経営者の皆様は、ご自身の会社の未来について、どのようなビジョンを描いていらっしゃいますか。

日々の業務に追われる中で、「事業承継」という言葉が頭をよぎることがあるかもしれません。後継者の育成は、多くの経営者にとって避けては通れない課題となっています。

2025年版中小企業白書によれば、全国の後継者不在率は50.1%となり、改善傾向にあるものの依然として半数近くの企業で後継者が決まっていない状況です。特に2025年までに約245万人の経営者が70歳を超えると予測されており、そのうち約127万社が後継者未定という現実があります。

本記事では、後継者問題の現状を共有しながら、事業承継を成功に導くための5つのステップをご紹介します。皆様の会社の未来を考える一助となれば幸いです。

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深刻化する中小企業の後継者問題

2025年問題と後継者不在の実態

中小企業を取り巻く環境は、大きな転換期を迎えています。

団塊世代の経営者が75歳以上となる「2025年問題」により、事業承継の必要性が高まる中、後継者不在という課題が浮き彫りになっています。帝国データバンクの調査では、2025年の後継者不在率は50.1%となり、7年連続で改善傾向にあるものの、今なお2社に1社が後継者を決められていない状況です。

業種別に見ると、建設業で57.3%と最も高く、次いで自動車・自転車小売が62.3%、職別工事が61.3%となっています。地域によっても差があり、秋田県が73.7%と全国で最も高い一方、三重県は33.9%と4年連続で全国最低水準となっています。

業種別 後継者不在率(2025年)
帝国データバンク調査 / 全国約27万社対象
大分類(主要業種)
中分類(業種細分類)
自動車・自転車小売 中分類
62.3%
職別工事 中分類
61.3%
建設業 大分類で最高
57.3%
全業種平均
50.1%
製造業 大分類で最低
42.4%
金融・保険 中分類で最低
31.4%
出典:帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月発表)

中小企業庁の試算によれば、後継者不在のまま廃業する企業が増えた場合、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があります。これは単なる統計の数字ではなく、地域経済や従業員の生活に直結する重要な問題といえるでしょう。

興味深いのは、廃業企業の5〜6割が黒字であるという事実です。経営は順調であるにもかかわらず、後継者が見つからないために事業を続けられないという状況が生まれています。

かつては経営者の子どもが事業を引き継ぐことが一般的でしたが、価値観の多様化により親族内承継の割合は20年以上前の約8〜9割から2024年現在は約3割(32.2%)まで低下しています。従業員や役員への承継、M&Aによる第三者承継など、選択肢は広がりつつあります。

後継者育成に必要な時間と準備

事業承継を成功させるためには、十分な準備期間が欠かせません。

独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査によると、後継者育成には5〜10年程度の期間が必要という回答が最も多い結果となりました。経営のノウハウ、取引先との関係、従業員からの信頼など、引き継ぐべき要素は多岐にわたるからです。

しかし現実には、70代の経営者でも約50%が事業承継の準備を完了していないという調査結果があります。日々の経営に追われる中で、「まだ大丈夫」「もう少し先でいい」と考えてしまうことは、多くの経営者に共通する心理かもしれません。

中小企業庁では「60歳を過ぎたら事業承継の準備を」と推奨しています。経営者の平均引退年齢が小規模事業者で70.5歳、中規模企業で67.7歳であることを考えると、60歳から準備を始めることで、十分な育成期間を確保できる計算になります。

準備が遅れることで生じるリスクも無視できません。後継者候補がいても、経営者の突然の病気や事故により、十分な引き継ぎができないまま交代を余儀なくされるケースもあります。取引先や従業員の混乱、経営の不安定化など、企業にとって大きな打撃となる可能性があります。

東京商工会議所の調査では、事業承継を検討する中で障壁となった点として「後継者候補はいるが、経営者としての人材育成が終わっていない」が32.9%、「現代表者が現役で働けるため、今すぐの事業承継は考えられない」が22.5%という結果が出ています。

育成には時間がかかることを理解しながらも、早めの着手が難しい現実があるようです。

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事業承継を成功させる5つのステップ

事業承継を計画的に進めるため、5つのステップに分けてご紹介します。

ステップ1: 後継者の要件定義と選定

事業承継の第一歩は、どのような後継者が必要かを明確にすることから始まります。

要件定義では、経営者として求められる一般的な能力に加え、自社の事業特性や企業文化に合った要素を考えていきます。コミュニケーション能力、リーダーシップ、決断力、交渉力など基本的な資質に加えて、業界の専門知識や取引先との関係構築力なども重要になってくるでしょう。

ただし、これらの要件をすべて満たす人材を見つけることは容易ではありません。そのため、要件に優先順位をつけて、育成を通じて伸ばしていける部分と、最初から備わっている必要がある資質を区別することが大切です。

後継者育成の3段階プロセス
育成期間 5~10年を見据えた段階的な成長設計
STEP 1
1
初期:現場理解
現場業務を通じて事業の基盤となる実務知識や業務フローを体得する
STEP 2
2
中期:マネジメント
部門責任者として組織運営やチームマネジメントの経験を積む
STEP 3
3
後期:経営参画
経営会議や重要な意思決定に参画し経営者としての判断力を養う
候補者の成長に合わせて柔軟に見直しながら進行

後継者候補の選定では、親族、社内の役員・従業員、第三者という3つの選択肢があります。親族内承継の割合は減少していますが、経営理念の継承や取引先との関係維持という点では依然として有力な選択肢といえます。

社内承継では、現場を熟知し従業員からの信頼も厚い人材が候補となりますが、株式買取のための資金確保が課題となることがあります。中小企業庁の調査では、後継者候補がいる企業のうち22.7%が承継を拒否されており、その理由の約6割が個人保証の引き継ぎへの不安でした。

候補者の選定では、実績や経歴だけでなく、資質、人柄、意欲なども総合的に考慮することをお勧めします。また、1人に絞らず複数の候補者を育成していくことで、万が一の際にも対応できる体制を整えられます。

ステップ2: 育成計画の策定

後継者候補が決まったら、具体的な育成計画を立てていきます。

計画の策定では、まず自社のミッション、ビジョン、経営戦略を明確にします。その上で、後継者に何を学んでもらい、どのような経験を積んでもらうかを時系列で整理していきます。

育成期間を5〜10年と見据えた場合、初期段階では現場業務の理解、中期では部門責任者としてのマネジメント経験、後期では経営判断への参画といった段階的な成長プロセスを設計できます。

後継者に求められる資質・能力チェックリスト 自社の後継者要件を整理する際の参考としてご活用ください
当初から必要 …最初から備わっている必要がある資質
育成可能 …育成を通じて伸ばしていける能力
チェック進捗
0 / 12 項目
1 基本的資質
リーダーシップ 組織をまとめ、ビジョンを示して従業員を導く力があるか 当初から必要
決断力 不確実な状況でもタイミングを逃さず意思決定できるか 当初から必要
コミュニケーション能力 社内外の関係者と円滑に意思疎通し、信頼関係を築けるか 当初から必要
交渉力 利害の異なる相手と建設的に合意形成を図れるか 育成可能
2 知識・スキル
業界の専門知識 自社が属する業界の動向や技術、慣行を理解しているか 育成可能
財務理解力 決算書を読み解き、経営数字に基づいた判断ができるか 育成可能
経営戦略の立案力 中長期の経営計画を策定し、実行に移す力があるか 育成可能
法務・コンプライアンスの基礎知識 会社法や労働法など、経営に必要な法的知識があるか 育成可能
3 対人関係・信頼
取引先との関係構築力 既存の取引先との信頼を維持し、新たな関係を開拓できるか 当初から必要
従業員からの信頼 現場の声に耳を傾け、従業員の支持を得られているか 当初から必要
経営理念への共感 自社の理念や価値観を深く理解し、自らの言葉で発信できるか 当初から必要
ステークホルダー対応力 金融機関・株主・地域社会など多様な利害関係者と適切に対応できるか 育成可能
※ 活用のポイント すべての要件を満たす人材を見つけることは容易ではありません。要件に優先順位をつけ、「当初から必要」な資質と「育成可能」な能力を区別したうえで、後継者育成計画に反映させることが大切です。また、1人に絞らず複数の候補者を育成していくことで、万が一の際にも対応できる体制を整えられます。

計画策定では、現経営者だけでなく後継者自身も参加することが重要です。後継者に計画策定から関わってもらうことで、当事者意識が芽生え、自分ごととして事業承継に向き合えるようになります。

また、計画は固定的なものではなく、候補者の成長に合わせて柔軟に見直していくことも大切です。各段階で何を習得すべきか、どのような基準で評価するかを明確にしておくことで、育成の進捗を客観的に確認できます。

定期的なコミュニケーションの機会を設けることも欠かせません。経営者と後継者が率直に話し合える関係を築き、互いの期待や不安を共有することで、行き違いや思い違いを防げます。

ステップ3: 実践的な育成プログラムの実施

計画に基づき、実際の育成を進めていきます。

社内での育成では、ジョブローテーションが効果的な手法となります。営業、財務、製造、人事など複数の部門を経験することで、会社全体の業務プロセスを理解し、部門最適ではなく全社最適の視点を養えます。

また、係長、課長、部長といった役職を段階的に経験させることで、各階層での権限や役割を理解できます。いきなり役員に就任させるのではなく、プロセスを踏むことで組織の動きを肌で感じられるようになります。

早い時期から経営会議に参加させることも有効です。実際の意思決定プロセスを間近で見ることで、経営者の思考や判断基準を学べます。最初はオブザーバーとして、徐々に意見を求められる立場へと移行していくことをお勧めします。

社外での育成も重要な要素です。一度自社を離れて外部企業で実務経験を積むことで、客観的な視点や危機感を養えます。社内だけでは周囲が気を遣ってしまい、健全な成長を阻害する可能性があるからです。

経営者向けの研修やセミナーへの参加、他社の経営者との交流なども視野を広げる良い機会になります。湯島倫理法人会のモーニングセミナーでは、毎週月曜日の朝7時から経営者の体験談や専門講師の講話を通じて、多くの学びを得られます。

異業種の経営者と交流することで、新しい発見や気づきを得られることも少なくありません。後継者候補の方にも、ぜひゲスト参加していただき、経営者としての視点を養う機会としていただければと思います。

ステップ4: 3つの要素の承継準備

事業承継では「人」「資産」「知的資産」という3つの要素を引き継ぐ必要があります。

人の承継では、経営権の移転だけでなく、経営理念や企業文化の継承が重要になります。後継者が従業員からの信頼を獲得し、リーダーシップを発揮できるように、時間をかけて権限を移していきます。

従業員への紹介のタイミングや方法も慎重に考える必要があります。突然の発表ではなく、段階的に後継者の役割を増やしていくことで、組織全体が自然と新しいリーダーを受け入れやすくなります。

資産の承継では、株式、事業用資産、運転資金などの有形資産を適切に移転します。特に株式の移転は経営権に直結するため、計画的な準備が欠かせません。

事業承継税制を活用することで、贈与税や相続税の納税猶予を受けられます。法人版では株式の贈与税が全額猶予、相続税が80%猶予される特例措置があり、令和7年度税制改正では後継者の役員就任要件が事実上撤廃され、より利用しやすくなりました。

知的資産の承継は、目に見えない資産の引き継ぎです。顧客との信頼関係、取引先とのネットワーク、長年培ってきた技術やノウハウ、ブランド力など、企業の競争力の源泉となる要素が含まれます。

これらは文書化が難しく、経営者の頭の中や日々の行動の中に蓄積されているものです。だからこそ、長い時間をかけて後継者に伝えていく必要があります。

取引先への同行訪問、重要な商談への立ち会い、日々の意思決定の背景説明など、様々な場面を通じて知的資産を共有していきます。

ステップ5: 円滑な事業承継の実行

準備が整ったら、実際の事業承継を進めていきます。

事業承継は一度に完了するものではなく、段階的に権限を移していくプロセスです。まず副社長や専務といった役職に就任させ、徐々に経営の中心的な役割を担ってもらいます。

取引先や金融機関への挨拶回りも重要なステップです。現経営者が後継者を紹介し、信頼関係の橋渡しをすることで、スムーズな承継が可能になります。取引先にとっても、突然の交代より計画的な承継の方が安心できるでしょう。

正式な交代のタイミングは、後継者の準備状況、会社の経営状況、現経営者の健康状態などを総合的に判断して決めます。焦って交代を急ぐ必要はありませんが、適切な時期を見極めることも大切です。

交代後も、現経営者は相談役や顧問として一定期間サポートを続けることをお勧めします。後継者が自信を持って経営判断できるまで、必要に応じてアドバイスを提供することで、安定した経営の継続が可能になります。

ただし、いつまでも現経営者が口を出し続けると、後継者の成長を妨げる可能性があります。徐々に距離を置き、後継者に任せる範囲を広げていくバランス感覚が求められます。

事業承継後の新しい体制が従業員や取引先に浸透するまでには、さらに時間がかかります。後継者が自分のカラーを出しながら経営を進められるよう、温かく見守る姿勢も大切にしたいものです。

まとめ

中小企業の後継者問題は、多くの経営者が直面する課題となっています。

2025年までに約245万人の経営者が70歳を超え、そのうち約127万社が後継者未定という現実を前に、早めの準備が求められています。後継者育成には5〜10年程度の期間が必要とされており、60歳を過ぎたら事業承継の準備を始めることが推奨されています。

本記事でご紹介した5つのステップ「後継者の要件定義と選定」「育成計画の策定」「実践的な育成プログラムの実施」「3つの要素の承継準備」「円滑な事業承継の実行」は、計画的な事業承継を進めるための指針となるでしょう。

皆様が大切に育ててこられた会社を次世代につなぐことは、経営者としての重要な責務であると同時に、地域経済や従業員の未来を守ることにもつながります。

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