父親の背中を見て育ちました。でも、その本当の姿を知ったのは、一緒に働き始めてからでした。致知出版社取締役の藤尾佳子氏が語った「創刊47年人間学の月刊誌『致知』第2創業にかける思い」は、親子の物語であり、一人の女性が自分の使命に目覚めていく物語でもあります。当たり前だと思っていた日常が、実はどれほど尊いものだったのか。あなたは気づいているでしょうか。

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一緒に働いて初めて知った父親の姿

藤尾佳子氏は学生時代、父親の仕事をよく理解していませんでした。友人から「お父さんは何の仕事をしているの?」と聞かれるのが嫌だったといいます。出版社の社長だけれど、本屋には置いていない雑誌。みんな知らないと思う。そう答える自分がいました。

23歳で致知出版社に入社したとき、すべてが変わりました。読者から毎日のように届く感謝の手紙。「この雑誌と出会ったから自殺をせずに済んだ」「もう1回頑張ってみようと思った」「人生のバイブルです」。父親が29年間(当時)、命のエネルギーを注いできた仕事の価値を、初めて知ったのです。

さらに驚いたのは、家で家族と向き合う姿勢と、会社で社員と向き合う姿勢が全く同じだったこと。門限を破ればお説教。「わかったか」と問われて「はい」と答えても、腹の底から返事をするまでお説教は終わりません。その厳しさも、愛情の深さも、家でも会社でも変わらなかった。

藤尾氏は振り返ります。社員の皆さんは社長の話を真剣に受け止めて、期待に応えようとしている。それなのに自分はどうだったか。面倒くさいなと思いながら対応していました。そんな自分を、父親は諦めずに見守り続けてくれていた。そのことに気づいたとき、涙が止まらなかったといいます。

倫理の教え「万人幸福の栞」13条にある「最も大切な我が命の元は両親である」という言葉。藤尾氏はこの言葉を、身をもって理解した一人です。父親と一緒に働いて初めて、自分の命の元である両親を心の底から尊敬できました。そして、自分には生まれてきた意味があったと、大きな自己肯定感を得ることができたのです。

人間学が照らす4つの普遍の真理

藤尾氏は講話の中で、人間学とは何かを分かりやすく説明しました。どんなに時代が変わっても変わらない普遍の真理が四つあるといいます。

一つ目は、人間は必ず死ぬということ。命を受けた人間には、いつか必ず死が訪れます。二つ目は、自分の人生は自分しか生きられないということ。どんなに愛する我が子の苦しみでも、代わりに背負うことはできません。三つ目は、人生は1回限りであること。リハーサルはありません。そして四つ目が、この宇宙の中で、自分という人間は過去にも未来にも1人しかいないということ。

全く同じ時代、全く同じ環境に生まれてきた人は、これまでにたった1人もいませんでした。この先も2度と生まれてきません。私たちは本当に奇跡のような命を生きています。人間学とは、過去にも未来にもたった一つしかないこの尊い命を、どう生きるのかを学ぶものだと藤尾氏は語りました。

戦艦大和の乗組員だった八杉康夫氏の言葉が、講話の中で紹介されました。「若者よ、君たちが生きる今日という1日は、死んだ戦友たちが生きたかった未来だ」。この言葉に込められた思いを、月刊誌『致知』は47年間、届け続けてきました。

人間学を学ぶことで、当たり前だと思っていた命や人生が、決して当たり前ではないと気づきます。その気づきが、人生を変える力になるのです。

悲しみが教えた「当たり前のありがたさ」

藤尾氏には、5年前に忘れられない出来事がありました。弟の妻が36歳という若さで、幼い子どもを残して旅立ちました。同世代の彼女の最期を見届ける中で、命は当たり前じゃないと痛いくらいに感じたといいます。

家族に「おはよう」「いってらっしゃい」「おかえりなさい」「おやすみなさい」と言えること。たわいもない会話ができること。一緒に食事ができること。当たり前だと思っていたすべてが、本当は全然当たり前じゃなかった。

その悲しみを通して、藤尾氏は一つの答えにたどり着きました。人間学とは、当たり前の中にあるありがたさに気づく心を養う学びなのだと。そして人間力とは、当たり前の中にあるありがたさに気づく心の力こそが、人間力なのだと。

世の中で起こる悲しい事件は、目の前にある当たり前のありがたさに気づかない、満たされない心によって引き起こされているように思えてなりません。自分の生きている日常が本当は当たり前じゃない、幸せにあふれていたと気がつく人が増えれば、日本の社会を変えることができるかもしれない。藤尾氏は本気でそう考えています。

だからこそ、月刊誌『致知』は定期購読制なのです。人間はどんなに大事だと思っても、油断すると感謝することを忘れ、傲慢になってしまいます。学んだことをすぐ忘れてしまう。毎月届く『致知』が、いろんな人生体験をした方の話を届け、最近感謝が足りていなかったな、傲慢になっていたなと気づかせてくれる。心を整え続ける習慣を提供しているのです。

第2創業期に懸ける覚悟

致知出版社は今、第2創業期を迎えています。藤尾佳子氏が目指すのは二つ。『致知』を日本一愛される月刊誌にすること。そして、全員経営で進むこと。

全員経営とは、全社員が創業者・経営者となって目の前の仕事に一生懸命取り組んでいくことだと藤尾氏は考えています。みんなの心が熱く燃え上がっていなくてはなりません。そのためには、自分自身が誰よりもまず心を燃やして仕事に取り組み続ける。その覚悟を、講話から強く感じました。

森信三先生の言葉が、藤尾氏の背中を押しました。「人はみな天から一通の封書をもらって生まれてくる。その封書にはあなたはこういう生き方をしたらいいと書いてある。しかし、その封書を開けないまま死んでいく人が多い」。

藤尾氏は、自分の天からの封書を見つけました。それは、致知出版社という会社と、月刊誌『致知』を守り続けていくこと。父親が命を削るように作り続けてきた『致知』を、自分の代で途絶えさせてはいけない。どんなに未熟でも、やるしかない。そう覚悟を決めたのです。

53年後、創刊100周年記念式典で、日本は『致知』があったから心の豊かさを取り戻したねと、みんなで喜び合う光景を見届けること。それが藤尾佳子氏の人生の使命であり、夢であり、目標です。

まとめ──共に学び、実践する一歩を

株式会社致知出版社取締役の藤尾佳子氏の講話は、親子の物語であり、一人の女性が自分の使命に目覚めていく物語でした。そして何より、命の尊さ、当たり前の中にあるありがたさを教えてくれる、深い学びの時間でした。

倫理法人会の学びと人間学は、深く通じ合っています。倫理研究所の丸山敏秋理事長も長く『致知』を愛読し、「『致知』に共感できる人たちと日本創生を目指したい」とメッセージを寄せています。思いと行動を一致させていく倫理と、心を磨き続ける『致知』。その両輪で歩むとき、私たちはより良い未来を作っていけるのではないでしょうか。

藤尾氏が語った「霧の中を歩めば覚えざるに衣を湿る」という道元の言葉。良き人に近づけば、気づかないうちに良き人になっていく。湯島倫理法人会には、そんな素晴らしい人生の先輩との出会いがあります。そして、人間学を学ぶ仲間との出会いがあります。

あなたも次回のモーニングセミナーで、共に学び、心を整える一歩を踏み出してみませんか。湯島倫理法人会は毎週月曜日、温かくお待ちしています。

講師プロフィール

藤尾 佳子(ふじお けいこ)
株式会社致知出版社 取締役 兼『母』編集長

致知出版社代表取締役・藤尾秀昭氏の長女。早稲田大学卒業後、食品メーカー勤務を経て、2007年7月に致知出版社に入社。経理担当として入社後、経営管理室室長を経て、現在は取締役を務めています。一児の母としての経験を活かし、2019年に子育て中の女性向け雑誌『致知別冊「母」』を創刊、編集長に就任。シリーズ累計70,000部を突破し、全国のお母さんに感動の輪を広げています。創刊47年の人間学月刊誌『致知』を100年企業、200年企業へと成長させることを使命とし、日本の未来を温かく明るいものにすることを夢に、精力的に活動しています。

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