「うちのような中小企業でも、本当に有給を年5日取らせないといけないのでしょうか」——湯島の朝、そんな小さな戸惑いを耳にすることが少なくありません。制度は知っていても、現場が回らない不安が先に立ってしまう。そのお気持ち、私たち編集部にも重なる場面が確かに存在しています。
結論から申し上げますと、年5日の有給休暇取得義務は2019年4月から始まった労働基準法の定めであり、中小企業への猶予はありません。対象は年10日以上の有給が付与される全ての労働者で、違反時は労働者1人あたり30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法第120条)。ただ、罰則よりも重いのは社員との信頼関係が揺らぐことかもしれません。
本記事では、①制度の全体像 ②対象者と付与日数 ③罰則とリスク ④無理なく回す4つの実務手順 ⑤「休みが取りづらい空気」への向き合い方 ⑥経営者ご自身の在り方 ⑦よくあるご質問——の順に、湯島の経営者仲間と分かち合ってきた気づきも交えてご紹介します。皆様のお役に立てれば嬉しく思います。
| 調査年(厚生労働省 就労条件総合調査) | 年次有給休暇の取得率 | 付与日数の平均 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 平成30年(2018年)※義務化前 | 52.4% | 18.2日 | 厚生労働省「就労条件総合調査」 |
| 令和2年(2020年) | 56.6% | 18.0日 | 厚生労働省「就労条件総合調査」 |
| 令和4年(2022年) | 62.1% | 17.6日 | 厚生労働省「就労条件総合調査」 |
| 令和5年(2023年)※過去最高 | 65.3% | 17.6日 | 厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査」(2024年10月公表) |
有給消化義務とは|中小企業も対象になった「年5日取得」ルールの全体像
年5日の有給休暇取得義務とは、年間10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、使用者が1年以内に最低5日の取得日を指定し、実際に休ませなければならない制度です。2019年4月1日施行の働き方改革関連法によって新設され、労働基準法第39条第7項に明文化されました。中小企業への猶予規定は設けられていません。
社労士の大槻智之氏はYouTube解説で「働き方改革で最も現場に浸透した改正の一つ」と説明しており、大槻智之【社労士法人 大槻経営労務管理事務所 代表】さんも同様のことを述べています(解説動画)。私自身、ハッシンラボPremiumの現場でも「知ってはいるけれど回せていない」というお声を伺うことがあり、まずは制度の輪郭から一緒に整えていく大切さを感じています。
働き方改革関連法で2019年4月から始まった義務化の背景
働き方改革関連法(2018年6月成立・2019年4月施行)は、長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現を大きな柱にしています。有給取得義務は、その柱の一つとして「休みたくても言い出せない」風土に一石を投じる制度として導入されました。
日本の年次有給休暇の取得率は、義務化前は50%前後で推移していた期間が長く、他の先進国と比較しても低水準にありました。「制度はあるのに使われない」という長年の課題を、使用者側からの働きかけで解きほぐそうとする発想の転換が、この改正の根っこにあるのかもしれません。
労働基準法第39条7項が定める「使用者による時季指定」の考え方
条文は「使用者は、有給休暇の日数のうち5日については、基準日から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない」と定めています。ここで大切なのは、「労働者に取らせる」ではなく「使用者が時季を指定する」義務として書かれている点です。
つまり、社員が自主的に5日以上取得すれば時季指定は不要ですが、そこに達しない場合は使用者側が「この日に休んでください」と指定する責任を負います。ここが従来の運用と最も変わったところで、経営者の立場から見れば受け身では成立しない制度という理解が出発点です。
中小企業も例外なく対象になっている点
働き方改革関連法には、時間外労働の上限規制のように中小企業への猶予期間が設けられた項目も存在します。しかし、有給取得義務については規模に関わらず一律で2019年4月から適用されました。従業員が数名の小規模事業者であっても例外ではありません。
このあたり、「うちは小さいから対象外だと思っていた」という誤解に出会うことが今もあります。制度が始まってから既に6年以上が経過していますので、この機会に社内の運用を見直してみるのはいかがでしょうか。
対象になる従業員は誰か|年10日以上付与される人が基準
義務化の対象は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者全員です。正社員はもちろん、パート・アルバイトであっても付与日数が10日に達すれば対象範囲に含まれます。逆に付与日数が10日未満の労働者は、義務化の対象外です。
「うちのパートさんはどうなるのか」というご質問は、湯島でも複数回いただいたテーマです。付与日数のルールを整理してみると、意外と対象になる方が多いことに気づかれる経営者の方も少なくありません。
正社員だけでなくパート・アルバイトも付与日数10日以上なら対象
週の所定労働時間が30時間以上、または週5日以上勤務するパート・アルバイトの方は、正社員と同じ付与日数(雇入れから6か月経過で10日)が適用されます。この時点で年5日取得義務の対象に組み込まれる形です。
| 週の所定労働日数 | 6か月 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 週5日以上/週30時間以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
| 週4日勤務 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 週3日勤務 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 週2日勤務 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 週1日勤務 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
比例付与の考え方(週の労働日数と勤続年数のマトリクス)
週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満のパート・アルバイトには、比例付与という仕組みが適用されます。週4日勤務なら勤続3年半で年10日、週3日勤務なら勤続5年半で年10日が付与されるため、この時点で義務化の対象に入る形です。
「うちの主力パートさん、勤続5年目だからそろそろ対象かも」——そんな気づきが生まれる瞬間があります。台帳を一度洗い出してみると、思ったより早く対象範囲が広がっていることが見えてくるかもしれません。
管理監督者・有期契約労働者の扱い
労働基準法上の管理監督者(部長・支店長など、実質的に経営者と一体的な立場にある方)も、有給休暇の取得義務の対象です。深夜割増や時間外割増の適用対象外である管理監督者であっても、有給休暇に関しては一般の労働者と同じルールが適用される点は見落としがちです。
有期契約労働者も同様で、契約期間が短いから対象外ということはありません。付与日数10日以上という条件を満たすかどうかで判断されます。
違反したときの罰則とリスク|金額よりも重い「信頼の損失」
違反すると労働基準法第120条により、労働者1人あたり30万円以下の罰金が科される可能性が生じます。仮に対象社員10名について未取得を放置すれば、単純計算で最大300万円の罰金対象という重い数字が出てきます。ただ、経営者にとって本当に重いのは金額そのものよりも、労働基準監督署からの是正勧告や社員との信頼関係の揺らぎかもしれません。
弁護士の越水はるか氏はYouTubeで「退職時にまとめて有給消化を申請されるケースが増えており、日頃の運用が問われる」と警鐘を鳴らしており、越水はるか弁護士-守りの経営chさんも同様のことを述べています(解説動画)。私自身、経営者仲間から「辞める直前に一気に休まれて業務が止まった」という体験談を伺ったことがあり、日頃の分散取得の大切さを痛感しています。
労働基準法第120条による30万円以下の罰金(労働者1人あたり)
罰金は労働者1人あたり最大30万円という計算で科されます。会社全体で1件30万円ではなく、義務違反となった社員の人数分が積み上がる点に留意が必要です。実務上、初回の指摘でいきなり罰金が科されるケースは多くありませんが、是正指導を受けた後も改善しない場合は、書類送検に至った事例も報告されています。
労働基準監督署の調査で指摘される流れ
労働基準監督署の定期監督や、社員からの申告に端を発する調査で、有給取得状況の帳簿確認が行われます。年次有給休暇管理簿の作成・3年間の保存は義務化と同時にセットで定められた実務要件で、これが用意できていないと指摘の入り口になりやすいのが実情です。
管理簿には「基準日」「付与日数」「取得日数」を記載する必要が生じます。エクセルでも紙台帳でも構いませんが、後から取り出せる形で残しておくことが大切です。
採用・定着への波及と、退職時の未消化トラブル
罰則以上に効いてくるのが、社員の定着と採用への影響です。求職者は口コミサイトや面接での質問で「有給が取れる会社かどうか」を確かめる時代になっています。「有給が取りにくい」という評判は、採用市場で確実にマイナスに働きます。中小企業ならではの強みを活かした組織づくりについては、家族経営とは|中小企業の強みを活かし社員も育つ組織のつくり方もヒントになるかもしれません。
退職時の未消化トラブルも増えています。辞める段階で「これまで使えなかった分を全部消化させてください」と申請されると、時季変更権はほぼ働かず、業務引き継ぎが難しくなる場面が出てきます。日頃から少しずつ取得してもらう運用が、結果として会社を守る形になるのかもしれません。
年5日を無理なく回す4つの実務手順|制度設計からのやさしい進め方
年5日取得を無理なく回す実務手順は、①管理簿の見える化 ②年度初め面談 ③計画的付与制度の活用 ④月次モニタリング——の4ステップです。制度と現場の両輪で整えていくことで、忙しい中小企業でも運用に乗せていけます。
「気持ちはあっても現場が回らない」——このお悩みは湯島の朝食会でもよく分かち合われるテーマです。私たち編集部も、正解を持っているわけではありません。ご一緒に、実践されている方々の工夫を眺めていけたらと思います。
①付与日と付与日数を全員分「見える化」する台帳の準備
まず取り組みやすいのが、年次有給休暇管理簿の整備です。氏名・基準日・付与日数・取得日数を一覧化できる表を用意し、月に一度は最新化する運用に切り替えます。エクセル1枚でも十分機能します。
台帳を眺めると、「Aさんは基準日から半年経ってまだ0日」といった気づきがすぐ得られます。見える化は、対策の第一歩。数字が並ぶだけで、次に声をかける相手が自然と浮かび上がってくるものです。
②年度初めに従業員一人ひとりと取得計画を握る面談
期初(あるいは基準日直後)に、社員一人ひとりと5〜10分の短い面談を持ち、「今年度、どの月にどれくらい休みたいか」を聞き取ります。夏休みに家族旅行、秋に紅葉、年末に帰省——予定を先に置いてもらうと、当日ぎりぎりに悩む場面がぐっと減っていきます。
面談は堅苦しく構える必要はありません。「今年はどんな1年にしたい?その中で休みはどう使いたい?」と、対話の入口を柔らかくするだけで、社員側も本音を出しやすくなります。ある製造業の経営者の方は「面談を始めてから、有給の申請書が笑顔で出てくるようになった」と話されていました。
③計画的付与制度(労使協定による一斉付与・個別付与)の活用
計画的付与制度は、労使協定を締結することで、有給休暇のうち5日を超える日数分について会社が計画的に取得日を指定できる制度です(労働基準法第39条第6項)。夏季休業や年末年始の営業日を計画的付与で埋める運用は、多くの中小企業で採用されています。
社労士のニースル氏はYouTube解説で「就業規則との整合を取り、対象範囲を明確にすることが計画的付与運用の要」と述べており、ニースル社労士事務所さんも同様のことを述べています(解説動画)。労使協定の様式は厚生労働省サイトにひな形が用意されていますので、ゼロから作る必要はありません。
なお、2026年4月に予定されている労働基準法改正では、有給休暇取得時の賃金算定基礎が「通常賃金」に一本化される見込みです。パート・アルバイトの賃金計算にも影響が出るため、社内の賃金台帳の整備も併せて進めておくと安心です。人事のマエカワ【社労士】さんも改正の要点をYouTubeで解説されています(解説動画)。
④取得状況を月次で追い、未取得者に声をかける仕組み
台帳と面談で計画を立てても、月次で見直さないと年度末に慌てる事態になりがちです。毎月の締め処理と併せて未取得者リストを作り、上長から一声かける——このシンプルな運用が、結果として一番効きます。
「◯◯さん、今月まだ有給を使えていないですが、来月あたりお子さんの学校行事などで使いませんか」——こんな一言があるかないかで、社員の受け取り方はまるで別物になります。押し付けではなく、寄り添うトーンで声をかけていけたらと感じています。時間の使い方を社長ご自身が見直すヒントについては、経営者の時間管理|社長が考える時間を取り戻す5つの手順も参考になるかもしれません。
「休みが取りづらい空気」との向き合い方|湯島の経営者仲間から聞いた小さな工夫
制度を整えても、現場では「みんなが休まないから自分も休みにくい」という空気が残ることがあります。この壁は、経営者お一人の意思だけでは越えにくく、組織全体の文化に関わるテーマです。
ABEMA Primeの2025年放送では、有給が年20日付与されているのに休みづらい空気があると中小企業経営者が語る場面がありました(アベプラ「有給休暇」特集)。私自身、湯島倫理法人会のモーニングセミナー後の朝食会で、同じテーマに悩まれている経営者の方々と何度も対話を重ねてきました。答えは断定できませんが、実践されているちいさな工夫をご紹介します。
「社長自身がまず有給を取る」という姿勢が空気を変えたという声
ある卸売業の社長は「自分が朝から夕方までフルで働いている姿を見せている限り、社員は休みにくい」と気づき、月に1日、金曜午後を自分の有給に充てる運用を始めたそうです。「社長が休むなら、自分も休んでいいんだ」という空気が半年ほどで社内に浸透したというお話でした。
倫理法人会で分かち合われる「自分が変われば周囲が変わる」という考え方が、有給運用の場面にも当てはまるのかもしれません。経営者ご自身が休みを取ることは、業績を落とすことではなく、社員に対する無言のメッセージになり得ます。
属人化した業務を月1回30分の「引き継ぎ雑談」で解きほぐす試み
「Aさんが休むと業務が止まる」——中小企業でよく聞くお悩みです。ある建設業の経営者は、月に1回30分だけ「あの人の業務、他の人でも回せるようにするための雑談」の時間を作られたそうです。マニュアル化まではせず、口頭で手順を共有するだけでも、「もしもの時、隣の人が半分は代われる」状態に近づいたとのこと。
いきなり完璧な引き継ぎは難しくても、月1回の小さな習慣なら続けられるかもしれません。継続することで、少しずつ「休める職場」に変化を感じられるようになったそうです。
有給を「疲労回復」ではなく「学びの時間」として位置づけ直す発想
有給休暇を「疲れたら休む日」と位置づけていると、頑張り屋の社員ほど取りづらくなります。ある士業事務所の代表は、有給の一部を「学びの日」として、外部研修や書籍を読む時間に充ててもらう運用を提案されたそうです。「休むこと」への罪悪感が薄れ、取得率が改善したというお話でした。
明朗(ほがらか)に働くためには、時に立ち止まって自分を整える時間も必要です。休みの位置づけを少し変えるだけで、社員の心理的なハードルが下がることもあるようです。
経営者自身の在り方が組織の休み方を変える|倫理経営の視点から
組織の休み方は、経営者ご自身の働き方が映し出される鏡かもしれません。制度・仕組みを整えることと同じくらい、経営者ご自身の在り方を見つめ直す時間が、遠回りに見えて実は近道になる場面が確かに存在します。
湯島倫理法人会では「自分が変われば周囲が変わる」という考え方を、私たち編集部も日々学ばせていただいています。答えを断定はできませんが、皆様のお仕事にヒントになる視点があれば嬉しく思います。

経営者の「休まない美学」が現場の遠慮を生んでいないか
「自分は休まず働く。それが経営者の責務だ」——このお考え自体を否定するつもりはありません。ただ、その姿勢が結果として社員の「休みたいのに言い出せない」空気を作っている可能性は、一度立ち止まって見つめてみる価値があるかもしれません。
私自身、コントリの経営を通じて「休まないことで社員が休みにくくなる」という側面を痛感した経験を持っています。経営者ご自身の中の「休まない美学」を、ゆるやかに手放してみる。それだけで、組織の景色が変わってくることも少なくありません。
喜んで働く(喜働)と、きちんと休むことは矛盾しないという捉え方
倫理法人会で分かち合われる「喜働(きどう)」——喜んで働くという姿勢は、休まず働き続けることを推奨するものではないと、私は捉えています。むしろ、心身が整った状態で明るく仕事に向かえる状態こそ、喜働の姿ではないでしょうか。
疲弊して笑顔を失った状態でデスクに向かうより、しっかり休んでまた月曜の朝から張り切って働く。そのリズムを社員と共有していけたら——湯島の朝の学びで、そんな気づきをいただく瞬間が確かに存在します。経営者ご自身の健康管理について、より詳しくは経営者の健康管理|多忙な社長が長く走り続ける整え方も併せてご覧いただけたら嬉しく思います。
湯島の朝の学びで、ご自身の働き方を見つめ直す時間を持ってみる
湯島倫理法人会では、毎週月曜日の朝7:00から8:00まで、モーニングセミナーを開催しています。会場は東京都文京区湯島3-6-1の全国家電会館1階、参加費は無料で、初めての方もゲスト参加が可能です。
「有給を取らせる制度」を作る前に、経営者ご自身が朝の1時間だけ、日常の仕事から少し離れて考える時間を持ってみる。皆様のペースで、ご一緒に歩んでいけたらと思います。詳細はモーニングセミナー案内ページをご覧ください。
朝7:00は難しいという方は、モーニングセミナー後の9:30〜11:00に開催している「湯島つながりラボ」もございます。U-cafe 上野御徒町でドリンク代のみでご参加いただけますので、こちらもよろしければつなラボ案内ページをどうぞ。
よくある質問|有給消化義務と中小企業の実務Q&A
現場でよく寄せられるご質問を、私たち編集部が把握している範囲でお答えします。個別の判断が必要な場面では、顧問社労士や労働基準監督署にご相談いただくのが安心です。
半日単位・時間単位の有給は「年5日」にカウントできるのか
半日単位の有給休暇は0.5日として年5日にカウントできますが、時間単位の有給休暇は年5日の取得義務にはカウントされない扱いが厚生労働省のQ&Aで示されています。労使協定と就業規則の整備が前提となる制度ですので、顧問社労士にご確認いただくと安心です。
退職時にまとめて有給消化を申請されました。断ることはできますか?
有給休暇は労働者の権利であり、原則として時季指定の申請を会社側が拒否することは難しいと考えられます。事業運営に著しい支障が出る場合の時季変更権はありますが、退職日を超えて変更することはできないため、日頃から計画的に取得してもらう運用が現実的な備えになります。
夏季休業や年末年始を計画的付与に含めるときに気をつけることは?
労使協定を締結したうえで、対象日を全員一律で決める方式か個別に設定する方式かを選びます。もともと会社休日だった日を計画的付与に振り替えると実質的な休日削減となり、社員の納得を得にくくなる場合があります。「本人が任意で使える有給日数を最低5日は残す」ことが法令上求められる点にも留意してみてください。
育児休業や休職から復帰した社員の年5日はどう扱えばいいですか?
年5日の取得義務は、基準日から1年間の実労働期間があった労働者が対象範囲に含まれる形です。年度の途中で長期休業から復帰した場合は、残り期間に応じた比例計算で対応するのが一般的な運用です。ケースバイケースの判断が必要な場面ですので、社労士に相談されることをおすすめします。
就業規則には何を書き加えればよいですか?
計画的付与制度を導入する場合、就業規則に「使用者が時季を指定して取得させることがある」旨の規定を追加する対応が求められます。あわせて労使協定の締結・年次有給休暇管理簿の整備・基準日の統一(可能なら)も検討されるとスムーズです。
中小企業向けの相談窓口はありますか?
都道府県労働局や労働基準監督署の総合労働相談コーナーは無料で相談可能です。全国社会保険労務士会連合会が運営する「社労士110番」のような窓口も用意されています。まずはお気軽に問い合わせてみるところから始めていただくのが安心です。
まとめ|制度と現場、そして経営者の在り方の三位一体で
年5日の有給休暇取得義務は中小企業も対象で、罰則以上に社員との信頼関係と採用競争力に大きく関わる制度です。管理簿の見える化・年度初めの面談・計画的付与・月次モニタリングという4つの実務手順を回しつつ、「休みが取りづらい空気」には経営者ご自身の姿勢が大きく影響することも、ぜひ心の片隅に留めていただけたらと思います。
制度・現場・在り方——この三つが揃ってこそ、社員が安心して休める職場に近づいていけるのかもしれません。私たち編集部も、湯島の経営者仲間の皆様と学び合いながら、この問いに向き合い続けています。
小さな一歩からで大丈夫です。ご一緒に歩んでいけたら嬉しく思います。皆様のご健闘を、心から応援しております。
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