「もっとやっていたかったくらいの気持ちで、終わりましたよ」
湯島倫理法人会20周年を記念したインタビューシリーズ。第9代会長を務めたグランツ税理士法人代表社員・今井良明氏が、67社から100社へと会を導いた3年間の歩みを振り返ります。専任幹事・事務長と会の主要な役を担い続けた今井氏の言葉に、人を動かすリーダーシップの本質が見えてきました。
流れてきたものを、受け取る
今井氏が湯島倫理法人会に入会したのは2012年のことです。翌年には専任幹事として会の運営を担い、その後は2人の前会長のもとで合計5年間、事務長として組織を支え続けました。入会から8年間、ほぼ一貫して会の主要な役を担ってきた計算になります。
「否定的でもなく、来たものを受ける」
会長就任の打診を受けたときも、今井氏の内側にあったのはそのスタンスでした。驚きでも戸惑いでもなく、冷静な受け入れ。専任幹事として40社を超える会員企業に声をかけて回った経験も、事務長として会の運営を内側から支えた日々も、気づけばすべてがその準備になっていたのかもしれません。
組織を率いる立場を打診されたとき、人はどう応じるべきか。「来た通りにやる」という今井氏の言葉に、ひとつの答えが宿っているようです。

目指したのは「揺るがない100社」だった
【画像挿入 種類: 写真 内容: 会長時代の湯島倫理法人会の毎週開催されるモーニングセミナーの風景 目的: 当時の活気ある雰囲気と会員の集まりを伝え、100社達成への過程をリアルに感じてもらう 】
会長に就任した2020年9月、会員数は67社でした。退会が決まっていた企業が複数あり、実質的にはそこからのスタートです。「15周年式典を100社で迎える」──就任時から、今井氏はその一点を見据えていました。
ただ、今井氏が掲げた旗は単なる「100社達成」ではありませんでした。インタビューを終えた後、今井氏はこう付け加えます。「私が目標にしたのは、『揺るがない100社』でした。つまり、もう二度と100社を割らない単会にするということです」。
100社という数字は、倫理法人会として正式に認められるための基準です。だからこそ到達することは前提であり、問題はその先にありました。一度到達しても崩れてしまっては意味がない。安定して100社を保ち続けられる会にするには、会員の層そのものを厚くする必要がある。しっかりとした経営者会員を増やすことで会の根を深くする──その発想は、倫理法人会が掲げる「日本創生」という大きな志とも自然につながっています。
就任時の感覚を問われると、今井氏は「できるはずだ、と思っていた」と振り返りました。「無理かな」ではなく「多分できる」という手応えが、就任の瞬間からあったといいます。「こういう会にしていけば、そうなるだろう」という勝ち筋を、自分の中に持っていたのです。
組織を率いる者なら、誰もが一度は向き合う問いでしょう。「達成」と「定着」は、まったく別のことだということを。
会が楽しければ、人は来る
では、その「勝ち筋」とは何だったのか。今井氏は一言で「明るさ」と表現します。
突き抜けるような明るさで会を動かしていけば、人は自然と集まってくる。その確信が、会長時代の今井氏の行動の根底にありました。実際、当時に入会した会員から「楽しそうな雰囲気に引き寄せられた」という声が届いたといいます。「思惑通りでした」と、今井氏は少し笑いながら明かします。
笑いを取ることへのこだわりも、今井氏の持ち味のひとつです。幼い頃は人前で話すと顔が赤くなるほど緊張していたといいますが、いつの間にか場を温める話し方が身についていました。五十嵐元会長から受け取った「スピーチにはユーモアが必要だ」という一言が、今も今井氏の中で生き続けています。
ただ、3年間すべてが上り調子だったわけではありません。2年目は会員数が少し落ちた時期がありました。今井氏はその時期を、「自分の心の状態の通りに、会員数も動いた」と静かに振り返ります。リーダーの内側と組織の動きが連動していたという率直な告白に、長年の経験の重さが滲みます。
当たり前のように見える「楽しさ」が、実は会の最大の引力だったのかもしれません。

20年は、まだ序章かもしれない
20周年を迎えた湯島倫理法人会を、今井氏は「まだ短い」と感じているといいます。他には40年・35年の歴史を持つ倫理法人会もある中で、湯島はまだその半分です。歴代会長が会に残り、毎週のモーニングセミナーに顔を出す。その積み重ねが会の厚みになっていく、と今井氏は考えます。
今の湯島には、歴代会長が複数、今も会員として残り関わり続けています。今井氏はそのことを「素晴らしいことだ」と言葉に力を込めます。「30周年の時には、どんなことになっているか」と想像すると、自然と顔がほぐれるといいます。
そして今井氏が未来の湯島に期待するのは、中小企業の経営者がこの場を通じて成長し、自社を伸ばしていくことです。会員数の数字だけでなく、「経営者としてここで学び、会社も育っていく人が増えること」──それが会の強さになると信じているといいます。
グランツ税理士法人代表社員・今井良明氏は、第9代会長として2020年9月から2023年8月まで湯島倫理法人会を率いました。「充実していた」と語るその3年間は、20年という節目の礎を築いた歳月でもあります。
今井氏はこのインタビューを終えて、現役会長である藤井真由美氏をはじめとする役員の皆さんに、ひとつの言葉を届けたいと言います。「具体的なビジョンを持ち、信念を持って誠実に取り組んでいくと、自然とそのようになっていく。それを3年間で実感しました」──信じて行動し続けることが、物事を動かしていく。今井氏が身をもって学んだその実感は、湯島の次の10年を担う人たちへの、静かで力強いエールでもあります。
湯島倫理法人会の歩みは、こうした一人ひとりの覚悟と実践の積み重ねによって刻まれてきました。そしてそのバトンは今、次の世代の手へと渡されています。
プロフィール
今井良明(いまい よしあき)
湯島倫理法人会 第9代会長(在任期間:2020年9月〜2023年8月)
グランツ税理士法人 代表社員/公認会計士・税理士
1970年、石川県金沢市生まれ。高校時代は甲子園を目指して野球に打ち込んだ。大学卒業後、公認会計士試験に挑み、1997年に合格。中央青山監査法人に入所し、上場企業の会計監査業務に従事した後、2007年に独立。2015年にグランツ税理士法人を設立し、代表社員として現在に至る。株式会社ハウスコム、株式会社シンシアの社外監査役も務める。湯島倫理法人会には2012年に入会。専任幹事・事務長を経て2020年9月に第9代会長に就任。在任中に会員100社達成を牽引し、2023年8月に退任した。
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