「経営理念をつくりたいけれど、どう言葉にすればよいか分からない」。そんな悩みを抱える中小企業の経営者は、少なくないのではないでしょうか。何か立派なものにしなければと身構えて、かえって筆が止まってしまう。その気持ちは、私たちにもよく分かります。

結論からお伝えします。経営理念は、立派な言葉である必要はありません。自社の存在意義を素直に言葉にすることから始まります。大切なのは、飾った表現より、自分の腹の底にある思いを掘り起こす作業です。私たち編集部も、理念の意味を問い直しながら学んできました。

本記事では、経営理念とは何か、絵に描いた餅にしない作り方5ステップ、そして理念を実践につなげる工夫までを、私たち自身の試行錯誤も交えてご紹介します。お役に立てれば幸いです。

INDEX目次

中小企業の経営者が経営理念づくりに悩む理由

経営理念づくりが難しく感じられるのは、「特別なものをつくらなければ」という思い込みがあるからです。大企業のような格調高い言葉を目指すと、自分の言葉が出てこなくなりがちです。まずは、その肩の荷を下ろすところから始めていきましょう。

中小企業の経営理念の作り方に役立つ落ち着いた執務室のノートとペン

「立派な言葉にしなければ」という思い込み

経営理念と聞くと、額縁に入った美しい言葉を思い浮かべる方が多いものです。けれども、見栄えのよい言葉が、必ずしも良い理念とはかぎりません。借り物の表現は、どこか自分の言葉として響かず、社員にも伝わりにくいのです。

大切なのは、飾ることより、自社らしさを素直に映す姿勢です。「なぜこの事業を始めたのか」「何を大事にしてきたのか」。その問いに正直に向き合えば、たとえ素朴でも、自分の言葉で語れる理念が見えてきます。気負わず、自分の声を探すことから始めてみてください。

この記事でわかること(理念の意味・作り方・活かし方)

この記事では、経営理念にまつわるテーマを順にお伝えします。具体的には、経営理念の意味、作り方の5ステップ、そして活かし方です。読み終えるころには、自社の理念づくりに踏み出すイメージが描けているでしょう。

専門的な経営学の話は出てきません。等身大の案内として、私たちが理念と向き合うなかで学んだことを中心にまとめました。気になる見出しから読んでいただいて構いません。

そもそも経営理念とは|会社の存在意義を言葉にしたもの

経営理念とは、会社が何のために存在するのかを言葉にしたものです。事業の基盤であり、判断に迷ったときの拠りどころになります。近年は、ミッション・ビジョン・バリューという三つの要素に整理して考える方法も広がっています。まずは、言葉の意味を押さえておきましょう。

経営理念とミッション・ビジョン・バリュー

経営理念という大きな考えを、3要素に具体化したものです

ミッション

会社の使命
何のために存在するか

ビジョン

目指す姿
どこへ向かうか

バリュー

大切にする価値観
どう振る舞うか

経営理念

会社の存在意義を言葉にした、事業の土台・判断の拠りどころ

中小企業こそ、自社の言葉で言語化する価値があります

経営理念は、会社の判断の拠りどころ

経営理念のいちばんの役割は、判断の拠りどころになることです。日々の経営では、答えのない選択を迫られる場面が次々と訪れます。そんなとき、「自社は何を大切にするのか」が言葉になっていれば、ぶれずに決断できます。

理念は、お飾りではなく羅針盤です。新しい挑戦をするとき、難しい判断をするとき、立ち返る場所があるかないかで、迷いの深さが大きく変わるはずです。経営理念とは、会社という船が進む方角を指し示す、北極星のような存在だと言えるでしょう。

ミッション・ビジョン・バリューとの関係

近年は、経営理念をミッション・ビジョン・バリューの三つに整理する方法が広く紹介されています。ミッションは会社の使命、ビジョンは目指す姿、バリューは大切にする価値観を指します。経営理念という大きな考えを、より具体的に分けたものと捉えると分かりやすいでしょう。

中小企業こそ、こうした要素を言語化する価値があると言われています。理念が言葉になっていると、採用の場面で共感する人が集まり、事業の方向づけもしやすくなるからです。難しく考えず、自社の言葉で一つずつ整理してみることをおすすめします。

中小企業の経営理念の作り方5ステップ

経営理念づくりは、5つのステップで進めると形になりやすいものです。創業の思いを振り返り、大切にしたい価値を言葉にし、目指す姿を描き、短く磨き、社内で共有する。順を追えば、特別な才能がなくても、自社らしい理念にたどり着けます。

5つのステップを、まず一覧で整理しました。

経営理念づくり 5ステップ

順を追えば、特別な才能がなくても自社らしい理念にたどり着けます

1

創業の原点を振り返る

なぜこの事業を始めたのか、当時の思いを書き留める

2

大切にしたい価値を書き出す

お客様・社員・品質・地域。生の言葉を並べてみる

3

目指す姿を描く

5年後・10年後、どんな存在になっていたいか

4

短い言葉に磨く

声に出して、自然と口をついて出る言葉まで削る

5

社員と共有し、対話する

語り合うことで、会社みんなのものへ育てる

絵に描いた餅にしないため、生の言葉から立ち上げます

ステップ1・2 創業の原点を振り返り、大切な価値を書き出す

最初のステップは、創業の原点を振り返る作業です。なぜこの事業を始めたのか、どんな思いがあったのか。当時の気持ちを思い出すと、自社の核にある思いが見えてきます。きれいにまとめようとせず、頭に浮かんだ言葉をそのまま書き留めて構いません。

次に、大切にしたい価値を書き出してみましょう。お客様、社員、品質、地域。自社が何を大事にしてきたかを、思いつくまま並べてみます。理念は、絵に描いた餅やお題目にしないために、こうした生の言葉から立ち上げるのが近道だと紹介されています。

ステップ3・4 目指す姿を描き、短い言葉に磨く

3つ目は、目指す姿を描く段階です。5年後、10年後、自社がどんな存在になっていたいか。社会にどう役立っていたいか。少し先の景色を思い描くと、理念に向かう方向性が定まります。壮大すぎず、自分たちが本気で目指せる姿を選ぶのがコツです。

4つ目は、書き出した言葉を短く磨くことです。長い文章のままでは、社員の記憶に残りません。核となる思いを、覚えやすい一文や数語に削っていきます。何度も声に出し、自然と口をついて出る言葉になるまで、少しずつ整えていきましょう。

ステップ5 社員と共有し、対話する

5つ目のステップは、社員と共有し、対話する段階です。理念は、経営者一人のものではありません。社員に伝え、感想を聞き、ともに意味を考える。その対話を通じて、理念は会社みんなのものへと育っていきます。

一方的に掲げるだけでは、理念は浸透しません。「これはどういう意味だと思う」と問いかけ、社員の言葉で語ってもらう。そうしたやり取りを重ねるうちに、理念が日々の会話に登場し始めます。共有とは、配ることではなく、語り合うことなのです。

お題目で終わらせないための工夫

せっかくつくった経営理念も、壁に貼るだけでは絵に描いた餅になってしまいます。形骸化を防ぐ鍵は、日々の判断や行動と理念を結びつけることです。朝礼で触れる、評価の基準にする、社長自らが体現する。理念を生きた言葉にする工夫をご紹介します。

お題目で終わる理念と、生きた理念

形骸化を防ぐ鍵は、日々の判断・行動と結びつけることです

お題目で終わる理念

壁に貼るだけ

日常と切り離されている

誰も覚えていない

生きた理念

日々の判断に使う

朝礼や評価で繰り返し触れる

社長自らが体現する

立派な言葉より、実行の積み重ねが社風を育てます

理念を日々の判断と結びつける

理念を生かす最大のコツは、日々の判断に使うことです。難しい選択を迫られたとき、「自社の理念に照らすとどうか」と問う習慣を持つ。理念が判断の基準として機能し始めると、お飾りから実用の道具へと変わっていきます。

朝礼で理念に触れたり、人事評価の物差しに取り入れたりするのも有効です。理念に沿った行動を称えれば、社員は「これが大切にされているのだ」と肌で理解します。日常の節々で理念に立ち返る仕組みをつくることが、形骸化を防ぐ確かな道です。

まず経営者自身が体現する

理念を浸透させるうえで、何より効くのが経営者自身が体現することです。社長が理念と違う行動を取れば、どんな立派な言葉も一瞬で色あせます。逆に、社長が理念どおりに振る舞えば、言葉以上の説得力で社員に伝わるものです。

「理念を守りなさい」と言う前に、まず自分が守る。これが、理念を生かす出発点です。完璧でなくても構いません。社長が理念を体現しようと努める姿そのものが、社員の心を動かします。背中で語ることが、最も強いメッセージになるのです。

経営理念を「実践」につなげるという視点

経営理念は、つくって終わりではなく、実践してこそ意味を持ちます。私たちが倫理経営をご一緒に学ぶなかで感じているのは、理念は唱えるものではなく、日々の小さな行動で示すものだ、ということです。立派な言葉より、実行の積み重ねが社風を育てていきます。

理念は唱えるより、行動で示す

理念を語るのは簡単ですが、行動で示すのは難しいものです。けれども、社員が見ているのは言葉ではなく行いです。理念に「誠実」と掲げても、日々の対応が不誠実なら、言葉は空虚に響きます。逆に、理念を地道に実践する会社には、自然と信頼が集まってくるものです。

実践といっても、特別なことではありません。挨拶を大切にする、約束を守る、感謝を伝える。そんな小さな行動の積み重ねが、理念を生きたものにします。明朗(ほがらか)な挨拶ひとつでも、理念を体現する立派な実践になるのです。

私たちも、理念と実践のあいだで学んでいます

正直に申し上げると、私たち編集部も、理念と実践のあいだで日々もがいています。立派な言葉を掲げても、忙しさにまぎれて実行が伴わない。そんな反省を、何度も繰り返してきました。理念を実践し続けることの難しさは、痛いほど分かります。

だからこそ、同じように悩む経営者と学び合える場が、ありがたく感じられます。「うちはこう実践している」という他社の話は、いつも具体的なヒントになります。私たちも完成された存在ではなく、ご一緒に学ばせていただいている途中です。

理念を語り合える仲間とともに|ゲスト参加のご案内

経営理念づくりに唯一の正解はなく、私たちも試行錯誤の途中です。もし「他の経営者がどう理念と向き合っているか知りたい」と感じられたら、湯島倫理法人会のモーニングセミナーに、一度ゲスト参加してみませんか。同じ志を持つ経営者の言葉は、きっと理念づくりの励みになります。

朝の光が差し込む明るい会議室と中小企業の経営理念の作り方を表す資料

毎週月曜7:00、文京区湯島で開催しています

湯島倫理法人会のモーニングセミナーは、毎週月曜の7:00から8:00、文京区湯島3-6-1の全国家電会館1階で開いています。最寄りは東京メトロ千代田線「湯島駅」で徒歩2分、JR「御徒町駅」からも徒歩8分ほどです。参加費は無料で、ゲスト参加を心から歓迎しています。

講話では、経営者が自身の理念や経営への思いを率直に語ってくれます。お申し込みは、お問い合わせから「ゲスト参加を希望します」とお伝えいただくだけで結構です。理念づくりのヒントを探す方を、編集部一同お待ちしております。詳しくは湯島倫理法人会のトップページもご覧ください。

朝が難しい方へ――湯島つながりラボという入口

「朝7時はどうしても厳しい」という方もいらっしゃるでしょう。そんな方には、もう一つの入口として湯島つながりラボをご案内しています。毎週月曜の9:30から11:00まで、U-cafe上野御徒町で開かれる、よりカジュアルな交流の場です。

参加はドリンク代のみで、入会費や会費はかかりません。お仕事のPRや名刺交換、歓談を通じて、湯島の仲間と気軽につながれます。詳しくは湯島つながりラボのページをご覧ください。朝のセミナーと二者択一ではなく、ご自身の暮らしに合う扉から、ご一緒に一歩を踏み出していけたら嬉しく思います。

よくあるご質問

経営理念とは、そもそも何ですか?

会社が何のために存在するのかを言葉にしたものです。事業の基盤であり、判断に迷ったときの拠りどころになります。近年は、ミッション・ビジョン・バリューという三つの要素に整理して考える方法も広く用いられています。

中小企業が経営理念をつくるには、何から始めればよいですか?

まずは創業の原点を振り返り、自社が大切にしたい価値を書き出すことから始めるのがおすすめです。立派な言葉にしようと気負わず、素直な思いを言葉にすることが第一歩です。そこから目指す姿を描き、短く磨いていきます。

経営理念が「お題目」になってしまわないか心配です。

形骸化を防ぐ鍵は、理念を日々の判断や行動と結びつけることです。朝礼で触れたり、評価の基準にしたり、経営者自身が体現したりすることで、理念は生きた言葉になります。壁に貼って終わりにしないことが大切です。

ミッション・ビジョン・バリューと経営理念は、どう違うのですか?

経営理念は会社の存在意義を表す広い概念で、それを具体的に整理したものがミッション・ビジョン・バリューです。ミッションは使命、ビジョンは目指す姿、バリューは大切にする価値観を指します。中小企業でも言語化すると方向性が定まりやすくなります。

他の経営者がどう経営理念と向き合っているか知りたいです。

同じ立場の経営者が集う学びの場に足を運ぶのも一つの方法です。湯島倫理法人会では毎週月曜7:00からモーニングセミナーを開催し、経営者が理念や生き方について学び合っています。会員でない方も無料でゲスト参加できます。

関連記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP