「もし明日、会社が止まったら」と考えかけて、そのまま目の前の仕事に戻ってしまう。そんな朝を過ごされた経営者の方は、少なくないのではないでしょうか。

中小企業のBCPとは、事業が止まったときに、何を、誰が、どの順番で戻すのかを、止まる前に決めておく取り決めのことです。分厚い計画書を作ることではありません。A4で1枚に収まる範囲でも、止まった翌日の動きは変わってきます。

この記事でお伝えするのは5つ。中小企業の現在地がどこにあるのか。東京で止まったとき何日続くのか。1枚に絞るための5つの問い。国の認定制度という入口。そして作ったあとの訓練です。私たち編集部も学んでいる途中ですので、ご一緒に整理させてください。

中小企業のBCPとは|止まった翌日に何から戻すかを先に決めておくこと

BCPは事業継続計画の略で、事業が止まった翌日に何から戻すかを決めておく取り決めを指します。

避難経路や備蓄の話とは別物です。人と建物を守るのが防災の取り組みで、仕事の流れを守るのがBCPという分け方です。私たち編集部も、最初はこの二つを混ぜて考えておりました。

実際に混同されている方は多いようです。災害対策と聞くと、まず備蓄品の点検から手をつけてしまう。そんな声も伺います。ここでお伝えするのは3点。BCPという言葉が指している範囲と、防災との境目、そして想定すべきリスクの広がりです。

まず結論|BCPは「戻す順番」を先に決めておく取り決めのことです

押さえておきたい点は3つ。BCPは書類の名前ではなく順番の取り決めであること。対象は建物ではなく仕事であること。そして完成度より、決まっていること自体に意味があることです。

BCPは Business Continuity Plan の頭文字で、日本語では事業継続計画と訳されます。ただ、名前から想像されるほど大げさなものではありません。取引先への納品、給与の支払い、問い合わせへの対応。会社が止まったときに、どれを先に戻すのかを決めておく。それだけでも、当日の判断はずいぶん軽くなるはずです。

なぜ順番なのでしょうか。止まった直後は、人も情報も資金も、平時の何割かしか使えないためです。全部を同時には戻せません。だとすれば、限られた手を何に先に使うかを、落ち着いているうちに決めておくほうが理にかなっています。

慌てている最中に優先順位を決めるのは、経営者にとってもかなりの負荷になりましょう。決めておくというのは、未来の自分の判断を軽くしておく作業でもあります。

防災対策との違いは、守る対象が「人と建物」か「仕事の流れ」か

防災とBCPは、目的が重なりながらも守る対象が違います。この違いが分かると、どちらから手をつけるかも見えてきます。

防災対策が守るのは、人の命と建物です。避難経路の確認、消火器の設置、水や食料の備蓄、家具の固定。どれも発災の瞬間から数時間を支えるための備えです。

一方、BCPが扱うのはそのあとです。全員の無事が確認できた翌日から、どの仕事を、どのくらいの水準で、いつまでに戻すのか。取引先に「いつ再開できますか」と聞かれたときに答えられる状態を作っておくのがBCPの役割だと、私たちは受け取っています。

どちらか一方が他方の代わりになることはありません。備蓄があっても、納品先への連絡手段が決まっていなければ仕事は戻りません。逆に計画があっても、社員が危険な場所にいては始まらないわけです。順序としては防災が先で、BCPがその続きという並びです。

防災対策とBCPは何が違うのか ▶ 守る対象と時間軸で分かれます
防災対策
守る対象 人の命と建物 時間軸 発災の瞬間から数時間 主な中身 避難経路の確認 消火器の設置 水や食料の備蓄 家具の固定 安否確認の手段 問い ▶ どうすれば全員が無事でいられるか
BCP(事業継続計画)
守る対象 仕事の流れ 時間軸 翌日から数週間 主な中身 戻す順番 判断する人 目標復旧時間 代替手段 資金の手当て 問い ▶ いつ、どの仕事から戻すか
順序としては防災が先、BCPはその続き。どちらか一方では足りません。

想定しているリスクは自然災害だけではなくなっています

BCPというと地震を思い浮かべますが、企業が想定しているリスクの内訳はここ数年で動いています。

帝国データバンクの同じ調査データで、想定しているリスクを尋ねた設問に注目してみます。1位は地震や風水害などの「自然災害」で67.8%。ここは変わりません。ただ2位に「情報セキュリティ上のリスク」が50.2%で入り、前年から4.1ポイント伸びました。

同じ統計でもう一つ目を引くのが「物流の混乱」です。36.5%で、前年の27.5%から9.0ポイントの上昇。調査全項目の中で最も大きな伸び幅でした。設備の故障37.9%、感染症37.3%、インフラの寸断36.8%と、上位は横並びに近い状態です。

つまり、止まる原因は一つではありません。地震だけを想定した計画は、サイバー攻撃や仕入先の途絶には効きにくいわけです。とはいえ、原因ごとに何本も計画を作る必要はないはずです。原因が違っても「止まった状態から戻す」という手順は共通するためで、そこを1本決めておけば応用が利きます。

同調査では「経営者の不測の事態」を挙げた企業も17.6%ありました。社長ご自身が動けなくなる場合も、事業が止まる立派な原因のひとつという整理です。

策定率18.3%という現在地|大企業との差は意識ではなく資源から生まれています

中小企業のBCP策定率は18.3%で、大企業の39.9%とは20ポイント以上の差が続いています。

この差は、危機感の違いとして語られることが多いように感じます。ただ、帝国データバンクの調査データで未策定の理由を見ると、少し違う姿が浮かんできます。上位に並んだのは、どれも日々の経営で真っ先に足りなくなるものでした。

数字を眺めるのは、自分を責めるためではありません。同じ位置にいる会社がどれだけあるのかを知ると、次の一手を落ち着いて選べるようになるものです。ここでは策定率の推移、未策定の理由、そして東京の温度感という3つの角度から現在地を確かめてまいります。

BCP策定率21.4%・中小企業18.3%|11回目の調査で見えた規模間格差

帝国データバンクが2026年6月25日に公表した調査は、2016年から毎年続いて11回目にあたります。調査期間は2026年5月18日から31日、全国2万2,749社を対象に、有効回答は1万521社。回答率46.2%という規模の統計です。

その調査データで、BCPを「策定している」と答えた企業は21.4%。前年から1.0ポイント増え、過去最高となりました。一方で「策定していない」は40.7%と、依然として4割を超えています。

規模別に見ると景色が変わります。同じ統計で大企業は39.9%、中小企業は18.3%。どちらも前年から1.2ポイントずつ伸びていますが、差は縮んでいません。2020年の調査では大企業30.8%・中小企業13.6%でした。7年かけて両方が上がり、開きはほぼそのまま残った形です。

ただ、悲観する数字ばかりでもありません。同じ調査データでは「現在、策定中」7.2%と「策定を検討している」21.9%を合わせた『策定意向あり』が50.5%。半数の企業が、何らかの形で前を向いているという結果でした。

BCP策定率の推移 ▶ 7年たっても開きは縮んでいません
大企業 中小企業
30.8 13.6 2020
32.0 14.7 2021
33.7 14.7 2022
35.5 15.3 2023
37.1 16.5 2024
38.7 17.1 2025
39.9 18.3 2026
2020年の差 17.2ポイント
2026年の差 21.6ポイント
両者そろって上昇しているものの、開きはむしろ広がっています。中小企業側の18.3%は「まだ8割が手つかず」という位置です。 出典:帝国データバンク 調査「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」2026年6月25日公表/各年5月調査

未策定の理由トップ3は、ノウハウ・人材・時間の不足でした

BCPを策定していない4,280社に理由を尋ねた設問が、この調査で最も示唆に富む部分だと感じました。

同じ調査データによると、1位は「策定に必要なスキル・ノウハウがない」で42.2%。2位が「策定する人材を確保できない」33.5%、3位が「策定する時間を確保できない」28.1%と続きます。上位3つは、いずれも経営資源の話でした。

一方で「策定する必要性を感じない」は18.6%にとどまります。同統計で「策定しなくてもその場で対処できる」も10.2%でした。必要性を否定している企業は、実は少数派という構図です。

さらに、4番目に挙がったのが「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」で25.4%。同じ調査で「自社のみ策定しても効果が期待できない」も25.0%ありました。着手した方ほど、この壁に当たっておられるのでしょう。

中小企業だけを取り出しても順番は変わりません。同統計ではスキル・ノウハウ42.2%、人材33.3%、時間27.7%。規模を問わず共通する課題という位置づけです。だとすれば、必要なのは意識を高めることよりも、手数を減らす工夫のほうだと捉えております。

BCPを策定していない理由 ▶ 上位は意識ではなく経営資源
上位3つはいずれも「経営資源の不足」でした
策定に必要なスキル・ノウハウがない 42.2%
策定する人材を確保できない 33.5%
策定する時間を確保できない 28.1%
書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい 25.4%
自社のみ策定しても効果が期待できない 25.0%
策定する必要性を感じない 18.6% 必要性の否定は少数派
策定する費用を確保できない 14.6%
リスクの具体的な想定が難しい 13.2%
出典:帝国データバンク 調査「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」/母数4,280社・複数回答。バーの長さは最大値42.2%を100とした相対表示です。

東京都は「策定意向あり」52.8%|関心はあるけれど進んでいない

都道府県別のデータを見ると、地域ごとの温度差が見えてきます。ここは文京区で仕事をする私たちにとっても、気になるところでした。

同じ調査データで『策定意向あり』の割合が最も高かったのは富山の62.5%。次いで高知61.7%、香川59.5%、静岡58.3%と続きます。南海トラフ地震の想定地域や、能登半島地震のあった北陸で高く出る傾向がありました。

東京は52.8%。同統計の全国平均50.5%を2.3ポイント上回っていますので、関心が低いわけではありません。ただ、半数をわずかに超える水準にとどまっているのも事実です。

被害の記憶が新しい地域ほど、数字が高く出ているという読み方ができましょう。裏を返せば、まだ大きな被害を受けていない地域ほど、備えは後回しになりやすいのでしょう。東京はまさにその位置にいます。

東京で事業が止まると何日続くのか|復旧の見通しを数字で見ておく

停電は最大で約1,600万軒、供給側設備の復旧には1か月程度を要すると想定されています。

BCPの中身を決めるには、どのくらいの期間、どんな状態が続くのかという前提が必要です。ここを想像で埋めると、計画も想像のままで終わってしまいます。首都直下地震については、国の想定が2025年12月に更新されました。

数字を並べる目的は、不安を煽ることではありません。備えの目盛りを合わせることです。何日で戻すという目標を置くとき、その日数が現実と噛み合っているかどうかを確かめる物差しです。ライフラインの復旧見通しと、発災時刻による違いを順に見てまいります。

電気・水道・通信が戻るまでの目安|1週間と1か月という二つの節目

中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループが、令和7年12月19日に内閣府 中央防災会議 資料「都心南部直下地震の被害想定」を公表しました。ライフラインの復旧見通しが、時系列で整理されています。

同じ被害想定のデータによると、電力は最大約1,600万軒が停電し、供給力がピーク需要の94%まで戻るのは被災1か月後。上水道は被災直後に約1,381万人が断水し、1週間後16%、2週間後9%、1か月後2%という推移です。固定電話とインターネットは直後に約757万回線が不通となる一方、1週間後には2%まで回復すると見込まれています。

つまり、通信と水は1週間、電気は1か月という二つの節目が見えてきます。同じ統計によると、携帯電話は被災直後の輻輳で大部分の通話が困難になります。輻輳とは、回線が処理できる量を超えて通信が集中し、つながりにくくなる状態のことです。年明けの午前0時に電話がつながりにくくなる、あの現象と同じ仕組みだとお考えください。基地局の停電による広域的な不通は、数日から1週間で解消される見込みです。

項目 被災直後 1週間後 1か月後 出典
電力(供給力のピーク需要比) 48% 48% 94% 中央防災会議 被害想定データ
上水道(断水率) 29% 16% 2% 中央防災会議 被害想定データ
固定電話・インターネット(不通率) 51% 2% 2% 中央防災会議 被害想定データ

この表を眺めると、目標をどこに置けばよいかが少し具体的になってまいります。通信が戻る1週間までを、通信なしで回す期間として設計しておく。そういう組み立て方ができるためです。

平日の昼に起きたら、東京都で約480万人が当日は帰れません

もう一つ、社員の身の上に直結する数字があります。発災の時刻によって、会社に残る人の数がまるで変わるという想定です。

同じ被害想定のデータを見ます。平日12時に発災し、公共交通機関が全域的に停止した場合の想定です。当日中の帰宅が困難となる人は東京都市圏で約840万人、うち東京都で約480万人と見込まれています。このうち行き場のない方が約160万人。外国や圏外からの観光・出張客も最大約88万人と推計されていました。

これは「社員を帰す」という選択肢が、その日は取れないことを意味します。会社に一晩とどまる前提で、水と食料と毛布を数えておく必要があるということです。防災の備蓄がBCPと地続きになるのは、この一点においてでしょう。

同じ統計では、南関東の直下でマグニチュード7程度の地震が起きる確率は今後30年間で70%程度と評価されています。中央防災会議の資料は、この想定が次に必ず起きるものではないと断っています。そのうえで、被害を「自分ごと」と捉える端緒にしてほしいと記していました。

この数字をBCPのどこに使うのか|目標復旧時間の物差しにする

ここまでの数字は、眺めるだけでは計画になりません。使いどころは一つで、目標復旧時間を決めるための目安として使えます。

たとえば主力業務を戻す目標を3日後に置いたとしましょう。同じ被害想定のデータでは3日後の断水率は24%、固定回線の不通率は51%のままです。水道も通信も戻っていない前提です。その3日間は紙と携帯とご自身の足で回すという設計が欠かせないところです。

目標を2週間後に置くなら、通信と水はほぼ戻っている一方、電力の供給力はまだピーク需要の半分程度という想定です。取引先の側も同じ状況にありますので、こちらが動けても相手が受け取れない場面が生じます。

目標復旧時間は、短ければ良いというものではありません。実現できない目標を置くと、当日は結局その場の判断で動くことになるためです。同じ統計が示す復旧の推移と照らして、無理のない線を引いておくほうが実務では役に立ちます。

都心南部直下地震の復旧見通し ▶ 1週間と1か月という二つの節目
被災直後
電力 供給力 48% 断水率 29% 固定回線 不通率 51% 停電 最大約1,600万軒。携帯は輻輳で通話困難
3日後
電力 供給力 48% 断水率 24% 固定回線 不通率 51% 水も通信も細いまま。紙と足で回す前提に
1週間後
電力 供給力 48% 断水率 16% 固定回線 不通率 2% 通信はほぼ回復。携帯の広域不通も解消
2週間後
電力 供給力 48% 断水率 9% 固定回線 不通率 2% 電力はまだピーク需要の半分ほど
1か月後
電力 供給力 94% 断水率 2% 固定回線 不通率 2% 断水はほとんど解消。電力もほぼ戻る見込み
通信なしで回す期間 ▶ おおむね1週間 電力が細い期間 ▶ おおむね1か月 出典:内閣府 中央防災会議 防災対策実行会議 首都直下地震対策検討ワーキンググループ 被害想定データ「都心南部直下地震の被害想定」令和7年12月19日/電力の供給力は夏季ピーク電力需要に対する割合

まず1枚に絞る|BCPで先に決めておきたい5つのこと

先に決めておきたいのは、安否確認の手段、判断する人、最初に戻す仕事、目標の日数、そして現金の5つです。

調査では「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」という声が4社に1社から挙がっていました。だとすれば、最初から分厚くしないほうが続きます。ここではA4で1枚に収まる範囲だけを挙げます。

順番にも意味があります。人の安全が確かめられないと判断ができず、判断者が決まっていないと戻す順番も決められないためです。書く順に並べていますので、上から埋めていただければ形になります。全部が埋まらなくても構いません。

1つ目|誰の安否を、どの手段で確認するか

最初に決めるのは、誰の無事をどうやって確かめるかです。ここが動かないと、その後のすべてが止まります。

帝国データバンクの調査データを見ます。事業中断に備えて実施・検討している内容の1位は「従業員の安否確認手段の整備」で65.3%でした。多くの企業が、ここから手をつけている実態がうかがえます。

決めておきたいのは3点だけです。連絡する相手の範囲。使う手段と、それが使えないときの次の手段。そして返事が来ないときに誰が動くか。中央防災会議の被害想定データでは、被災直後は輻輳により携帯電話の大部分の通話が困難になるとされています。電話1本に頼る設計は、その時点で崩れることになりましょう。

現実的なのは三段構えです。電話がだめならメッセージアプリ、それもだめなら決めた時刻に決めた場所へ。この形が機能しやすいと伺っております。手段を複数持つことより、順番を決めておくことのほうが効きます

家族の安否が確認できるまで、社員は仕事に集中できません。従業員のご家族の連絡先を、本人の同意を得たうえで把握しておく。そこまで含めて安否確認だと捉えておくと、当日の混乱が一段減るはずです。

2つ目|社長が動けないとき、誰が判断するか

次に決めるのは、判断する人です。ここは経営者ご自身にとって、いちばん向き合いにくい項目でしょう。

帝国データバンクの同じ調査データをご覧ください。事業の継続が困難になると想定するリスクとして、「経営者の不測の事態」を17.6%の企業が挙げていました。地震や火災と並んで、社長が動けなくなることも事業停止の原因に数えられているわけです。

決めておくのは代行の順位です。1番目が動けないときは2番目、2番目も難しければ3番目。誰がどこまでの決裁をしてよいかも、金額なり範囲なりで線を引いておきます。全権を渡す必要はなく、「支払いは○円まで」「取引先への回答はここまで」と区切っておけば十分でしょう。

順位が決まっていないと、全員が社長の連絡を待つ時間が生まれます。その待ち時間こそが、初動でいちばん失いやすいものだと感じています。何を決めるのが社長の役割なのかについては、社長にしかできない4つの役割でも整理しました。

なお、この項目は災害以外でも効きます。ご病気や事故で経営者が数週間離れる場面のほうが、確率としてはよほど身近ではないでしょうか。

3つ目|最初に戻す仕事を、ひとつだけ選ぶ

三つ目は、最初に戻す仕事を選ぶことです。ここで複数を挙げてしまうと、計画は途端に動かなくなるのです。

選び方の目安は、止まったときに最も早く困る人がいる仕事、という視点です。納期の迫った受注か、定期の配送か、資金の入金につながる請求か。会社によって答えは違います。

たとえば従業員10名の内装工事会社でしたら、最初に戻すのは進行中の現場の再開ではなく、施主と元請けへの状況連絡かもしれない、という具合です。連絡が入れば工期の調整が始まり、他社に振り替えられずに済みます。逆に美容室のような来店型でしたら、予約台帳の復元と営業可否の発信が先に来るところでしょう。

判断が難しいときは、逆から考える手も有効です。1週間止まっても取り返しがつく仕事はどれか。そこから外していくと、残るものが中核業務です。「全部大事です」という答えのままにしておくのが、いちばん危ない状態だと私たちは受け取っています。

帝国データバンクの調査データでは「調達先・仕入先の分散」を挙げた企業が42.1%。前年から5.2ポイント伸びていました。同じ統計で「代替生産先・仕入先・業務委託先・販売場所の確保」も20.1%。中核業務が決まると、それを支える仕入先や外注先も自然に絞られてきます。

一つに絞ると聞いて、不安を覚える方もいらっしゃるでしょう。ただ、これは他を切り捨てる話ではなく、順番の1番を決めるだけの話です。2番目、3番目は、余力が戻ってから足していけばよいものと捉えています。

4つ目|それを何日で戻すのか、目標を数字で置く

四つ目は、選んだ仕事を何日で戻すかを数字で置くことです。ここが空欄のままだと、計画は評価も改善もできません。

目標復旧時間という言い方をしますが、難しく考える必要はありません。「主力の出荷を3日以内に再開する」「請求業務を1週間以内に戻す」。この程度の粒度で十分です。

大切なのは、根拠を添えておくことでしょう。中央防災会議の被害想定データでは、被災3日後の断水率は24%、固定回線の不通率は51%と見込まれています。3日という目標を置くなら、水も通信も細いままという前提で手順を組む必要が出てまいります。

置いてみると、たいてい足りないものが出てくるはずです。手書きの受注伝票がない。取引先の連絡先が社内システムの中にしかない。そうした穴が見えるのが、目標を数字にすることの効用だと感じています。

目標は一度置いて終わりではありません。訓練で回してみて、無理があれば延ばす。設備を増やせたら縮める。そうやって毎年動かしていくものと捉えておくと、気が楽になるのではないでしょうか。

5つ目|止まっている間の現金をどう手当てするか

最後は現金です。ここが抜けたまま作られた計画を、私たちもいくつか拝見してまいりました。

帝国データバンクの調査データによると、「事業中断時の資金計画策定」を実施・検討している企業は13.3%にとどまります。同じ統計で「災害保険への加入」は38.7%でした。保険には入っていても、止まっている間の運転資金までは見ていない。そういう企業が多いということになりましょう。

決めておきたいのは3点です。売上がゼロでも出ていく固定費の月額。手元資金で何か月もつのか。そして足りないときにどこへ相談するか。関東経済産業局は、災害時に必要な資金を簡易的に算定できる「リスクファイナンス判断シート」を無償で公開しています。

日本政策金融公庫や信用保証協会には、災害時の融資制度が用意されています。認定を受けた事業継続力強化計画があると、低利融資の対象にもなるようです。借りる先を平時に一度訪ねておくだけでも、当日の初動には差が出ます

平時の資金繰りの整え方については、資金ショートを防ぐために整える資金繰りの順序で詳しくご紹介しました。有事の備えは、平時の管理の延長線上にあるものだと感じています。

A4で1枚に収めるBCPの5つの問い
チェックを入れると、決まっている項目が消えていきます。埋まらない欄が、次に手をつけるところです。
全部埋まらなくても構いません。1つ決まれば、その分だけ翌日の動きは変わります。

事業継続力強化計画という入口|認定は10万件を超えました

ゼロから様式を考えるのが大変でしたら、国が用意した型を借りるのが早道です。中小企業庁の事業継続力強化計画、通称ジギョケイと呼ばれる認定制度です。

同庁自身が「中小企業のための取り組みやすいBCPと位置づけられます」と説明している制度です。認定を受けると、税制や融資、補助金の加点といった後押しが用意されております。

未策定の理由の1位が「スキル・ノウハウがない」でしたから、型が用意されている意味は小さくありません。中小企業庁が公表した認定件数のデータを見ながら、使い方を整理してまいります。

累計100,864件・東京都10,852件|すでに広く使われている制度です

中小企業庁の中小企業庁 統計「事業継続力強化計画 地域別認定件数一覧」は、2026年7月17日に更新されました。令和8年6月末日時点の数字が載っています。

同じ統計によると、累計の認定件数は全国で100,864件。都道府県別では東京都が10,852件で最多でした。愛知県7,782件、大阪府7,657件、静岡県4,859件と続きます。令和8年度の4月から6月までの3か月だけでも、全国で3,096件、東京都で262件が認定されていました。

10万件という数字の受け取り方は、人によって違うでしょう。ただ少なくとも、まだ誰も使っていない実験的な制度ではないということは言えましょう。同じ地域で、すでに1万社以上が申請を終えているという事実は、最初の一歩を軽くしてくれるのではないでしょうか。

認定で受けられる3つの後押し|特別償却16%・低利融資・補助金の加点

認定は、証書をもらって終わりではありません。中小企業庁の制度概要資料には、実務で使える措置が3つ挙げられています。

後押しの種類 内容 出典
税制措置 中小企業防災・減災投資促進税制により、計画に記載した対象設備の特別償却16%。令和元年7月16日から令和9年3月31日までに認定を受けた事業者が対象 中小企業庁 資料
金融支援 日本政策金融公庫等による低利融資、信用保証協会の別枠保証などの措置 中小企業庁 資料
補助金の加点 ものづくり補助金など各種補助金の審査における加点措置 中小企業庁 資料

特別償却16%というのは、対象設備を導入した年度に取得価額の16%を上乗せして経費計上できる仕組みです。自家発電機や止水板といった防災設備を検討されている場合は、順番として先に認定を取っておくほうが有利です。

認定を受けた事業者は、認定ロゴマークを広報や販売活動に使うことも認められています。取引先から備えの状況を問われる場面が増えていますので、その回答材料としても機能するようです。

申請の流れと期間|電子申請から標準45日、計画期間は最長3年

手続きの見通しが立てば、着手はぐっと楽になるはずです。中小企業庁が公表した制度概要資料の記載を追ってみます。

まず単独型か連携型かを選びます。自社のみで作るなら単独型、複数の事業者と連携するなら連携型という区分です。次に「策定の手引き」を見ながら計画を作成し、事業継続力強化計画電子申請システムから申請します。単独型はシステム内での直接入力で完結する形になっています。

同じ資料によると、審査の標準処理期間は45日。計画実施期間の上限は3年です。認定後は取組を実行し、見直し時期に応じて2回目の申請を検討する流れです。認定を受けた事業者名は中小企業庁のサイトで公表されます。

申請先は所在地を管轄する経済産業局です。東京都の場合、窓口は関東経済産業局中小企業課です。1か月半程度の審査期間を見込んでおけば、逆算して着手時期を決められます。

計画を数字と行動に落とし込む考え方そのものは、平時の数字と行動に落とし込む経営計画の作り方と共通しています。あわせてご覧いただけたら嬉しく思います。

ひとりで書けないときに頼れる無料の窓口があります

未策定の理由の1位が「スキル・ノウハウがない」42.2%でしたから、書き方で詰まる方は多いはずです。相談先は、思ったより多く用意されているのです。

中小企業基盤整備機構は、専門家派遣を活用した策定・申請支援事業を行っています。認定を受けたあとの支援も用意されています。日本中小企業診断士協会連合会が中小企業診断士を派遣し、計画のブラッシュアップを行う実効性向上支援事業です。

相談先が分からないという回答は、同じ調査データではわずか2.8%です。窓口が知られていないというより、窓口を探す前段で止まっているのが実情でしょう。よろず支援拠点や、地域の商工会議所も入口の一つです。

事業継続力強化計画(ジギョケイ)の使い方 ▶ 申請から活用まで4ステップ
STEP 1単独型か連携型かを選ぶ
自社のみで作るなら単独型 複数事業者と連携するなら連携型
STEP 2策定の手引きを見ながら計画を作成
計画実施期間の上限は3年 書けないときは中小企業基盤整備機構の専門家派遣を利用できます
STEP 3電子申請システムから申請
単独型はシステム内で直接入力 審査の標準処理期間は45日 申請先は所在地を管轄する経済産業局(東京都は関東経済産業局)
STEP 4認定を受けて取組を実行
中小企業防災・減災投資促進税制の特別償却16% 日本政策金融公庫等による低利融資 各種補助金の審査における加点措置 認定ロゴマークを広報・販売活動に使用できます
累計認定件数(全国) 100,864件 うち東京都 10,852件 中小企業庁 統計「地域別認定件数一覧」令和8年6月末日時点。すでに広く使われている制度です。
出典:中小企業庁 資料「事業継続力強化計画認定制度の概要」令和8年7月17日版/中小企業庁 統計「事業継続力強化計画 地域別認定件数一覧」2026年7月17日更新

作ったあとに効くのは訓練です|実施14.2%という空白

計画は書いた時点では、まだ紙のままです。動くかどうかは一度動かしてみないと分かりません。

帝国データバンクの調査データを見ると、備えの実施状況には大きな偏りがありました。安否確認の整備は65.3%、情報システムのバックアップは59.5%と高い一方、業務の復旧訓練は14.2%と低い水準です。作る側に手が向いて、回す側は空白のまま残っているという構図です。

訓練と聞くと、大がかりな避難行動を思い浮かべる方が多いところでしょう。ただ、ここで必要なのは机の上で30分あればできる程度のものです。抜き打ちの安否確認、机上での想定問答、そして年に1度の見直し。この3つを順に見てまいります。

抜き打ちの安否確認を一度だけやってみる

最も手軽に効果が確かめられるのが、安否確認の抜き打ち実施です。準備もほとんど要りません。

平日の朝、決めてある手段で全員に一斉に連絡してみる。それだけで、いくつも発見があります。番号が古いまま更新されていない。夜間や休日は誰も気づかない。返事の集計を誰がやるか決まっていない。同じ調査データでは65.3%の企業が安否確認の手段を整備済みと答えていますが、整備と機能は別の話です。

大切なのは、うまくいかなかった点を責めないことでしょう。訓練は失敗を見つけるためのもので、成績をつけるためのものではありません。ここを間違えると、次から誰も本気で参加しなくなってまいります。

年に1回、日を決めて回す。それだけでも、名簿は毎年更新されます。

机上訓練は30分でできます|シートは無料で公開されています

大がかりな訓練を思い浮かべると腰が重くなりますが、机の上でできる形も存在します。

北海道経済産業局は「BCP訓練企画シート」を公開しています。安否確認、初動対応、事業継続の3種類について、訓練の企画に必要な検討事項を整理できるツールです。中小企業基盤整備機構も、カードゲーム形式の見直し教材を用意しております。名称は「ジギョケイ Business Survival WORKSHOP」です。

やり方はごく簡単です。全員が集まる場で「月曜の朝、震度6強が来ました」と読み上げ、5つの問いに沿って順に答えていく。誰に、どうやって連絡しますか。社長がつかまらないとき、誰が決めますか。そうやって声に出していくと、決まっていない箇所が浮かび上がってきます。

同じ調査データで復旧訓練の実施が14.2%ということは、ここに手をつけるだけで上位2割弱に入るという見方もできましょう。手間の割に、差がつきやすい部分だと感じています。

年に1回、見直す日をカレンダーに先に置いておく

最後に、見直す日を先に決めておくことをお勧めしたいところです。予定に入っていないものは、たいてい実行されないためです。

人は入れ替わり、取引先も変わり、事務所の設備も更新されます。1年前に作った連絡網が、そのまま使えることのほうが稀でしょう。事業継続力強化計画も、申請時に定めた見直し時期に基づいて2回目の申請を検討する運用になっています。

決算の翌月、あるいは防災の日のある9月。会社の区切りに合わせて、1時間だけ枠を取る。中身をすべて書き換える必要はなく、名簿と目標日数と相談先の3つを確かめるだけでも十分だと考えています。

続けられる形にすることが、精度を上げることより先に来ます。決めて、任せて、続く仕組みにしていく。この順番は、日々の経営で私たちが向き合っているものとそう変わらないように感じております。

事業中断に備えて実施・検討していること ▶ 作る側は進み、回す側が空白
作る・備える ▶ ここは進んでいます
従業員の安否確認手段の整備 65.3%
情報システムのバックアップ 59.5%
調達先・仕入先の分散↑ 5.2ポイント増 42.1%
緊急時の指揮・命令系統の構築 39.7%
災害保険への加入 38.7%
事業所の安全性確保 31.3%
生産・物流拠点の分散↑ 5.8ポイント増 15.6%
回す・支える ▶ ここが空白
業務の復旧訓練 14.2%
事業中断時の資金計画策定 13.3%
計画は書いた時点ではまだ紙のまま。訓練と資金計画に手をつけるだけで、上位2割弱に入る計算になります。 出典:帝国データバンク 調査「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」/母数5,311社・複数回答。バーの長さは最大値65.3%を100とした相対表示です。

湯島の朝で、私たちが感じていること

湯島倫理法人会は毎週月曜日の朝、文京区湯島でモーニングセミナーを開いております。

朝礼が6時30分から、本編が7時から8時までという流れです。会場は東京都文京区湯島3-6-1の全国家電会館1階。経営の具体的な話が出るのは、たいてい本編よりも、そのあとの朝食会の席でした。

備えの話題も、そこで交わされることがあります。ここから先は統計の話ではなく、私たちが朝の会場で見聞きしてきたことです。数字では埋まらない部分だけを、率直に書かせていただきます。

「うちだけ遅れている」と感じている方が、実はほとんどでした

備えの話になると、多くの方が「うちはまだ何もできていなくて」と切り出されます。何度も同じ光景を見てまいりました。

面白いもので、そう言った方の隣で、別の方も同じことをおっしゃいます。全員が自分だけ遅れていると感じている状態です。帝国データバンクの調査データが示す中小企業の策定率18.3%という数字を思えば、それも無理はないのでしょう。8割以上の会社が、まだ手をつけていないわけですから。

私たち編集部も、偉そうなことを言える立場ではありません。この記事をまとめる過程で、自分たちの安否確認の手順が古いままだったことに気づいた次第です。

遅れていることを責め合う場では、あまり前に進みません。遅れている前提で何から始めるかを話せる場のほうが、実際には役に立つと感じております。

備えは、誰かに指示されて整うものではないところがあります。まず自分の会社から手をつけてみると、取引先との会話も自然に変わってくる。そんな順番を、朝の会場で何度か見せていただきました。

同じ地域の経営者だから、話が具体的になることがあります

もう一つ感じるのは、同じ地域で商売をしている者同士だと、話が急に具体的になるという点です。

同じ駅を使い、同じ道路が止まり、同じ停電の影響を受ける。だからこそ「うちの近くのあの通りは、あの日どうだったか」という話が通じます。中央防災会議の被害想定データを思い出してください。平日12時に発災した場合、東京都で約480万人が当日中に帰宅困難になるという想定です。この数字も、都内で仕事をしている方同士だと受け取り方が変わってまいります。

コンサルティングを受けるのとは違う種類の情報が、そこにはあるのでしょう。正解を教わる場ではなく、それぞれの試行錯誤を持ち寄る場だと捉えております。

月曜の朝は、ゲスト参加を無料でお受けしています

初めての方も、ゲストとして会員と同じようにご参加いただけます。事前のお申し込みは必要ありません。

毎週月曜日、朝礼が6時30分から、本編は7時から8時まで。会場は全国家電会館1階。東京メトロ千代田線「湯島駅」から徒歩2分、JR「御徒町駅」から徒歩8分の距離です。ゲスト参加は無料で、朝食会は自由参加です。

BCPの話が毎回出るわけではありません。講話の内容はその週の講話者によって変わります。ただ、経営で悩んでいることを口に出せる相手が何人かできるだけでも、備えの話は進みやすくなるように感じております。

私たちも学んでいる途中です。ご一緒に歩んでいけたら嬉しく思います。

湯島倫理法人会 モーニングセミナーのご案内
日時
毎週月曜日 朝礼 6:30〜 本編 7:00〜8:00 朝食会 〜8:40頃(自由参加)
会場
全国家電会館 1階 東京都文京区湯島3-6-1 東京メトロ千代田線「湯島駅」徒歩2分 JR「御徒町駅」徒歩8分
参加について
ゲスト参加は無料 事前のお申し込みは不要 初めての方も会員と同じようにご参加いただけます 会費は月額1万円ほど(入会される場合)
正解を教わる場ではなく、それぞれの試行錯誤を持ち寄る場です。

この記事のまとめ|中小企業のBCPで押さえておきたいこと

ここまでご一緒に見てきた内容を、最後に短く振り返らせてください。要点は3つに絞れます。

BCPは分厚い計画書のことではなく、止まった翌日に動くための取り決めでした。帝国データバンクの調査データでは、中小企業の策定率は18.3%でした。未策定の理由の上位はスキル・人材・時間という経営資源の不足。必要性を否定している企業は、むしろ少数派です。

中央防災会議の被害想定データも見ました。都心南部直下地震では、通信と水が戻るまでにおおむね1週間かかります。電力の供給力の回復には1か月程度です。平日の昼に発災すれば東京都で約480万人が当日は帰れません。この目盛りに合わせて、目標復旧時間を置くわけです。

5つの問いをA4で1枚に、が最初の一歩です

先に決めておきたいのは5つでした。誰の安否をどの手段で確認するか。社長が動けないとき誰が判断するか。最初に戻す仕事はどれか。それを何日で戻すか。止まっている間の現金をどう手当てするか。

順番には理由がありました。人の無事が分からなければ判断ができず、判断する人が決まっていなければ戻す順番も決められません。上から埋めていくと、自然に形になる並びにしてあります。

全部が埋まらなくても構いません。1つ決まれば、その分だけ当日の判断は軽くなります。埋まらなかった欄は、来年また向き合えばよいものと捉えております。

型を借りたいときは事業継続力強化計画という入口があります

様式から考えるのが大変でしたら、中小企業庁の事業継続力強化計画が使えます。同庁の統計では累計100,864件、東京都だけで10,852件が認定済みでした。電子申請で標準45日、計画期間は最長3年です。

認定を受けると、特別償却16%の税制措置や低利融資、補助金の加点といった後押しも付いてきます。書き方に迷われるときは、中小企業基盤整備機構の専門家派遣という手もありました。

そして、作ったあとに効くのは訓練でした。同じ調査データでは復旧訓練の実施は14.2%。抜き打ちの安否確認を一度流してみるところから、始められるものと考えております。

よくあるご質問

最後に、BCPについて実際にいただくことの多いご質問を、5つ選んでお答えしてみます。

私たち編集部も、同じ疑問を抱えながら調べてまいりました。ここでの答えは正解というより、公表されている統計と湯島の実際から、現時点でお伝えできる範囲のものです。

会社の規模も業種も違えば、当てはまる答えも変わってまいります。同じ質問でも、従業員5人の会社と50人の会社では、優先すべき手が入れ替わることも珍しくありません。ご自身の会社に置き換えながら読んでいただけたら嬉しく思います。

従業員が5人ほどの会社でも、BCPは必要なのでしょうか。

必要かどうかは会社ごとのご判断ですが、規模が小さいほど「社長が動けなくなったとき」の影響は大きくなりやすいものです。帝国データバンクの調査データでは、中小企業の策定率は18.3%で、大企業の39.9%と20ポイント以上の差がありました。

少人数だからこそ、A4で1枚に収まるはずです。安否をどう確かめるか、社長が不在のとき誰が判断するか、最初に戻す仕事はどれか。この3つだけでも決まっていれば、当日の動きはずいぶん変わってまいります。

BCPと防災マニュアルは、何が違うのでしょうか。

守ろうとしている対象が違います。防災の取り組みは人の命と建物を守るためのもので、避難経路や備蓄が中心です。BCPはそのあとの話で、事業をどの順番でどこまで戻すかを扱うものです。

中央防災会議が令和7年12月に公表した被害想定データでは、電力の供給側設備の復旧に1か月程度を要するとされています。停電が続く前提でも動かす仕事を決めておくのがBCPの役割です。両方が必要で、どちらかが代わりになるものではありません。

何から手をつければよいか分かりません。ひな形はありますか。

中小企業庁の事業継続力強化計画、通称ジギョケイの様式を使う方法があります。同庁自身が「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけている制度です。

中小企業庁が公表した認定件数の統計では、累計100,864件、東京都だけで10,852件が認定されています。電子申請システムから申請でき、審査の標準処理期間は45日です。書き方に迷われるときは、中小企業基盤整備機構が専門家派遣による策定支援を行っております。

作ってはみたものの、使えるものになっている自信がありません。

同じ悩みを持つ方は多いようです。帝国データバンクの調査データをご紹介します。未策定の理由として「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」が25.4%でした。

一方、同じ統計で業務の復旧訓練を実施・検討している企業は14.2%という低さでした。抜き打ちで安否確認を一度流してみる、机の上で30分だけ想定を話し合ってみる。そのくらいから始めても、計画のどこが動かないかは見えてくるものです。

同じような悩みを持つ経営者と話せる場はありますか。

湯島倫理法人会では毎週月曜日の朝7時から8時まで、東京都文京区湯島の全国家電会館でモーニングセミナーを開いております。ゲスト参加は無料で、初めての方も会員と同じようにご参加いただけます。

備えの話が毎回議題に上がるわけではありません。ただ、セミナーのあとの朝食会では、同じ地域で商売をしている方同士の具体的なやりとりが交わされています。私たち編集部も日々学んでいる途中です。ご一緒に考えていけたら嬉しく思います。

倫理経営を朝から学ぶ、湯島の経営者コミュニティへ

湯島倫理法人会は文京区湯島3-6-1 全国家電会館1階で、毎週月曜日 朝7:00からモーニングセミナーを開催しています。初めての方もゲスト参加(無料)でお越しいただけます。朝が難しい方は9:30から始まる「湯島つながりラボ」も別会場でお待ちしています。

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