緒に見てきた5つの見直しを、あらためて振り返ります。第一に、決めることを一行で書くこと。第二に、参加者を決める人と意見を出す人に分けること。第三に、議題を問いの形にすること。第四に、終わりの5分で決定・担当・期限を声に出すこと。第五に、次の会議の冒頭で前回の決定を確認することです。

あわせて、会議の外側にある「決め方の道筋」にも目を向けていただけたら嬉しく思います。中小企業庁の白書データでは、明確化に取り組む売上高10億円未満の事業者のスケールアップ率は7.6%。取り組んでいない事業者の4.0%を上回りました。

明日から試せる会議の見直し 3段階
1 今週 次の会議の案内に、決めることを一行書く 「新商品の販売開始日を決める」のように、答えの出る形で書きます。決めない回は「共有のみ」と正直に書き添えます。 所要 1分 参加者が準備を選べるようになります
2 今月 終わりの5分で、決定・担当・期限を読み上げる 議論を止めて全員で確かめる時間を作ります。次の会議の冒頭3分で、前回の決定が動いたかを振り返る習慣もあわせて始めます。 所要 会議あたり8分 認識のずれがその場で表面化します
3 今期 金額と影響範囲で、決裁の線を引く 「50万円まではその場の責任者が決める」「後で取り消せる判断は現場に任せる」といった基準を先に共有します。社長にしかできない仕事です。 検討 数か月 会議に持ち込む議題そのものが減ります
すべてを一度に始める必要はありません。一行書いてみて、まとまらない会議があれば、それは分けるべき会議が束ねられている合図です。小さく試して、合う形を探していきましょう。

明日から試せる、いちばん小さな一歩

すべてを一度に始める必要はありません。次の会議の案内に「この会議で決めること」を一行書き添える。まずはそこからで十分です。

一行書いてみると、その会議が何のための時間なのかがご自身にも見えてきます。書けない会議があれば、それは分けるべき会議が束ねられている合図です。

小さく試して、合う形を探していく。私たちもそのようにして、少しずつ会社の朝を整えてきました。皆様の会社の会議が、決まる場へと戻っていきますように。

よくあるご質問

会議は何分くらいが適切でしょうか

一律の正解はありませんが、終わりの時刻を先に決めておくことが何より大切だと感じています。日本経済新聞社とJob総研の調査データでは、オンライン参加を選びたくなる条件として「会議時間30分以内」を挙げた方が33.6%いらっしゃいました。まずは60分の会議を45分に区切ってみる。そうした小さな調整から試してみてはいかがでしょうか。

参加人数は何人までがよいのでしょうか

人数そのものより、「決められる人がその場にいるか」のほうが影響は大きいと捉えています。同じ調査データでは、オンライン参加を選びたくなる条件の2位に「参加者が多く発言機会がない」が38.2%で挙がりました。発言の機会がないまま座っている方が多い会議であれば、人数を絞る方法もございます。あるいは、その方々には結果の共有だけをお届けするという分け方も考えられます。

議事録は毎回作らないといけないでしょうか

整った議事録でなくても構わないのではないでしょうか。大切なのは「何が決まり、誰が、いつまでに動くのか」の3点が残っていることです。ホワイトボードを写真に撮って共有するだけでも、次の会議の冒頭で前回の決定を確かめられます。書式を整えることに労力を使いすぎて続かなくなるより、続く形を選ぶほうが実りは大きいものです。

社員から意見が出ない会議は、どうすればよいでしょうか

発言しにくい空気には理由があることが多いようです。前述の調査データでは、対面会議の不満として「発言しづらい空気感」が28.4%挙がりました。議題を「どう思いますか」ではなく「AとBのどちらを選びますか」という問いの形にしておくと、答えやすくなります。終わりの時刻を守ることも、遠慮を減らす助けになるでしょう。私たちも試行錯誤を重ねている最中です。

朝礼と会議は分けたほうがよいのでしょうか

役割が違うものとして分けておくと、どちらも動きやすくなるように感じています。朝礼は一日の始まりに気持ちを揃え、情報を共有する場です。一方で会議は、何かを決めるための場になります。決めごとを朝礼に持ち込むと朝礼が長くなり、共有事項を会議に持ち込むと会議が決まらなくなる。そうした状態が起こりやすくなるためです。

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