奈良県桜井市の神聖な大神神社のお膝元から湯島にお越しいただいた森行秀知氏。
3社の経営に携わりながら、多くの経営者の課題解決をサポートされている森行氏が語ってくださったのは、「言語化」の力で経営課題をチャンスに変える実践的な手法でした。朝が苦手とユーモアを交えながらも、使命感を持って登壇された森行氏の温かいお人柄が印象的です。
あなたは目の前の課題を、どのような視点で捉えているでしょうか?
講師プロフィール
株式会社Molly 代表取締役 森行秀知氏。ワタミフードサービスでの店長経験から始まり、原田教育研究所で人材教育のプロとして1000回を超える研修を実施されました。その後、激辛ラーメン店「ラーメン赤鬼」のフランチャイズ事業で起業し、2年で直営店1店・加盟店4店まで拡大された経験をお持ちです。現在は3社の経営と経営コンサルティングを手がけられる、豊富な実践経験を持つ経営者として活躍されています。
ChatGPT時代だからこそ、あり方が問われる
森行氏がまず語られたのは、現代社会における経営者のあり方の重要性についてでした。ChatGPTの普及により、やり方やノウハウは簡単に手に入る時代になりました。だからこそ、経営者がどのようなスタンスでお客様に関わっているかが、事業を任せるかどうかの差別化要素になるということです。
「これからの時代は、経営者のあり方が事業における差別化の要素になる」
この言葉が強く心に残りました。倫理法人会で大切にしている原則中心の考え方が、まさにこれからの世の中で求められる価値なのだと気づかされます。

経営課題を4社に1社が見て見ぬふり
衝撃的だったのは、日本能率協会の調査結果でした。なんと4社に1社の企業が経営課題の検討や実行にすら着手できていないということです。つまり、目の前の課題を見て見ぬふりしている状態です。
なぜこのような現状になるのか。それは課題をネガティブに捉えているからだと森行氏は分析されました。課題を見るだけで気持ちが落ち込み、不安になってしまう。森行氏ご自身も会社の預金残高が180円まで落ち込んだ経験を率直に語られ、その時の心境を「もう地震が起きてくれって思うほど暗黒の状態」と表現されました。
しかし、ここで重要な視点転換が必要だということです。
陰陽の原則で課題をチャンスに変える
「課題はネガティブじゃないんです。課題はチャンスなんです」
森行氏が強調されたのは、陰陽の原則という考え方でした。明るいところがあるから暗いところがあり、光と影はどちらが良い悪いではなく、お互いがあるから成り立っている。つまり、大きな成長を目指すならば、それ相応の課題が存在するのは自然なことだということです。
課題が出てきた時は、それをクリアすれば大きく成長できるチャンスなのです。この視点で捉えることで、4人に1人の経営者が逃してしまっているチャンスを掴むことができるのかもしれません。

言語化で漠然とした不安を明確な行動に
では、具体的にどのように課題をチャンスに変えていくのか。その鍵が「言語化」でした。森行氏は言語化を「明確化」と言い換えて説明されます。
漠然とした課題認識を解消する正しい舵取り
「売上が下がっている」という漠然とした認識では、まるで「南に行こう」というだけで九州なのかハワイなのかもわからない船のようなものです。これを段階的に明確にしていきます。
まず「前年比でマイナス20%で推移している」と数字で明確化。さらに「その構成は受注件数か、客単価か、リピート率か」と分解していく。最終的に「一番の原因は受注件数が前年比マイナス30%」まで言語化できれば、受注件数を増やすための具体的な施策を打つことができるのです。
多くの経営者が「売上が下がっている→上げていこう」といきなり行動に移しがちですが、まずは言語化による明確化が重要だということを学ばせていただきました。
現場の社員を動かす具体的な指示
2つ目のポイントは、社員を動かすための言語化でした。「受注件数を増やそう」という勢いだけでは、社員は内心「どうやって?」と困ってしまいます。
しかし「8月は受注件数を前年より5件増やそう」と具体的に言語化すれば、「休眠顧客のリストから毎日10件連絡します」といった具体的なアイディアが社員から生まれてくるのです。
「勢いプラス具体性が加われば、社員さん動けるんです」
「この実践的なアドバイスは、多くの経営者にとって即座に活用できる価値ある学びと言えるでしょう。
言語化の社内文化で自立した組織へ
最も印象深かったのは、言語化を社内文化として根付かせることで、社長だけが頑張る状態から脱却できるという考え方でした。森行氏は3つのポイントを示してくださいました。
数字で語る、曖昧NG
「結構売れてます」ではなく「今月1000件の受注で、前月より200件伸びています」と常に数字で表現する習慣です。数字で語るからこそ、さらに伸ばしていく施策や改善の手立てを具体的に考えることができます。
また、真面目で意欲ある社員ほど使いがちな「徹底します」という曖昧な言葉を禁止することも重要です。「品質管理を徹底します」ではなく「1時間に1回冷凍庫の温度をチェックし、規定温度に達しない場合はすぐに改善策を打ちます」といった具体的な行動を言語化させることで、実際の成果につながる行動が生まれるのです。
事実と解釈を分ける習慣
人材育成において特に重要なのが、事実と解釈を分けることでした。
「Aさん、最近やる気ないと思うんです」これは解釈です。事実は何か。「Aさんのお母さんが入院していて、心配で仕方がない状態」これが事実だということです。
解釈ベースで判断すれば「やる気がない」と叱ることになりますが、事実ベースで把握すれば「お母さん大丈夫?病院に行く必要があったら遠慮なく言ってね」という声かけに変わります。常に事実ベースで施策を立てることの大切さを教えていただきました。

成功も失敗も原因を言語化
最後に、すべての取り組みをプラスに変える仕組みについて語られました。
成功の原因を言語化すれば、その成功は再現性のある成功に変わります。もう一度同じことをやれば、もう一度売上が上がる仕組みができるのです。
失敗についても原因を明確にすれば、同じ失敗を繰り返さなくなります。失敗を繰り返さなければ、次はうまくいく確率が高まります。
「何をやってもうまくいく方向に向かうんです」
この言葉通り、会社の取り組みにおける成功も失敗もすべてプラスに変えていく仕組みは、まさに継続的成長の秘訣だと感じさせていただきました。
実践企業の成果に学ぶ
これらの言語化文化を実践している山梨の顧問先企業では、5年間で県内不動産管理会社ランキング16位から3位まで躍進し、さらに残業もほぼゼロを実現されているそうです。「凡事徹底」を土台に、当たり前のことを丁寧に誠実に取り組み続けた結果だということでした。
やり方はいくらでも手に入る時代だからこそ、あり方や考え方を大切にする倫理法人会の価値がより一層高まっているのではないでしょうか。

まとめ
株式会社Molly 森行秀知氏の講話を通じて、経営課題を言語化によってチャンスに変える具体的な手法を学ばせていただきました。課題をネガティブに捉えるのではなく、成長のためのチャンスと捉える視点転換。そして漠然とした不安を明確な行動に変える言語化の技術。これらを日々の経営実践に取り入れることで、社員と共に成長し続ける組織を築いていけるのかもしれません。
森行氏が「コンサルという仕事がなくなったらいいな」とおっしゃったように、経営者が自立して課題解決できるようになることが理想です。そのための具体的な道筋を示していただいた今回の学びを、私たちも実践していきたいものです。
湯島倫理法人会のモーニングセミナーでは、このような実践的で心に響く学びを毎回提供しています。早朝の貴重な時間を有効活用し、志を同じくする経営者の皆様と共に学び合いませんか。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
課題をチャンスに変える実践的な手法と経営者仲間との対話の場です。
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