「お役は絶対に1年だけ」。そう決めていた人が、一年後、自分の意思で二期目を選びました──

2026年9月28日、第1130回のモーニングセミナーは、三役による所信表明講話リレーの最終回でした。アンカーを務めたのは、湯島倫理法人会 事務長の野田久美子氏です。「絶対に無理」と思って引き受けたお役が、いつの間にか自分を育ててくれていた。その一年を、率直な言葉で語りました。あなたにも、引き受けるのをためらったお役はないでしょうか。

笑顔で語りかける野田久美子氏
笑顔で語りかける野田久美子氏

「絶対に無理」と思ったお役を、なぜ引き受けたのか

米国公認会計士として監査法人や外資系企業で財務経理を担ってきた野田氏は、3年前に独立しました。会社を辞めてすぐ、現実に直面します。

「会社員時代は、息をするだけでお金をもらっていた。独立したら、自分が何かしなければ何も生まれない」

どうしたらいいか分からなかった時期に出会ったのが、倫理法人会でした。受付、副事務長を経て、昨年9月に事務長を拝命します。一期目は、松本相談役に「やってみたら」、藤井会長に「一緒にやりましょう」と声をかけられ、倫理で学ぶ「はい」の実践として受けました。ただ、心の中では「絶対に1年だけ」と決めていたのです。

事務長の仕事は、会計に会場の確保、毎月の会費の回収と、とにかく地味で数が多い。一方、独立後の1人経営では、契約不履行や入金遅延など、金銭的にも体力的にも精神的にも追い込まれることがありました。締め切りが毎月やってくるお役を前に、自分の事業が後回しになる。「本当に無理」と思ったこともあったといいます。

誰しも、目の前の役目が重くて、逃げ出したくなる朝があるはずです。

月曜の朝5時が、私を立て直してくれた

もともと夜型で、会社員時代は在宅勤務の日なら8時45分に起きて9時の始業に間に合わせていました。それが今は、毎週月曜だけは5時前に起きています。「自分にとってはかなり奇跡」と野田氏は笑います。

ほとんど寝ているような状態で家電会館に着いても、玄関では相談役がハイタッチで迎え、皆が「おはよう」と声をかけてくれる。無理やりでも笑顔になると、まず自分が元気になりました。月曜日以外でも、三役ミーティングが毎週あり、朝6時のMTGを53週続けてきたそうです。

「役を担う時間が、自分を立て直す時間になっている」

倫理で学ぶ「朝起き」を、お役のおかげで実践できた一年でした。

「8:45→5:00」のスライドとともに、朝起きの一年を語る
「8:45→5:00」のスライドとともに、朝起きの一年を語る

「人は鏡」──頼み方を見直したら、事務が回り始めた

会社員時代の野田氏は、縦割りの経理の仕事を一人で抱え込み、見えないところで深夜まで片づけるタイプでした。人に頼る経験が、あまりなかったのです。ところが、事務長として仕事を誰かにお願いしても、人が動かないことがありました。

「説明をしたつもりだったけれども、分かっているのは自分だけだった」

倫理の「人は鏡」に照らして、まず自分の頼み方を見直す。何をしてほしいのか、気持ちを込めて伝える。やってもらったことには、必ず「ありがとう」を言う。そう変えてから、副事務長の中島彰文さんとの分担も回り始めます。会計データの入力、アプリの出欠データを集計するツールの開発、名札の印刷などPC関連は中島さん。必要ならセミナーの最中にコンビニへ駆け込んで印刷してくれることもあるそうです。野田氏は会計全体の確認や証憑類の提出、そして毎週の会場確保やお弁当選びなどの手配業務を担います。食を重んじる築地の女神として恥ずかしくないよう、添加物の少ないものを講話者に合わせて選んでいるのだとか。

一年でこなしたタスクは259個。会費の滞納ゼロも続けてきました。野田氏はこう語ります。

「お役は、できる人が受けるものではなくて、受けた人を育ててくれるもの」

「もともとできるのではなくて、できるようになった」という言葉に、この一年の手ごたえがにじんでいました。

「一人では、何もできない」から始まるチーム

一年を振り返って野田氏が行き着いたのは、「一人では何もできない」という気づきでした。事業を広げるにもチームと仲間が要る。それは自分の仕事にもそのまま当てはまったといいます。

講話の冒頭では、三役と事務長グループを動物占いで紹介しました。藤井会長は「傷つきやすいライオン」、飯塚専任幹事は「順応性のある狼」、野田氏は「人気者のゾウ」。副事務長の中島さんと監査の岡田俊介さんは、そろって「粘り強いひつじ」です。野田氏は「個性が違う人が集まるから、一人一役のチームになる」と語りました。

お役を受けるにあたり、支えになったのは、日本文化の恩師たちの言葉です。能楽師の大倉正之助さんからは「一人一役」。能の舞台は、舞台に立つ人だけでなく、鼓をつくる職人、その素材を用意する人、場を整える人がいて成り立つ。今年4月、自身が舞台に立ったときにも同じことを実感しました。羽黒山の山伏・星野先達からは、どんな天気の山道もまず受け入れる「うけたもう」を教わりました。

「完璧でなかったとしても、自分にできるお役がある」

これは、日本の神話~古事記の神様の存在にも通じることです。

「一人一役」「うけたもう」。お役について心に残る二つの言葉を紹介する
「一人一役」「うけたもう」。お役について心に残る二つの言葉を紹介する

築地で「まず自分が幸せになれよ」と言われた話も、この日の大切な場面でした。つらい時期に築地の街と人に助けられた野田氏が、恩返しがしたいと涙ながらに話したとき、築地のドンと言われる、大将がかけてくれた言葉です。まず自分、そして家庭、社会へ。倫理の学びと重なる一言でした。

もし自分が同じ言葉をかけられたら、素直に受け取れたでしょうか。

まとめ──共に学び、実践する一歩を

頼まれて「はい」と引き受けた一期目。二期目は「まだまだやりたいことがある」と自分で選びました。事務長グループは毎月の監査報告やアプリのデータ活用に取り組み、野田氏は湯島の地域メディアの編集長にも自ら手を挙げています。

講話の終盤には、「1か月に1回会えるとしても、10年で120回」と、両親と過ごせる時間を考えた時に、いのちの使い方についても触れました。

事務長としても、経営者としても、日々苦難を乗り越え進んでいます。好きな花は、泥の中に根を張り、凛として咲く「蓮の花」。水面下でもがいていても、表では笑顔の花を咲かせたい、と語ります。

合同会社遊花楽の代表であり、湯島倫理法人会の事務長でもある野田久美子氏の講話から、私たちも「朝起き」「チームづくり」「ありがとう」という小さな実践を学ばせていただきました。

湯島倫理法人会のモーニングセミナーは、毎週月曜朝7時から全国家電会館で開いています。どなたでもゲスト参加できますので、ぜひ一度お越しください。

「お役のおかげで、今の自分がある」

この日のモーニングセミナー

講師プロフィール

野田 久美子(のだ くみこ)
湯島倫理法人会 事務長/合同会社遊花楽(ゆうから) 代表

普通のOLから一念発起し、米国公認会計士(USCPA)試験に合格。会計事務所(EY・新日本監査法人)での修行を経て、外資系企業の財務経理部門で10年以上経験を積み、2023年に独立。経営者支援の傍ら、地元・築地をこよなく愛し、著書『築地スタイル』を出版した。地域に根ざしたまち歩きや文化体験など、和のこころを伝えるインバウンド事業に取り組む。人と人、人と地域、日本の歴史文化を未来へ届けることを使命として活動している。2023年9月に湯島倫理法人会へ入会し、副事務長を経て事務長二期目を務める。

次回の湯島モーニングセミナーへ、ゲスト参加してみませんか

湯島倫理法人会は文京区湯島3-6-1 全国家電会館1階で、毎週月曜日 朝7:00からモーニングセミナーを開催しています。初めての方もゲスト参加(無料)でお越しいただけます。朝が難しい方は9:30から始まる「湯島つながりラボ」、平日の夜は Zoom で開く「ゆしラボオンライン」もあります。

関連記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP