今回は、東京都倫理法人会会長であり、社会福祉法人ちとせ交友会理事長の山口哲史氏にご講話いただきました。6億円の借金、家業の倒産という深い苦難を経て、倫理法人会と出会い、保育事業で10年間に売上を10倍に成長させた経営者の実践哲学。あなたは、困難な時、何を支えにして前を向きますか?
講師プロフィール
東京都倫理法人会会長、社会福祉法人ちとせ交友会理事長 山口哲史氏。28歳で家業のお菓子屋を継ぐも、6億円の借金と経営難に直面し廃業。その後、保育事業で再起を果たし、現在は132億円の売上、2,000名の職員を抱える組織へと成長させた経営者です。

なぜ、今「価値創造」なのか?
山口氏が令和8年度の東京都倫理法人会テーマに「価値創造」を掲げた背景には、倫理研究所の丸山敏秋理事長からいただいた言葉がありました。「世界中のイデオロギー対立の時代は終焉する。これからは協調の精神に基づいた新しい価値観の創出により、地球倫理と世界平和を目指していこう」という壮大なビジョンに、深く共感されたということです。
昨年度のテーマ「自己革新」から一歩進んだ今年。個人の心の癖をどう変えていくかという自己革新を土台に、個人・組織・社会の三層での価値創造を目指されています。「倫理法人会が他団体以上に素晴らしい会だと信じています。この会の価値を上げていきたい」と、山口氏は静かに、しかし力強く語られました。
失敗から学んだ「勝てる設計」とは
山口氏の経営哲学の核心は、「努力よりも設計」という考え方にあります。お菓子屋という成熟産業で必死に努力しても結果が出なかった経験から、「どこで戦うか」の重要性に気づかれたということでした。
「根性よりも俯瞰、正しさよりも勝ち筋、効率よりも土俵設計」と教えてくださった山口氏。介護や保育という、国の予算がついた成長市場に思い切って転換したことで、状況は劇的に変化しました。倫理法人会で学んだ「即実践」の精神が、このタイミングでの決断を後押ししたのです。
しかし、その決断は容易ではありませんでした。先祖から受け継いだお菓子屋を手放すという12条「捨てる」実践は、最も難しい選択だったと振り返られました。
組織を支える「ホーム」という理念
現在、132億円の売上を誇る保育事業ですが、その成長を支えているのは、現場の職員たちが1年かけて作り上げた「ホーム」という理念でした。
山口氏が倫理法人会に入会してからの約7年間で、組織は急速に成長しています。「職員のためにどうすればいいか」を徹底的に考え、働きやすい職場環境を整えることで、保育士たちが大好きな子供たちと心から向き合える場を創られたということです。
「いつでも帰ってこれるホームでありたい」。この理念は、トップダウンではなく、現場の10人の職員がボトムアップで生み出したもの。だからこそ、2,000人の職員全員に浸透し、卒園児が保育士として戻ってくるという循環が生まれているのではないでしょうか。
違和感を楽しむ組織づくり
山口氏は、同業者との傷のなめ合いではなく、倫理法人会のような多様な価値観が集まる場に身を置くことの重要性を強調されました。「違和感を楽しむ」という言葉が印象的でした。
課題に対して人と戦うのではなく、実力のある人をプロジェクトに入れ、その得意分野を伸ばしていく。違う意見がぶつかり合うことでイノベーションが生まれるという考え方は、まさに「価値創造」の実践と言えるでしょう。

銀行員が転職してきた理由
保育園事業を拡大する際、銀行の担当者と二人三脚で融資を勝ち取ったエピソードも心に残りました。待機児童がいて確実に収益が見込める保育事業。山口氏は「心から信じて」銀行と交渉されたそうです。
「支店長!保育園はどこも待機児童が多く、資金が不足しています。そこに融資を進めていけば、あなたが作ったマニュアルが銀行全体のスタンダードになります。そうなったら、あなたはすぐ次の転勤で執行役員ですよ!」
そして、支店長は実際に執行役員になったとのことです。
担当者はどんどん出世して行ったが、2年後、「理事長と一緒に戦った半年が忘れられない」と連絡があり、ちとせに転職してきたというのです。今では財務担当として、他の銀行と「日本一低い金利」で交渉を進めているとのこと。
信成万事、心から信じ切る姿勢が、周囲を動かし、味方を増やしていくことを教えていただきました。
まとめ
山口哲史氏の講話から、真の「価値創造」とは、自己の心の癖と向き合い、失敗から学び、周囲を信じて協働していく姿勢にあることを学ばせていただきました。
「経営者の器が大きくなれば、組織も大きくなる。自分以外の人を通して成果を出すのが経営の醍醐味」という言葉が、深く心に残ります。
湯島倫理法人会のモーニングセミナーでは、このような実践に基づいた学びを毎週共有しています。あなたも、朝の時間を自己革新と価値創造のために使ってみませんか?共に学び、共に実践していきましょう。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
再起の実践哲学を学ぶ場
経営者としての器を広げる実践的な学びが、ここにあります。
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